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Sheer Heart Attack / Queen [HM/HR]

さぁ、いよいよQEENのライブ盤の発売が近づいて来た。はやる心をこんなのを聴いて抑えている。


で、話はいきなり40年前、この作品との出会いへと遡らせてもらう。


俺が中学生の頃、放課後の部活動とは別に、週に一回、授業の一環として「クラブ活動」という枠があった。文化系、体育系ともに細分化されており、必ず何らかのクラブに所属しなければならなかったが、それぞれのクラブに定員があり、希望者がオーバーした場合は抽選になるため、思い通りのクラブに入るのは余程幸運に恵まれた奴らだけだった。

特に人気があったのが「レコード鑑賞クラブ」で、これは読んで字のごとく、持ち寄ったレコードを鑑賞するのが活動である。クラブの顧問となった教師は情操教育の一環としてクラシック音楽を優先させようとしていたが、生徒に選択の自由を与えた結果、実態はロック、フォーク、歌謡曲となんでもありであった。特にロックが好きな奴はこのクラブに入りたがった。なにせ、自宅では聴けないような大音量でロックを聴けるのである。

ある日、「今日のレコード鑑賞クラブでは発売されたばかりのQUEENの新作をかけるらしい」という情報がロック好きな連中の間を駆け抜けて行った。幸いな事にレコード鑑賞クラブが使用する教室(ステレオは毎回、音楽室から運んでいた)は俺が所属していたクラブの教室の隣だった。予め、レコード鑑賞クラブに所属していた友人には、廊下に音が響くように通路側の窓は全開にしろ、ステレオは出来るだけ大きい音でかけろ、とリクエストしたが、これは既に他の友人がほとんど恫喝とも取られかねない口調で要求済みであったようだ。

ま、それはともかく、クラブ活動の時間枠が始まってしばらくの後、どえらい勢いのハードロックが聴こえて来た。10分程度は隣室から聴こえてくる音に耳を澄ませていたが、もう我慢の限界だ。俺は、「先生、トイレ」と離席を告げ、廊下に出ると、隣の教室の前には数十人の生徒達が集まっていた。勿論、QUEENの新譜が聴きたくて自分の授業を抜け出して来た連中であることは想像に難くない。集まった連中の中には顔は知っているものの話をした事のない奴も多く、「そうか、こいつもロックが好きだったのか」と、妙な連帯感が生まれた。結局、それぞれのクラブの顧問教師が事情を察知し、連れ戻しに来るまでの間、俺たちはQUEENの新譜を堪能したが、それは俺たちにとって決して充分な時間とは言えなかった。勿論、俺はその新譜、Sheer Heart Attackを可及的速やかに購入する事にした。


SHEER HEART ATTACK / QUEEN

sheer heart attack.jpg

このアルバムが発売された時、ちょっとした騒ぎが勃発した。それまで、フリルやらプリーツやらレースやらを多用したコスチュームで少女漫画の登場人物のような華麗さを演出していたメンバーが、Sheer Heart Attackのジャケットでは、半ば半裸の汗だく姿で折り重なるようなデザインで納まっており、それまでのイメージを根底から覆す暑苦しい雰囲気を醸し出していたからだ。特に女性ファンには圧倒的に不評で、ジャケットのデザインだけで拒否反応を示し、ファンを止める事を宣言するミーハー(死語?)な奴までいたが、内容は実に素晴らしいものだった。

アルバムはカーニバル風の効果音で華々しく幕を開ける。喧噪の中からBrianの繰り出すギターのミュートされたカッティング音が聞こえてくる。次第に音量が増し、フレーズが形成されると、唐突にRogerがフィルインをかまし、圧倒的にスリリングなハードナンバー、Brighton Rockが始まる。もうこの時点で鳥肌。中盤、ディレイを効果的に使った長尺のギターソロが展開されるが、これが5分弱の曲の半分程を占める。それも後半は完全にギターのみとなるが、見事な構成力で飽きる事無く一気に聴かせる。この冒頭の一曲目だけでギター少年達は完全にノックアウトされた。
一旦間をおいて続くのは、ワールドクラスのヒットとなり、Queenの名前を一気に世界に知らしめたKiller Queen、短調と長調を巧妙に使い分け、素晴らしいメロディーとツボを心得た手練のアンサンブルを聴かせる。耳に馴染みやすい程よい軽さも成功の秘訣と言えるだろう。
以降、Rogerのロック魂が炸裂するTenement Funster、The March Of The Black Queenを彷彿させるFlick Of The Wrist、リリカルなLily Of The Valleyとメドレー形式で一気に聴かせたところで満を持して繰り出されるのが、アナログ時代はA面の最後を飾っていたNow I'm Hereである。ギターのリフや部分的な展開がRock'n'Rolの雰囲気を漂わせるものの、そこはくせ者、静と動の見事な対比、そして腹の座ったリズム。実にQueenらしいアレンジが施されたスケールのでかい名曲だ。

さて、アナログ時代のB面。大迎に始まるIn The Lap Of The Godの作りから、「B面は組曲形式で行くのか」と期待させるが、続くStone Cold Crazyで盛り上げておいてあっけなく中断。「え、どういうこと?」と思っていると、ピアノの弾き語りによる(勿論、バックコーラスはバッチリ作り込まれているが)オーネストな印象のDear Friendで流れは完全にリセットされる。続くMisfire、Bring Back That Leroy Brown、She Makes Meの3曲はほとんど途切れる事なく収録されてこそいるものの、それぞれの曲は独立した個性を持っており、編曲による橋渡しは一切無い。最終曲、In The Lap Of The God…Revisitedはいかにもアルバムの最後を飾るにふさわしい曲だが、リフレインが4分弱の内、半分を占める。コンサートの最後に演奏したら大合唱になるんだろうが、曲想にバリエーションが豊富すぎて、若干、散漫な印象を受ける。
といいつつもStone Cold Crazyの尋常ではない飛ばしっぷりは現在の基準においても驚異的な高揚感を醸し出している名演。後にMetallicaがカバーするに際して苦労したという逸話は有名だ。また、フォーキーでたおやかな印象のShe Makes Meも実に魅力的だ。個人的には、この曲に後のShoegazerにも通じる雰囲気を感じ取っている。Shoegazerのファンは一度聴いてみる事を勧める。

この作品、前2作と比べてサウンドプロデュースが飛躍的に向上しており、生々しいまでに音像が鮮明だ。また、印象がかぶる曲がほとんどなく、豊かなバリエーションは、結果的に聴きやすさ(飽きさせない)にも大きく貢献している。そう考えれば、余韻を残さないように次から次へと繰り出されるB面中盤以降の3曲の曲間を極端に詰めた収録方法にも納得がいこうというものだ。やはり、これも名盤保証!


さて、前述の通り、このアルバムに収録されている曲の曲想は実にバラエティに富んでいるが、中でも飛び抜けて奇矯に感じたのはBring Back The Leroy Brownだった。ディキシーランド風のちょっと人を食ったような小品なのだが、この「オールドファッションな印象の遊び心を反映させた作品」は、次回作、A Night At The Operaに収録されるSeaside RendezvousやLazing On A Sunday Afternoonへの布石となり、A Day At The RacesのGood Old-fashioned Lover Boyへと、News Of The WorldのSleeping On The Sidewalkへと、JazzにおいてはDreamers Ballへと引き継がれて行き、遂にThe GameでCrazy Little Thing Called Loveに結実し、最終的に大ヒットに繋がることはあの時点では誰が予測出来ただろうか。
メンバー達が長期的戦略を練り、その機会を伺っていたかどうかは定かではないが、この辺りの既存の音楽文化をリスペクトした上での柔軟性や多様性に、他のバンドと十把一絡げに出来ないQueenが内在していた音楽性の懐の深さを感じる。


Sheer Heart Attack

Sheer Heart Attack

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Hollywood Records
  • 発売日: 2011/07/26
  • メディア: CD


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QUEEN Ⅱ / QUEEN [HM/HR]

今年の9月、QUEENのライブ盤が発売になるらしい。驚くのはその録音時期。なんと1974年の4月と同年11月!

プレス用に発表された情報によると、当時QUEENのプロデューサーであった、ロイ・トーマス・ベイカー氏がQUEENの3枚目のアルバムをライブ盤にしようと企画し、レインボー・シアターでのコンサートを収録したものの、創作意欲が旺盛だったメンバーはスタジオでレコーディングを開始、ライブ盤発表前に3枚目となるSheer Heart Attackを仕上げてしまった為、ライブ盤用の録音はお蔵入りになってしまったのだとか。

しかし、この説明だけでは腑に落ちない部分がある。2枚組のこのライブ盤の2枚目の録音時期がキャリア3枚目となるSheer Heart Attack発表と同時期であり、Sheer Heart Attackに収録されている曲の半数以上がライブ盤にも収録されているからだ。

この事から察するに、4月に録音した素材でライブ盤を作ろうとしたものの、メンバー達はツアーと次回スタジオ作品の準備で忙しく、「3作目はライブ盤にしよう」というロイ・トーマス・ベイカー氏の提案を中途半端に受け入れたものの、「アイデアを早く形にしたい」と、スタジオで次回作のレコーディング作業に突入、「では、4作目こそライブ盤を」と、11月にもテープを回したものの、バンド側が新作のプロモーション・ツアーで忙しくてオーバー・ダブの時間が取れずに、なし崩し的に企画がお流れになってしまった、というのが本当のところだったのではなかろうか?

ま、この推察が正しいかどうかはおいておくとして、1974年のQUEENのライブが聴ける、というのは画期的だ。何せ当時のQUEENのライブは、精緻な作り込みにより美しく整っているスタジオ盤との対比が鮮やかなほど、スケールの大きいワイルドな演奏をぶちかましていたからだ。これはこの時期のライブを収録した幾多の海賊盤によって証明されているが、今回、オフィシャルな作品化を行うことを目的とした良好な音質の録音で聴く事が出来るわけだ。
その後、スタジオ作品を重ね、8作目にしてようやくLive Killersという初のライブ盤を発表することになるわけだが、あれはロック・バンドとしてはお行儀が良過ぎるというか、充分にキャリアを積んでステージ慣れしたバンドがヒットメドレーをそつなくこなしている、という印象で、なんかだか俺にはいまいち熱いものが伝わって来なかったのだよなぁ。まぁ、決して悪い作品ではないのだが…


と、いうわけで、久々に聴きました。勿論、QUEEN Ⅱ


QUEEN Ⅱ / QUEEN

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アルバムはBrian Mayのギターのおびただしい回数の多重録音によるインストルメンタル曲、Prosessionで荘厳に幕を開ける。発信音に引き継がれ続くのは、スケールのでかいハード・ロック、Father To Son、動と静の対比が感動的なWhite Queen、清冽な印象のSome Day One Day、腹の据わったヘビーなドラミングと強烈に歪んだギターの音がドライヴするThe Looser In The End、緊張感のあるリフと開放感のあるコーラスが劇的なOrga Battle、次から次へとめまぐるしく曲が展開するThe Fairy Feller's Master-Stroke、たおやかな小品、Nevermore、7分弱にぎっちりと耽美と破滅のメロディーが詰め込まれた密度の濃さが圧巻のThe March Of The Black Queen、意外にもフォーキーな雰囲気を漂わせるFunny How Love Is、そして躍動感が見事なSeven Seas Of Rhyeで締めくくるまで、息をつかせる間もなく次から次へと繰り出される名曲の数々。

アルバムを俯瞰的に観ると、殆どの曲がシームレスに繋がっており、曲間の橋渡しも不自然さをほとんど意識させない実に見事な構成力。アレンジは徹底的に作り込まれており、コーラスワーク、ギターのオーバーダブにその傾向が顕著に現れている。他のバンドには真似の出来ない精緻さとこだわりが随所に、いや、全編を通して貫かれており、非の打ち所がない。間違い無くロック史上に残る名盤。久しぶりに責任推奨。

この作品、アナログ時代はLPの片面づつが、WHITE SIDE、BLACK SIDEと分けられ、両A面扱いだったが、実際には主にBrian Mayが作曲した曲が大半を締めるWHITE SIDEから聴き始め、Freddie Marcuryが作曲を担当したBLACK SIDEにターンする、といった聞き方が普通だったと思うし、CD化された現在もその並びで収録するのが当たり前になっている。そもそも、ギターの多重録音によるファンファーレ風のProsessionがプロローグ的役割を果たし、カーニバル風の音響で終わるSeven Seas Of Rhyeが次回作、Sheer Heart Attackの一曲目、Brighton Rockの冒頭部分の音響に繋がっている事に気がつかない方がどうかしている。ま、その割には見開きジャケットの表面は黒が基調、内側は白が基調であったのだが。

それにしてもライブ盤の発売まで2ヶ月かぁ。待ち遠しくて仕方ない。


Queen II (2011 Remaster)

Queen II (2011 Remaster)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Island UK
  • 発売日: 2011/03/10
  • メディア: CD



こちらが問題のライブ盤!

Live At The Rainbow

Live At The Rainbow

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Virgin EMI
  • 発売日: 2014/09/08
  • メディア: CD



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13 / BLACK SABBATH [HM/HR]

さぁて、過日のDavid Bowieの復活劇に勝るとも劣らない大イベントがやってきた。Black Sabbath、奇跡の(ほぼオリジナルメンバーでの)復活作だ。

Black Sabbathは1990年代終盤に一時的にオリジナルメンバーが集結してツアーを行い、Reunionという記念碑的なライブ盤も発表したものの・・・あれにはがっかりさせられたなぁ。Ozzyが不安定すぎてとても聴けたもんじゃなかった。俺自身、入手後、最後まで通して聴いたことは一回しかないかもしれない。

しかし、今回は以前のような過去のキャリアを振り返る同窓会的再結成ではなく、全て新曲でアルバムを作成し、ツアーも行う、いわば仕切り直しの再始動のようだ。残念なことに記者会見時にはオリジナル・メンバーでの再結成という話だったはずなのだが、ドラマーのBill Wardが戦線離脱してしまったようだ。ま、年齢のことを考えれば致し方ないか。

それにしてもOzzy脱退から35年ぶりだよ。おまけにプロデューサーはかのRick Rubinだ。彼は最近、複数のアーティストから「ペイに見合うだけの仕事をしていない」、「プロデュースをしないプロデューサー」などと、厳しい批判にさらされているが、Slayerでの一連の仕事や、Red Hot Chili PeppersのBlood Sugar Sex Magicでの「バンドを取り巻くユーザーのニーズを把握し、作り込み過ぎずにバンドが本来持っている音を尊重して結果を出す」プロデュースの手腕には一目置いており、(放っておいても結果の出るアーティストのプロデュースが多い、とも言えるが)「ラウドな音が好き」と公言してはばからないその彼がBlack Sabbathのプロデュースをするってんだから、こりゃ、相乗効果を期待するなって言う方が無理ってもんだ。

で、問題のブツ、今、届きました。これから曲を聴きながらリアルタイムで感想をしたためていこうと思う。(その瞬間のイメージを音だけをたよりに正直に綴るので、若干、厳しい書き方になってしまいがちなのは許してほしい)

13 / Black Sabbath

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さぁ、始まったぜ。1曲目。激しいイントロ。まさにストーナー・ロック。ボーカルが参入すると同じ主題を奏でつつも楽器群の音量、ニュアンスが控えめに。そしてわずかにテンポアップする展開部。なんだかデビューアルバムの表題曲、Black Sabbathに展開が似ているが、これは意識してやっていることだろう。おっと、キー・チェンジした。う〜ん、ドラマーのプレイがいまいちツボにはまっていない。かなりやりたいことを抑えているのはわかるのだが。うわー。ギター・ソロの音がでかすぎ。おっと、無難な感じの着地。

2曲目。怪しげなアルペジオから一気に爆音に突入するや、再び予想通りボーカルパートか。あれ?ちょっと待て。ボーカルの音程が正確すぎるぞ。もしかして補正かけてないか?あ、硬質な音のベースがいい感じだしているなぁ。おっと、1曲目に続き、テンポ・チェンジ、若干だがテンポがあがりながらも引きずるようなリズムは相変わらず。あ、Ozzyのシャウトらしきものが聴こえたが、大した高音でもないのに声が割れている。う〜ん、これが今現在のOzzyの限界なんだな。

3曲目。メインのリフが過去の曲にそっくりだが、まぁ、これはオリジネイターの特権だろう。腹の据わったリズム。この曲はテンポチェンジせずにまとめてほしいなぁ。う・・・ドラムのテンポ感が展開部で前のめりになりやがった。あ、ギターソロで唐突に終わった。もうちょっと引っ張りようもあっただろうに。

4曲目。このアコースティックギターと遠くから聴こえてくるようなボーカルのエフェクト、軽いパーカッション、どこかで聴いたことがあるなぁ・・・確か4枚目に似た感じの曲があったような気がするが、まぁいいか。あ、いいギターソロ弾いているなぁって、そのまま終わりかいっ!

5曲目。おお、つかみのいいリフだ。ボーカルも健闘している。これだよこれ!これがSabbathの音だ!いいねぇ。余分な音がない。ボーカルが引いての展開部、若干、中だるみはあるものの、ちゃんと次につなげている。
あれ、テンポが若干あがった。どうするつもりだろう?まぁ、昔からこういった手法はお得意だったのだが・・・あ、いかにものSabbathなギター・ソロ。音色も文句なし。キーボードが邪魔だが、この手法はSabotageあたりでよく聴かれた表現方法だ。

6曲目。うおお、またまたいきなり重いリフの攻撃。ボーカル参入前に既にテンポチェンジ。2拍3連の使い方はさすがだなぁ。できればドラムはユニゾンにせずに普通に叩いてほしいんだけど、まぁ、しょうがねぇか。キー・チェンジ、テンポ・チェンジをしながらのギター・ソロ、ボーカルとのかけあい・・・って、いきなり終わるなよ。

7曲目。冒頭部分に不穏なSE。どこかで聴いたようなフレーズのバラード。ちょっと軽いかな。いや、もちろん、重く、引きずるような感じは失っていないのだが、あ、ハーモニカのソロに続くギター・ソロ、いい味が出ているなぁ。ちゃんと次の展開にバトンタッチしているし。お、テンポがあがった。これはかっこいいなぁ。ギターがブルース・ハープをバックに大活躍だ。リフも魅力的。って、ああ〜、余韻を残して終わってほしかったなぁ。

最後の曲。かなり硬質なリフで始まり、途中で若干軽めに展開しながら、再びダークなリフに持ってくるこの展開は、名曲、Sabbath Bloody Sabbathのようだ。途中、大きな展開があればいいのだが・・・お、予想通り来た来た。来ましたよ。ちょっと引っ張り方が足りないような気もするが・・・あれ?また最初の雰囲気に戻ってきちゃったよ。どうするつもりなんだろう?あ、冒頭部分のリフだ。これを繰りかえして終わりなんてことは・・・あ、終わった。雨の降る音と鐘の音のSE、すなわちデビューアルバムの冒頭部分と同じ音響でアルバム終了!


さて、どう考えたらいいのだろうか?いや、だいたい、こうだろうな、という感じではあったのだが。


Tony Iommiのリフは相変わらず堅牢そのもの。ソロに関しては、昨今流行の無駄に音数の多いソロに挑戦していないところはさすが重鎮。自分の立ち位置を良く理解している。曲作りに関しては、一曲中で展開する昔ながらの手法が効果を上げているが、若干、性急すぎる感じがする。フェードアウトやカットアウトの多用を排除した結果、余韻の部分で若干の不満は残るが、これはいたしかたないところだろう。
Ozzyのボーカルについては、残念なことに高音は望むべくも無く、さらに以前のぶち切れた感じも一切無く、やたら正確なのがちょっと不気味。表現力は明らかに落ちているが、まぁ、この声があってこそのBlack Sabbathなのだな、ということを再確認させるだけの説得力は保っている。
Geezer Butlerのベースは、ギターの圧倒的な歪みに隠れがちながらも、相変わらず硬質な音で時折耳を奪われる光るプレイにはっとさせられる瞬間があり、まぁ、端的に言えばSabbathらしい(って、当たり前か)。
ゲスト・プレイヤーのドラムに関しては・・・う〜ん・・・及第点ではあるが、どうでもいいです(笑)。ドカスカパカスカ叩きまくらずにこらえたところは好印象だが、これはBlack Sabbathの復活アルバムで叩かせていただけるのだから表現欲を捨てて当然。もし、こやつが「ワシ、ここまでできまっせ!」とばかりに叩きまくったら即刻クビだろう。

アルバム全体を通しての感想。ようやく長い混迷の時代を乗り越えてあるべきBlack Sabbathが戻ってきた、という印象。ま、当然なのだが、技術革新のせいか、音像がクリアーになってこそいるものの、Ozzy在籍時のBlack Sabbathと印象がさほど変わらない。やはり、SabbathをSabbathたらしめていたのは、展開の多い曲作りとTony Iommiの重厚なリフ、そしてOzzyの独特の声質だったことを再確認した。残念なことにOzzyの表現力の低下はいかんともしがたいが、それを補うべく、Tony Iommi御大は大活躍しており、過去の名盤の延長線上(勿論、Ozzy在籍時代に限る)で受け止めるに足りる出来映えの作品になっていると思う。

では、現在進行形の超絶技巧が当たり前になっている新世代のメタル・バンドと比べてどうか、というと・・・これは比較する意味も無いし、比較して優劣を考えることなど愚の骨頂だ。Ozzy脱退後、紆余曲折がありつつも徐々に、そして確実に下降方向に向かっていたBlack Sabbathが、Ozzyの復帰によってBlack Sabbathらしさを取り戻したかどうかが最も重要なのであって、技術的に向上したかどうか、若い連中に負けない創造力を発揮したかどうか、ましてやバンドとして新しい地平を切り開いたかどうかなんてのはどうでもいいことであり、この作品を待ち望んでいたファン共通の暗黙の了解のはずだ.


そういうわけだからして、この作品、正直言って、Ozzy在籍時のBlack Sabbathを聴いたことの無い者、もしくは後追いで聴いて魅力を感じられなかった者は好意的に受け止められないと思う。

しかし、バンドの表題曲、Black Sabbathの怪しげな雰囲気に鳥肌を立てた者、Sabbath Bloody Sabbathのリフに熱くなった者、Hole In The Skyの腹の据わったリズムに頭を振りそうになった者、Iron Manの低音チョーキング一発にぐらりとした者、即ち、未だにあの暗黒感を忘れられずにどこかでひきずっているロック親父は必聴。「これだよ。これがBlack Sabbathだよ」と、思わせてくれる。


あ、ちなみにプロデューサーのRick Rubin、充分に仕事はできたのかなぁ?彼が好きなタイプの音になっていることはわかるけど、そもそもRick Rubin自身がBlack Sabbathの大ファンだったはずだし、御大Tony Iommiに口出し出来るなんて思ってもいなかったはずだ。ま、いいところに名前を並べてもらえて嬉しかったことは想像に難くない。


それにしても最近、ストーナー・ロックが見直されているようだけど、ようやく帝王の復活だね。平伏。



13

13

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Republic
  • 発売日: 2013/06/06
  • メディア: CD



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South Of Heaven / Slayer (安らかなれ、Jeff Hanneman) [HM/HR]

Thrash Metalの最重要バンドの一つ、Slayerのギタリスト、Jeff Hannemanが亡くなった。享年49歳。

断るまでもなく、Slayerは、Metallica、Anthrax、Megadethと共に、Big 4、即ち『スラッシュ四天王』を形成している。これらの全てのバンドが現役であるが、他の3バンドが時代の流れと共に柔軟にアプローチの方法を変化させていく中、Slayerは頑迷なまでに過激とも言える攻撃的スタイルを変えなかった。俺はそのSlayerのスタンスの潔さに、ジャンルを開拓し、定着させた者の責任感とでも言えそうなものを感じていた。
多分、デビュー当時からのSlayerのファンの殆どが、俺と同じ思いを持ち、Jeffの死を受け止められないでいるのではないか。

俺が一番好きなSlayerの作品。

South Of Heaven / Slayer

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1988年発表、4枚目のアルバム。一般には3枚目のReign In Bloodが名盤とされているが、いやいやどうして、このSouth Of Heavenの魅力は捨てがたい。俺自身は最初アナログ盤を購入、後にCDで買い直した程だ。

作品を横断的に聴いてみると、前作、Reign In Bloodでは大半を占めていたスピードで強行突破するスタイルの曲が少なくなっているが、ただ単にスピードを落としただけではなく、スピードを犠牲にした分、表現の幅が広がっているように感じる。それは豊かなリフ、グルーヴ感の増強に顕著に表れているのみならず、楽曲の完成度、ひいてはアルバムの完成度にまで良い影響を及ぼしている。二人のギタリストが分担しているリードギターは音楽的な整合性よりフレージングのインパクトに重きをおいているようで、一聴すると、「音程、合ってないんじゃないか?」と思わせる局面にもぶち当たるが、その常軌を逸した「ヤバい」感じが効果的に作用し、さらにアートワークとの相乗効果もあり、アルバム全編に漂うサタニックな雰囲気は絶品。勿論、前作に特徴的だった強行突破型の曲も数カ所に配置され、飽きさせる事無く一気に聴かせる。

全ての曲に捨てがたい魅力があるが、アルバム冒頭、スローなテンポから徐々にスピードを増しながらもどっしりとしたリズムと落ち着いたアンサンブルで風格を漂わせる表題曲South Of Heavenから、ギターのロングトーンにより引き継がれ、一気にスピード感溢れるSilent Screamになだれ込む一連の流れは文句のつけようが無い。また、Behind The Crocked Crossは、平準的なロックの普遍的なリズムパターン、いわゆる8ビートで演奏されているにも関らず、素晴らしいグルーヴ感を醸し出しており、実際の演奏スピードより疾走感を感じさせる。この疾走感は凡百のバンドではまず出せないだろう。変わったところではJudas Priestのカバー、Dissident Aggressorが収められている。ボーカルの表現力はさすがにRob Halfordには遠く及ばないが、原曲に対する愛情と敬意が存分に表れていながらも、楽曲自体が不思議とSlayerのアンサンブルにマッチしており、違和感を感じさせない。実に見事。

このアルバム、CDで聴くと解らないが、実はアナログ盤B面の一曲目に収録されているGhosts Of Warの冒頭部分、20秒程の音量が小さめに収録されている。で、あるがゆえに、A面終了後、ディスクを裏返してB面を聴き始めると自然とボリュームを上げてしまうのだが、結果的に爆音にさらされる、という小細工が施されている。ま、「出来るだけ大きい音で聴いてほしい」という、バンドの意思表示の為の作為だろう。


Jeff Hannemanは難病を患い、2年前からバンドの活動に参加出来ておらず、その穴はExodusのGary Holtが埋めていたようだが、このまま、Gary Holtが正式なメンバーとなり、バンドは存続するのだろうか?確かにGary Holt程の技巧派なら可能だろうが、あまり流麗に弾かれるとSlayerらしさが失われてしまうような気がしてならない。


いずれにせよ、Jeff Hannemanは、シーンを黎明期から牽引して来た真のスラッシャーだった。心の底から敬意、そして哀悼の意を表する。


Rest In Peace




South of Heaven

South of Heaven

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sony Legacy
  • 発売日: 2007/07/24
  • メディア: CD



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LATERALUS / TOOL [HM/HR]

実は、モダンヘヴィネスにカテゴライズされているバンドの多くは俺の趣味に合わない。それらの少なくない数が何らかの形でヒップホップからの影響を受け、音楽を構成する要素(特にボーカルのスタイル)に取り入れているが、俺自身がヒップホップの面白さを充分に理解できないからだ。

いわゆるミクスチャーロック、モダンヘヴィネスが音楽表現の方法にヒップホップの方法論を取り入れるようになったのには、90年代初頭のスラッシュとラップの接近に起源がある、と思う。
90年代初頭の一部のスラッシュ/ハード・コアのストリート感覚がヒップホップの連中のそれと通じるものがあり、また、もともとあまり音階を持たない、吐き捨てタイプのボーカルの多かった一部のスラッシュ/ハード・コアの音楽性はヒップホップと親和性が高かったことは納得できる。その結果、両者が融合、というより、ヒップホップにスラッシュ/ハード・コアが歩み寄った、と言ってもいいのかもしれない。もっと遡れば1980年代中盤、Run D.M.CがAerosmithのカバーをしたあたりで下地が出来ていたのかもしれない。

しかし、膝が隠れる程度の短いパンツ、もしくはダボダボのパンツをはいた短髪の体格のいい奴が腰を低く構えて頭を振りながらザクザクと変形ギターを弾いているのをみると、「おめぇ、どっちかにしろよ!」と毒づきたくなる。ま、偏屈ジジイの戯言だと思ってもらって結構だし、事実、そうなのであるが。

勿論、現象だけ見れば、ヒップホップはポピュラーミュージックに多大なる貢献をしていると思うし、ロックの表現を広げる受け皿になった事を考えれば文化的な側面も無視することは・・・・・・・ああ、めんどくせぇ。とにかく俺にはヒップホップの面白さはわかんねぇんだよ。


ただし、一般にモダンヘヴィネスと言われていようが、このバンドに限っては、俺は全面的に受け入れる。


LATERALUS / TOOL


tool.jpg


吉祥寺のタワレコで、ちょいグロなアートワークに興味を持って予備知識もなく購入したのがこの作品。果たして俺の予想を上回る驚愕の内容だった。
(注:このジャケット画像ではアートワークの全貌は全くわからない)

音自体はいわゆるモダンヘヴィネスになるのだろうが、まったくヒップホップの匂いがしない。いやいや、それどころか、どの枠にも嵌らないある意味異形の音だ。

ぶっとい音で禁欲的に演奏に臨むギター。流麗なソロは全くないが、バッキングやソロらしきパートでもバンド全体の効果を優先させたフレーズ設計をし、実践している事がよくわかる。実に堅牢な演奏。そして、ギターをも超える自由度で曲に色を与えるベース。これらを根底で支えるバカテクのドラム、この上に乗るのは要所では凶暴な一面を見せるも決して暴走することのない醒めたボーカル。そしてこれでもかと繰り返される変拍子。快楽的な音を排除して積み上げられて行くアンサンブルは威厳に満ちている。

このアルバムはトータルで聴くべきであって、一曲のみを取り出してどうこう言うのはちょっとどうかなぁ、とも思うのだが、とりあえず、一曲目のThe Grudgeは一番わかり易く出来ている。



終盤の40秒にもわたるシャウトが凄い、とか、エンディング直前のドラムが超人的、とか、そんなことはどうでもよろし。とにかく、バンド一丸となって作り出す音の説得力が凄い。スター・プレイヤーらしき者も不在なのにこの魔術的な音はなにごとだ?

醒めた衝動。理詰めの狂気。相反する要素が制御の行き渡った鉄壁のアンサンブルによって独特な暗黒感を持った音世界を現出させている。ところどころ民族打楽器の音も聞いて取れるが、それらは全く違和感なくアンサンブルにとけ込むどころか、必然性が割り当てられている。唯一にして無二の存在感を持った孤高の音世界。文句無し。

この音を何かに無理矢理例えるなら・・・醸し出す雰囲気はKing CrimsonのRED、と思っていたら、なんとダブル・トリオ編成で復活したKing Crimsonとツアーも行っていたらしい。それもKing Crimsonを差し置いてヘッド・ライナーとして、である。びっくりしたと同時に、納得もしてしまった。


現在のところ、フルレンスアルバムは合計4枚しか発表していない。それも2006年の10,000Day'sが直近だ。元々短いペースで作品作りをするバンドではないが、もう6年も経過してしまっているのみならず、各メンバーがそれぞれが別バンドで活動を行っているらしい。新作は望めないのだろうか?解散宣言は行っていないようなので、暗黒感満点の作品を引っさげて復帰するものだと俺は信じている。

待つよ。ええ、待ちますとも。




Lateralus

Lateralus

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Volcano
  • 発売日: 2001/04/18
  • メディア: CD





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