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Fear Inoculum / TOOL [HM/HR]

ようやくここに到達した。あ、いや、この作品が待ちに待った新作、という意味ではなくて、俺自身がこの作品についての記述をまとめる気になった、という意味なのだが。
 

Fear Inoculum / TOOL

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とりあえず、この作品の外郭を整理しておこう。アメリカのProgressive Metal(っていうのもなんだかしっくりこないが)の雄、TOOLの13年ぶり(!)の新作。フルレンスアルバムとしては5枚目に当たる。

このバンド、ジャケットのアートワークへのこだわり様が尋常ではない。この傾向は2作目にあたるÆnimaから顕著であるが、前作、10,000 Daysでは立体メガネまでジャケットに組み込み、奥行きのあるちょいグロで不可思議なアートワークで楽しませてくれた。が、今回はなんとジャケットに液晶ディスプレイを埋め込み、動画でアートワークを提示するという常軌を逸したともいえる行動に出た。これは初回版に限った完全限定プレスだそうで、本国アメリカでは50ドルほどで流通しているようだが、日本での流通量は極端に少なく、先日、Amazonに¥50,000の高値で出品されているのをみて呆れ返った(笑)。もちろん液晶ディスプレイにどのようなアートワークが表示されるのか興味はあったものの、前述の通りとんでもない金額設定がなされており、たまにタワレコなどで¥10,000程度で出ているのを発見し、購入に踏み切ろうとするもオンラインショップでの取り扱いがなかったりで、それならとりあえず簡易盤でいいや、と思ったものの、なんと発売は数カ月先になる、との情報が。そんなんありかい。

そして発売日である8月30日から1週間以上もダウンロード購入に踏み切れずに悶々としていたが、思い余ってついにAmazonからダウンロード購入。この3ヶ月聴きまくり、現在に至るわけである。


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肝心の収録内容だが、全10曲中、6曲までもが10分超の大作。合計90分近い長尺の作品である。

が、CDの規格では80分が限界のはず。実際に聴いて調べてみたところ、ダウンロード版に収録されている10分未満の曲の4曲は、曖昧な音響が不安を煽る、いわゆる「実験的作品」で、バンドらしいアンサンブルは皆無。内3曲がCDではオミットされていた。唯一CDに収録されているChocolate Chip Tripなる5分弱の曲はドラムソロの口実であることは明白であるが一応曲の体裁を成している。他方、オミットされた3曲はInterludeとして、また、高価なフィジカル版の購入を躊躇している俺のようなリスナーの背中を押すデジタルセールスの向上に貢献する「オマケ」として有用に作用している(笑)。が、正直言えば作品全体の「流れ」を構成するパーツとして欠かせないものであるか、と訊かれれば、否、である。俺自身、これらの小品はスルーすることが多い。

と、なると、評価の対象はやはり10分超の大作、6曲なのだが。


これは凄い。

今までのTOOLのシグネイチャーサウンドを踏襲しつつも、一回り大きくなった。とにかく作品の「幹」とでも言えそうな物が太く、もちろん音もとてつもなく太く、圧倒的な威厳に満ちている。

今作も複雑な変拍子やポリリズムを多用しているが、聴いていて不自然さは無い、と言うか、ついつい聞き入ってしまう。ギターとベースの拍がずれていく局面で「それでいいのか?」と思う向きもあるやもしれないが、最終的にちゃんと辻褄が合うようにアレンジされており、安心して音に身を任せられる。これらは80’s King Crimsonの手法だ。

要所において、サントゥール、タブラ、カリンバ等の民族楽器の音も聞かれるが、いわゆるエキゾチシズムに逃げ込むような安易な真似はしていないばかりか、アンサンブルにしっかりと溶け込むのみならず、楽曲中の必然性が割り当てられている。

成り行き任せの冗長なギターソロはない。唯一、アルバムのハイライトである7empestにおいて長めのソロこそあるものの、これとて綿密に設計されている。ボーカリストは感情的に叫ぶことは一切なく、強烈な引力のある声で冷静に歌い上げる。ベースはギターに比べると軽めな音響設計だが、時としてギターをも凌駕するほどの自由度、というか、ギターのリフ以上の責任を課され、アルペジオや多弦弾き等、様々な小技を繰り出しつつも禁欲的に演奏に臨んでいる。ドラムはかなり能弁であるが、役目を逸脱して暴走することはない。そして鉄壁のアンサンブル。兎にも角にも音のピースが複雑に、かつ寸分の狂いもなく組み上がっていく様は圧巻。この感覚は、あたかも奇妙で巨大な建造物が出来上がっていく過程を目の当たりにしているかのようである。

 


 
あるインタビューで、前作からこのアルバムの発表まで13年もかかった理由として、前作を超える作品を作らねばならないというプレッシャーに取り憑かれていた、という意味のことをボーカリストが言っていたが、これなら納得だ。俺たちも13年間待った甲斐があると言うものだ。


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冒頭、TOOLについてProgressive Metalという表現を使ったが、もちろんあれは便宜上のものである。音は間違いなくヘヴィであるしメタリックでもある。が、前述の通り、感情に任せた無作法なシャウトや、テクニックを誇示するようなギターの超早弾きも無い。そしてスピードチューンも一切ない。アルバム全体を聞いて受ける個人的な印象は、やはりKing CrimsonやPeter Gabriel時代のGenesisあたりで、いわゆるHeavy Metalとはかけ離れた位置に定位する。多分に大作主義がそう感じさせていることもあえて否定はしないが。


結論。この作品は安易に消費的に聞き流すべきではない。むやみに頭を振らずにじっくりと時間をかけて鑑賞すべき芸術作品だ。メタルな耳触りに惑わされてはいけない。それは彼らが仕掛けた「罠」である。


と、いうわけで、名作確定。文句なしの責任推奨。少なくとも俺にとっては今年一番の収穫。ロック愛好家を自認する者なら、覚悟を持ってこの音と対峙すべきである。


【追記】ようやく簡易版のCDが発売された。と言ってもギタリスト、Adam Jonesの手によるグロテスクなアートワークが十分堪能出来る豪華な装丁で、初回盤のジャケット内臓ディスプレイに表示されていた動画のダウンロードキーも付与されていると言う。値段も高めだが、TOOLのファンならこれを買わないという選択肢は・・・う〜ん・・・



Fear Inoculum -Digi-

Fear Inoculum -Digi-

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: RCA
  • 発売日: 2019/12/13
  • メディア: CD



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困った・・・ [HM/HR]

TOOLのFear Inoculumについて書きたいのだが、あまりにも内容が凄すぎて文章をまとめられない・・・

困った・・・

 
 
 
Fear Inoculum

Fear Inoculum

  • アーティスト: TOOL
  • 出版社/メーカー: Rca
  • 発売日: 2019/12/13
  • メディア: CD



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Bohemian Rhapsody : Original Motion Picture Soundtrack / Queen [HM/HR]

先日公開され、各所で話題になっている映画、Bohemian Rhapsodyを観た。とは言っても、実は試写会で公開より2週間以上も前に観ていたのだが。
 

以降はネタバレを含むので、映画を観に行こうと思いながらもまだ観られていない人は注意。


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今更断るまでもなく、この映画はQueenのボーカリストにして不世出のカリスマ、Freddie Mercuryの半生を描いたものだ。物語はあくまでもFreddieを中心に進行するので、他のメンバーの個人的なエピソードは皆無に等しい。
とはいえ、Queenがどのように誕生し、どのように成長し、どのようにメンバー間に軋轢が生じ、どのように復活を遂げたのか、そしてその裏にはどのような背景があったのか等が鮮やかに描かれており、全てのQueenファンが満足できる内容になっている。QueenのメンバーであるBrian MayとRoger Taylorが全面的に監修しているようなので、エピソードは限りなく真実に近いのでであろう。(後日記:と思っていたのであるが、検証してみたところ、主に時系列の歪曲による若干の虚飾があることが判明。ストーリーをドラマチックに仕立て上げるための作為であることは想像に難くない)

また、メンバー役の役者もなかなか似ており、特にBrian May、短髪になってからのJohn Deacon役の役者は本人かと見まごうばかりだ。Freddie役の役者も若干線が細めながらも、ステージシーンでの身のこなし方等、実に堂々と演じ切っている。圧巻。
 

そして忘れてはならないこの映画の大きな魅力、それは劇中に散りばめられたQueenの名曲の数々、これをコンサートさながら、即ち自宅では到底不可能な大音量で聴ける、ということだ。
 

実際に演奏シーンも随所にあり、これには当然Queenの音源を使用している。つまり、役者は「あてぶり」をしていることになるわけだが、各メンバー役の役者は楽器演奏の指導を受け、音こそ収録されていないものの実際に演奏しているのだという。勿論、Freddie役は実際に歌っているそうだ。
特にBrian May直々に指導を受けた役者の出来上がりはなかなかだ。俺自身もQueenの曲は何曲かギターでコピーしたことがあり、演奏シーンにおいて「本当に弾いているのか?」と、猜疑心を抱きながら役者の指先を注視したのだが、少なくともWe Will Rock Youのギターソロにおいて役者の左手は俺がコピーしたのと同じフレット上にあるのを確認した。と、言うことは俺のコピーも正しかったということになる(笑)。

そういった演技の枠を超えた役者の努力が結実し、演奏シーンにおいても不自然さが一切ない。これにより映画の世界に自然と入っていける。これは素晴らしいとしか言いようが無い。


ただ、残念なことに全ての曲が最初から最後までのフルバージョンで聴けるわけではない。だいたいそんなことしたら物語が全然展開しない(笑)。多くの曲はエピソードの一部として、またはエピソードを飾るバックミュージックとして扱われているので、不自然な編集が施されている曲がほとんどだ。「あの曲、最後まで聴きたかったのに〜」と、思うこともあるだろう。


そういう不満を払拭するためには、この映画のサントラ盤を聴くしかない、かもなぁ。
 


Bohemian Rhapsody : Original Motion Picture Soundtrack / Queen


Bohemian Rhapsody_ Original Motion Picture Soundtrack.jpg



今回、映画としてのBohemian Rhapsody、そしてこのアルバムを編集・制作するにあたって、ほとんどの曲でリマスタリングを施している、と思われる。いや、もしかしたら少し音量を上げただけかも(笑)。ま、いずれにせよ途中でカットするような事はせずに全曲最後まで収録されている。

出来ることなら全ての曲について熱い想いをぶつけたいところだが、このアルバム、CD媒体の限界である80分近く、22曲も収録しているので、そんなことしてたら全ての気力・体力を使い果たしてしまう。と、いうわけで、俺的な聞きどころを何曲か挙げてみたいと思う。勿論、これらにも映画のネタバレが含まれている。
 
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1曲目の20th Century Fox Fanfareは、言うまでもなくこの映画の配給会社、20世紀フォックスのロゴとともに流れるあのおなじみのファンファーレであるが、これがBrian Mayのギターオーケストレーションによって演奏されている。当然、新録。もちろん実際の映画でも使用されている。実に華やかなオープニング。

Queenのデビューアルバムに収録されていたDoing All Rightは、Brian MayとRoger Taylorが在籍していたQueenの前身バンド、Smile名義になっている。この楽曲は、Smile唯一の商業作品、シングル盤として発表されたものだ(注:他の説もあり)。今回、映画のために当時のボーカリストを引っ張り出して再レコーディングしたものらしいのだが、これが意外にもイけてる。改めてSmileのオリジナルバージョンを聴いてみると、すでにこの時点でQueenの魅力の一つである重厚なコーラスワークが確立していたことがわかる。当然、劇中にもSmileの演奏シーンがある。

We Will Rock You (Movie Mix)は、スタジオ録音から始まって、途中でライブ録音に切り替わっている。劇中でもそのような使われ方をしていた(ような覚えがある)。

Don’t Stop Me Nowには大胆な手が加えられている。本来、この曲のギターの出番はソロだけであったのだが、今回サイドギターが全編にわたって追加された。また、ソロも微妙にフレーズが異なる部分が聞いて取れたので、録音しておきながらもミックスダウンの過程でオミットされていたトラックを使用して再トラックダウン、もしくは部分的にBrian Mayによって再録されたのだろう。もともと躍動感溢れる表現が大好きな曲だったのだが、新たな魅力を獲得した。

さて、アルバム終盤にまとまって配置されているLive Aidでの演奏、これがクライマックスだ。映像作品としてはLive Aidのみならず、Queen名義の作品でも流用されているようだが、CDに収録されるのは今回が初めてとのこと。歴史的な名ステージだったのに、収録されているのは劇中で再現された4曲のみなのが残念。どうせならこの機会に他の曲を削ってでも30分弱のステージの模様を全て収録して欲しかったが、特筆すべきはFreddieが曲間で観客を煽る模様が別トラック化され、Ay-Ohという名前で収録されていることだ。75,000人の大観衆とFreddieの掛け合いは素晴らしい一体感。命の輝きを感じ、熱いものが込み上げてくる瞬間だ。
 

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前述の通り、映画の中では収録されている曲の全てが最初から最後まで使用されているわけではない。好きな曲なのに途中でカットアウトされてフラストレーションを感じた人はこのアルバムを聴いて溜飲を下げることが出来るだろうし、主要曲は網羅されているのでベスト盤的に聴くことも可能だ。

と、言うわけで、熱心なQueenのファン、映画を観てQueenに興味を持った人限定で推奨します。


Anyway、まずは映画、Bohemian Rhapsodyを劇場で観よう。話はそれからだ。そうだろ、Freddie?




ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)

ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Universal Music =music=
  • 発売日: 2018/10/19
  • メディア: CD


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Black Heaven / Earthless [HM/HR]

60年代終盤から70年代初頭にかけて音楽の世界においてもサイケデリック・ムーブメントなる動向が盛り上がった時期があった。当時の楽団が演奏する曲は動機から展開においてこそ一定の規則性を保ってはいるものの、独奏では冗長な表現に突入する局面が多く見受けられ、シラフで聴くと結構「キツい」局面にぶつかることもしばしばだった。

ま、その手の音楽を聴く場合、聴衆は薬物やら何やらで酩酊状態にあることを演奏者側が了承しており、そういった状況下においてはほとんどの者の時間感覚が麻痺しており、また「音」そのものを楽しむことことが出来たようなので、その時代のその手の音楽作品、ましてや実況録音盤(ライブ盤)を現在の価値基準で判断することは、下戸が酒の旨さを語るに等しいような野暮なことである、と思う。
 
 
それにしても、だよ。あれから半世紀が経とうとしているのに、こいつらはなんて時代錯誤なカッコいいことやってんだ。
 
 
Black Heaven / Earthless

Black Heaven.jpg

 
このトリオ編成のバンド、カリフォルニア出身で現在絶賛活動中(笑)らしいのだが、いったい今の今までどこでどうやって活動してきたんだってツッコミ入れたくなるくらいこの世知辛い世の中でおおらかなサイケデリアを体現している。ギターのリフ、和音の重ね方、ワウに代表されるエフェクターの使い方、ハードドライヴィンなリズム、どの局面においても70年代のベルボトムな匂いがプンプンする。







音圧で聴かせるタイプの楽曲。ギターの音は相当歪んでいる。が、これはHeavy Metalではない。Hard Rockにより近いが、いわゆるArt Rock、そう、サイケとプログレが未分化のまま渾然一体となっていた、あのころの音である。と、言うより、あの頃の混沌とした雰囲気を狙っていることは明らかである。

アルバムに収録されている6曲の全てが70年代初頭に最適化されているが、特に9分近いアルバムの表題曲は圧巻である。ボーカルパートは一切無い。ほとんど重厚なリフとギターソロのみで構成されている。強烈にグルーヴしまくるバックに背中を押されたギターは勇猛果敢に突進する。勿論冗長ではあるが、嫌味にならない程度の表現欲と、70年代を彷彿させるピッキングのニュアンス(これは重要なポイントだ!)、そしてツボを的確にとらえたフレージングで一気に聴かせる。はっきり言って、ずるい程にカッコいい(笑)。
 
 
実は、個人的にこのバンドの音にCaptain Beyondに似た雰囲気を感じている。勿論、70年代初頭のバンドであったCaptain Beyondよりは音はHeavyであるが、ボーカルの声質、ギターの重ね方、そしてなによりも突破力のあるリズム隊がCaptain Beyondを想起させるのである。ただ、Captain Beyondは変拍子やテンポチェンジを多用し、プログレに発展していく意欲が聴いて取れたが、Earthlessにはそういった要素を感じることはほとんど無い。このアルバム中、2曲において冒頭部分で聴き手を煙に巻く曖昧な音響を聴かせているが、それは曲構成や音響設計が精緻に計算されたプログレというより、サイケデリックな成り行き任せのジャムセッションの結果生まれた偶然の賜物という捉えられ方を想定して収録されている。が、これは勿論計算づくのことであることは明らかである(笑)。

この作品、ちょっと迷ったのだが、数回聞いても飽きないので(笑)限定的に強力推奨。もしかしたら、べたーっと歪んだ音の壁はシューゲイザーが好きな人にもアピールするかも。
 
 

BLACK HEAVEN

BLACK HEAVEN

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: NUCLE
  • 発売日: 2018/03/16
  • メディア: CD





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No Sleep 'Til Hammersmith / Motörhead (Lemmyよ、永遠に) [HM/HR]

Lemmy兄貴が亡くなった。それも全くの唐突に。癌告知の翌々日に死亡だって?どんだけボロボロになるまで頑張ってたんだよ。どうせ、「体調が悪そうだと?馬鹿言ってんじゃねぇ」とか言いながらJack Daniel'sをガブ飲みしてごまかしてたんだろ。


俺がいまさら断るまでもなく、Lemmy Kilmisterは、爆音帝王Motörheadの創設者にしてバンドの大黒柱。プロ、アマ問わず、数多のミュージシャンに影響を与えてきたロック界の最重要人物の一人であることには疑いの余地が無い。
Hawkwindを脱退後に結成したMotörheadでの活動が軌道に乗った時期が、たまたまNWOBHMムーブメントと重なっていた為、Motörheadをメタルの切り口で見る輩も多いが、それはちょっと違うんじゃねぇか、と俺は思っている。彼らが演奏していたのはどんな型にもはまらないオリジナリティー溢れるどやかましいロケンローだ。たまたま出た音響が結果的にヘヴィでメタリックではあったかもしれないが、アプローチの仕方は、いわゆる「様式美メタル」とは対極にある、と言っても過言ではない。その硬質で必要以上に情に訴えない演奏、そしてLemmyの醸し出す「漢」のイメージはメタル野郎のみならずパンクスにも支持され、ジャンルさえも超越した圧倒的なカリスマ性を身につけた。

それらの事は1981年に発表されたこのライブアルバムを聴けばおのずと分かるはずだ。

No Sleep 'Til Hammersmith / Motörhead
 
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アルバムはスピード感あふれる名曲、Ace of Spadesで幕を開ける。曲が終わると野郎どもの熱狂の歓声。ほどなく繰り出されるStay CleanではLemmyがドスの効いたベースソロを聴かせるが、尺の無意味な延長は無い。当然、長ったらしい成り行き任せのギターソロなんか無い。どの曲も2分〜4分代とコンパクトに収まっており、無政府にやりたい放題暴れ回っているようで実は制御が行き渡っている。一曲のみ、超有名曲、Overkillの収録時間が5分超となっているが、最後の40秒は演奏はなく、LemmyのMC、アジテーションだ。猛烈な勢いで発散される強烈なパワー。すげぇ。

パワーとスピード感溢れるPhil Taylorの野生を感じるドラミング、ギラギラした音で印象的なリフを弾き、ソロでは手数は多くないもののスリリングなスレーズを繰り出すEddie Clarkeのギター、リッケンバッカーを掻きむしるように鳴らし、マイクに向かって吠え立てるLemmy、これらの強烈な個性が渾然一体となって形成される巨大な音の塊が絶え間なく放たれる。アルバムを俯瞰的に見れば、爆音暴走ロケンローの絨毯爆撃。会場に充満する熱気が手に取るように分かる。暑苦しくも爽快。俺はこのアルバムをかけるとどうしてもボリュームを上げてしまう。勿論、途中で中断するなんてありえねぇ。そして、自然とJack Daniel'sのボトルに手がのびる。

収録内容はバンドの初期にして黄金期のベスト盤的選曲。捨て曲は一切なし。これは文句無く名盤保証。


それにしても兄貴、今年新作を発表したばかりじゃないか。もう、こっちじゃやり尽くしちまったのか。今頃はBon Scottと一杯やっている頃かい?


R.I.P


No Sleep 'til Hammersmith

No Sleep 'til Hammersmith

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sanctuary Midline
  • 発売日: 2013/08/19
  • メディア: CD



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