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South Of Heaven / Slayer (安らかなれ、Jeff Hanneman) [HM/HR]

Thrash Metalの最重要バンドの一つ、Slayerのギタリスト、Jeff Hannemanが亡くなった。享年49歳。

断るまでもなく、Slayerは、Metallica、Anthrax、Megadethと共に、Big 4、即ち『スラッシュ四天王』を形成している。これらの全てのバンドが現役であるが、他の3バンドが時代の流れと共に柔軟にアプローチの方法を変化させていく中、Slayerは頑迷なまでに過激とも言える攻撃的スタイルを変えなかった。俺はそのSlayerのスタンスの潔さに、ジャンルを開拓し、定着させた者の責任感とでも言えそうなものを感じていた。
多分、デビュー当時からのSlayerのファンの殆どが、俺と同じ思いを持ち、Jeffの死を受け止められないでいるのではないか。

俺が一番好きなSlayerの作品。

South Of Heaven / Slayer

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1988年発表、4枚目のアルバム。一般には3枚目のReign In Bloodが名盤とされているが、いやいやどうして、このSouth Of Heavenの魅力は捨てがたい。俺自身は最初アナログ盤を購入、後にCDで買い直した程だ。

作品を横断的に聴いてみると、前作、Reign In Bloodでは大半を占めていたスピードで強行突破するスタイルの曲が少なくなっているが、ただ単にスピードを落としただけではなく、スピードを犠牲にした分、表現の幅が広がっているように感じる。それは豊かなリフ、グルーヴ感の増強に顕著に表れているのみならず、楽曲の完成度、ひいてはアルバムの完成度にまで良い影響を及ぼしている。二人のギタリストが分担しているリードギターは音楽的な整合性よりフレージングのインパクトに重きをおいているようで、一聴すると、「音程、合ってないんじゃないか?」と思わせる局面にもぶち当たるが、その常軌を逸した「ヤバい」感じが効果的に作用し、さらにアートワークとの相乗効果もあり、アルバム全編に漂うサタニックな雰囲気は絶品。勿論、前作に特徴的だった強行突破型の曲も数カ所に配置され、飽きさせる事無く一気に聴かせる。

全ての曲に捨てがたい魅力があるが、アルバム冒頭、スローなテンポから徐々にスピードを増しながらもどっしりとしたリズムと落ち着いたアンサンブルで風格を漂わせる表題曲South Of Heavenから、ギターのロングトーンにより引き継がれ、一気にスピード感溢れるSilent Screamになだれ込む一連の流れは文句のつけようが無い。また、Behind The Crocked Crossは、平準的なロックの普遍的なリズムパターン、いわゆる8ビートで演奏されているにも関らず、素晴らしいグルーヴ感を醸し出しており、実際の演奏スピードより疾走感を感じさせる。この疾走感は凡百のバンドではまず出せないだろう。変わったところではJudas Priestのカバー、Dissident Aggressorが収められている。ボーカルの表現力はさすがにRob Halfordには遠く及ばないが、原曲に対する愛情と敬意が存分に表れていながらも、楽曲自体が不思議とSlayerのアンサンブルにマッチしており、違和感を感じさせない。実に見事。

このアルバム、CDで聴くと解らないが、実はアナログ盤B面の一曲目に収録されているGhosts Of Warの冒頭部分、20秒程の音量が小さめに収録されている。で、あるがゆえに、A面終了後、ディスクを裏返してB面を聴き始めると自然とボリュームを上げてしまうのだが、結果的に爆音にさらされる、という小細工が施されている。ま、「出来るだけ大きい音で聴いてほしい」という、バンドの意思表示の為の作為だろう。


Jeff Hannemanは難病を患い、2年前からバンドの活動に参加出来ておらず、その穴はExodusのGary Holtが埋めていたようだが、このまま、Gary Holtが正式なメンバーとなり、バンドは存続するのだろうか?確かにGary Holt程の技巧派なら可能だろうが、あまり流麗に弾かれるとSlayerらしさが失われてしまうような気がしてならない。


いずれにせよ、Jeff Hannemanは、シーンを黎明期から牽引して来た真のスラッシャーだった。心の底から敬意、そして哀悼の意を表する。


Rest In Peace




South of Heaven

South of Heaven

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sony Legacy
  • 発売日: 2007/07/24
  • メディア: CD



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