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サイケな降霊会、JOIN INN / ASH RA TEMPEL [Progressive]

バンドをやっていた頃、スタジオで煮詰まるとよくセッションをした。特に、新しい曲を持ってきたはいいがどうもまとまらないときなんぞは自然発生的にセッションになった。メインフレーズを繰り返して弾いているとドラムが思いもよらないフィルインをかまし、それにベースが乗り、繰り返し様々なパターンを試している内に気がつけば俺が作った原曲はどこへやら、とんでもない方向に曲が向かっている。だが、ここまで行くともう誰も止めることは出来ない。そうなると俺も決まったフレーズの呪縛を自ら解き、「そっちがそうくるならこっちはこういくぞ」と、音のキャッチボールが始まる。練習スタジオは自分が思いつくフレーズやアプローチの実験場となり、それは予約時間終了5分前の「いい加減にして早く出ろ」ランプがつくまで続くのだ。そうやって模索していくうちに面白い局面にぶつかることもあり、そこから曲がまとまることもあった。
勿論、こういった試行錯誤は曲を完成させるためのプロセスなので、一般には公開すべきではない。しかし、曲の完成度を鑑賞するのではなく、即興演奏の持つ瞬発的な音の力そのものを鑑賞するという楽しみ方もあり、そういった楽しみ方をするには決まった曲自体が不要な場合もある。その面白さを理解するには、多少の我慢はいたしかたない、のかな?

これは迷作にして傑作(本当か?) 

JOIN INN / ASH RA TEMPEL

ash ra tempel ji.jpg


74年発表、ジャーマン・プログレの大御所、ASH RA TEMPELの・・・何作目なのかな?良く知らない。このバンドに在籍していたKLAUS SCHULZEが好きで、遡って聴いたのでリアルタイムではなかった。

レコード時代にはA面に収録されていただろうと思われる20分近い大作(?)、FREAK’N’ROLL、これは明らかにセッションの模様だ。ラフ、かつフリーキーな音が延々と続く。いわゆるサイケな音。上手いんだか下手なんだかわからないトリオ編成の演奏に「ピュンピュン」というチープなシンセの音が響く。とても「緻密に計算された」などとは言いがたい。事前にある程度のフレーズの仕込みや展開の打ち合わせはしたんだろうが・・・チューニングも狂いまくりで、演奏時には薬物を使用していたのではないかと思わせる節もある。
そしてレコード時代にはB面に収録されていたはずのJENSEITSだが・・・う~ん・・・恐ろしい音だ。「黄泉の音」とでも形容すればいいだろうか。完全なノンリズム。気持ちの悪いオルガンが底辺でにょろにょろと蠢き、原型をとどめないギターの音がさざめき、むやみに大きなベースがメロディらしきフレーズを弾き、とどめは陰鬱なドイツ語の囁くような語り。正直言って、暗い。壁から地下水が滲み出す寒い地下室で霊の声を聴いているような感じ(って、そんな体験したことないが)。この降霊会で流したら即結果の出そうな音の拷問が24分続く。落ち込んでいる時に聴いたら大変なことになりそうだ。この曲もほとんど即興演奏だろう。
こういった「いつになったら結果が出るのか判らない音」、もしくは「結果がどこで出たのか判らない音」ってのは、付き合うのに根気がいる。が、「次はこうだろう」などと、経験値で予想するからいけないのだ。それぞれの楽器が出す音が偶然、もしくはちょっとした作為が功を奏して突然予測不能な磁場が発生する、その過程を含めて楽しめる時間的余裕と寛容さがなければこの作品は聴けない。が、一旦ハマると病み付きになる。


Join Inn

Join Inn

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: MG Art
  • 発売日: 2011/08/15
  • メディア: CD

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