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The Road To Red、聴いてみた [Progressive]

随分と長い間更新していなかった。

さて、King Crimsonが行った1974年の米国ツアー後半の模様、16公演+αを24枚のディスクに収め、豪快にパッケージ化した超絶ボックスセット、The Road To Red、聴いてみたので感想を。とは言っても、全てのディスクに個別のコメントなんか入れようも無いので、作品を横断的にざっくりと。

The Road To Red / King Crimson

road to red.jpg


この作品の最大の価値は、同じ曲を複数のパターンで聴き比べる事ができる、という点に集約されている。この時期のKing Crimsonはライブでの評判が非常に高く、数多の海賊盤が市場に出回っていたが、今回、CD20枚に渡って収録されている16もの公演をじっくり聴いてみて、その凄さを改めて確認することが出来た。

Bill Brufordのドラム、パーカッションは豪放磊落だ。豊かな創造力で縦横無尽に叩きまくる。同じ曲であっても、公演によってパターンが違っていたりするのは当たり前。スネアのタイミングも裏になったかと思えば表に戻ったりと、実に臨機応変に、というより、感性に任せて自由に叩いている。YesからBill Brufordを引き抜いたRobert Frippは「退屈なリズムキープから有能なジャズドラマーを解放してやった」なとど嘯いていた記憶があるが、納得だ。
この飛び道具のようなドラミングに対峙するベースのJohn Wettonが相当苦労したことは想像に難くないが、素晴らしいコンビネーションをみせつつも、ここぞ、という箇所では存在感のある音で自由自在に弾きまくり、ミュージシャン・シップの高さを存分にアピール。
これらのリズム隊に支えられた御大、Robert Frippのギターは素晴らしい輝きを見せる。彼もまた、既存の曲においても、ひらめきでフレージングを変更したりするが、これがまさに変幻自在。ソロパートにおいては何をか言わんや、圧倒的な力量と独創的なフレージングでグイグイと押してくる。が、決めるべき所はきっちりと決めており、これによってバンド・アンサンブルは目標地点を見失う事無く疾走することが出来る。圧倒的な求心力。
キーボード、バイオリン担当のDavid Crossも時として伸びやかに、時として緊張感を漂わせながらもバンドの音に華をそえる。旋律担当弦楽器奏者としてのFrippとのコンビネーションの取り方も絶妙。

こう文字にすると完璧な印象になるが、そこは彼らとて人間、実は結構、ミスもあったりする。Bill Brufordが裏とも表とも判断出来ない曖昧なタイミングでスネアを叩いてしまい、アンサンブルがグダグダに崩れたり、John Wettonがベースのフレージングをタメ過ぎて、とんでもないタイミングで間抜けな音を出したり、David Crossが複雑なシンコペーションのパターンを失念し、アンサンブルが決まらなかったり、あろうことか御大Robert Frippまでもが、Starlessにおいて、きっちり回数が決まっていた筈の進行を間違って一部飛ばしてしまい一人で暴走したり、と、注意深く聴くと結構突っ込みどころもあるのが微笑ましい。
とはいいつつ、それらの不手際は僅かであり、概ね超ハイ・テンションかつ超人的な集中力が相乗効果をもたらしているプレイの連続は圧巻。収録されている16公演の選曲はどれも似たり寄ったりであるにも関わらず、それぞれの公演にそれなりの聴き所があり、どのディスクを聴いても飽きるという事が無いのは凄い。

音質面においては、海賊盤から起こしたものあったりして、全てが良好と言う訳にはいかない。また、収録状況も、曲の頭が切れていたり、途中で終わってしまっているディスクが多く、その数は半数程に上る。海賊盤ならいざ知らず、サウンドボードからの録音でも頭切れしているものがあり、全くミキサー卓についていたスタッフは何やってたんだ、と、突っ込みを入れたくなる。以前、ここでも紹介した1973年のアムステルダムでのライブ盤、Night Watchもステージの冒頭部分が欠損しているが、あれは潔く不完全な一曲目はカットし、二曲目の冒頭から収録していたのに、なんで今回は不完全な曲まで収録したのだろう、との疑問が残るが、おそらく、ステージの記録として、あるものは出してしまおう、という判断だったのだろう。
また、Asbury Parkの公演が2回、ミックス違いで重複収録されている。事前に公表されていた収録曲情報から、Disc15はCollectable King Crimson Vol.1に収録されていたものにインプロビゼーションを追加した完全版、と思っていたのだが、実際はEasy Moneyの後半の即興演奏部分を、別の曲としてクレジットしていただけだった。つまり、Disc15とDisc16はミキシングが異なるだけで収録されている演奏は同じである。
Disc21に収録されているRedの2013 Stereo Mixでについては、今までのミックスでは聴こえてこなかった音も鮮明に聴こえるミックス・ダウンがされているものの、「だから何?」って感じは否めない。ま、16公演中、14の公演でStarlessが演奏されており、連続した公演を経て、当時は未発表の新曲であったStarlessはライブの積み重ねで磨かれて最終的にこうなりました、って事なんだろうけど。多分、このあたりが作品のタイトル、The Road To Redの由来なんだろう。


さて、この24枚組のセット、第3期King Crimsonの全てのファンに是非聴いて欲しいのだが、若干、というか、かなり悩ましいことがあって。

Disc1からDisc21まではCDフォーマット、Disc22はKing Crimson USAの30th anniversary remaster、及び、その元ネタとなったDisc15とDisc16に収録されているものと同内容、そして、Disc21とこれまた同内容のRed 2013 stereo mixがDVDオーディオに収録されている。Disc23では、Disc1からDisc20までのマルチ・トラックで録音された、即ち音質の良い4公演がブルーレイ・オーディオにハイレゾで収録、Disc24には、再びRedやらUSAやら、その元ネタであるAsbury parkでの公演がミックス違いでこれでもかとブルーレイ・オーディオにハイレゾで収録されているのだが・・・

なんとウチの環境ではDisc23が再生出来なかった。しかし、同じ規格であるDisc24は問題なく再生出来る事から、購入元のカスタマー・サービスに連絡したところ、同様の指摘が複数あり調査中、とのことだった。たっぷり3週間待たされたのち、販売元にはそのような不具合は報告されていないので、個体不良である可能性が高く、代替品を送るとのこと。しかし、届いた代替品でも全く同じ症状が発生。再度、クレームを入れたところ、機種依存の可能性を含め、調査するので待ってくれ、との返答。再び2週間以上もたっぷり待たされた後、販売元は商品のロット不良とは認識しておらず、機種依存の可能性を検証することはないとの回答があった、との報告。そして、再び代替品を送っても同様の症状が発生する可能性がある、よって、返品、返金にさせてくれ、と、ある意味良心的な対応があったのだが。


冗談じゃないよ。俺は気に入っているんだよ。


まぁ、前述の通り、問題のDisc23に収録されている演奏は、Disc1からDisc20までに全て含まれているし、なによりこの超ド級のセットを所有しているという満足感を放棄する気にならず、返品、返金の申し出は辞退、というより拒否した。
再生出来ないディスクがあろうと、劣悪な音質のディスクがあろうと、過去作品と収録内容が一部重複していようと、The Road To Redは、「音楽データ」では無く、手に取って楽しむ事の出来る「物」として持っていたい、と思える程に、この作品はファンの所有欲を強烈に刺激する作品なのだ。

市場価格では2万前後が妥当な線のようだが、Disc1からDisc21まででも充分その価値はある。そもそも、ブルーレイ・オーディオの恩恵を充分堪能出来るような立派なオーディオ・セットを所有しているような人は少数派なのではないだろうか?事実、ウチの機材では充分とは言えないし。
以上のような再生機種に依存するトラブルが発生する可能性もあり、無条件に責任推奨、と言えないのは残念だが、第3期King Crimsonのファンなら、所有していることに喜びを感じることだろう。

限定盤らしいので、迷っている人は早めに決断した方がいいと思う。


The Road To Red (21cd+Dvd-Audio+2blu-Ray)(Limited Edition Box Set)

The Road To Red (21cd+Dvd-Audio+2blu-Ray)(Limited Edition Box Set)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Panegyric
  • 発売日: 2013/10/17
  • メディア: CD



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コメント 2

disc23

うちも同じ症状でしたのでアマゾンのレビューに書き込んだ所 解決方法を見つけた方が書き込んでくださいました ぜひ御覧になって下さい
by disc23 (2013-12-17 11:20) 

lagu

disc23さん、初めまして。
ご紹介いただいた方法も考慮に入れて色々と試してみたのですが、やはりダメでした・・・やはり、再生機種に依存するみたいですね。
まぁ、我が家のブルーレイディスクの再生機器は液晶TVにビルトインされているプレイヤーという脆弱な環境であり、もし再生出来たとしても音響的にハイレゾの恩恵は受けられそうに無いので半ば諦めています(笑)
by lagu (2013-12-17 17:58) 

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