SSブログ

Purple Rain / Prince And The Revolution [Rock]

80年代中盤、ロックとポップの境界線が限りなく曖昧になり、ユーロ・ビートなんかも幅をきかせていた時代に、ソウルでポップなふりして実はグラマラスなロック・アルバムを発表した奴が居た。

PURPLE RAIN / PRINCE AND THE REVOLUTION

9189599.jpg
当時、このアルバムからシングル・カットされたWhenThe Doves CryがMTV(Best Hits In USAだったかも・・・)でヘビー・ローテーションされ、大ヒットした。その退廃的、かつ官能的、ナルシストぶりはインパクト充分であり、相当話題になったが、あまりにもビジュアルが強烈だったので、と、いうより、あまりにも変態チックだった為か、変人扱いされがちだった(当然である)。が、音楽的には非常に骨格も肉付きもしっかりとしており、実にまっとうな曲だった。

アルバムを通して聴くと、シーラ・Eが演奏していると思われるパーカッションの音が必要以上に大きくミックスされており、若干気になるものの、猛烈に発散する熱いロック・スピリットと、迸る表現欲がプラスに作用し、非常に良質な作品に仕上がっている。怪鳥の鳴声を連想させるPrinceの破滅シャウトも特徴的。また、この人は前述の通り、『色モノ』扱いされがちだったが、実は意外にも良い曲を書く。このアルバムに収録されている曲も粒が揃っており、またアレンジも秀逸で、聴いていて飽きるということが無い。現在の基準で聴いても充分観賞に耐える完成度を持っており、途中で曲を飛ばすことも無く一気に聴けてしまう。リアルで体験した者にとってはこのアルバムはエバー・グリーンであろうし、後追いでも充分その面白さは解る筈だ。いずれにせよ、80年代を代表する『一般受けする』ロック・アルバムの代表作であることは間違いない。

この作品、同名のPRINCE初主演映画のサントラ盤、という位置づけになっているが、実は映画はまだ見たことが無い。評判を訊くと、『傑作!プリンスのファンは必見!』という者と、『くだらん。バカバカしくて笑えるのが救い』という両極端に分かれるようである。
肝心の映画ではどのようなシーンでどの曲が使われていたのか、非常に興味がある。機会があったら観てみようと思う。

ところで、当時は音楽演奏で使用するデジタル機器の性能が飛躍的に上がり始めた時期であった。記憶では、某国の音楽協会加盟のクラシック楽器専門の音楽家達が『キーボード一台で弦楽アンサンブルやオーケストラの音が出せてしまうのでは我々の仕事が減ってしまうではないかコノヤロー』と、デモやストライキなんぞを行って物議を醸したのもこの時期ではなかったか。音を聴く限り、この作品でもそんな音楽家達の攻撃対象となるイクイップメントを要所で使用している。が、よくよく聴いてみれば、本当に必要な場所では生のストリングスを使用しているのがわかる。このあたりにPrinceの音に対するこだわりが見て取れる。どんなに電子楽器の音が生音に近づいても、また、実際に生楽器の演奏をサンプリングしたとしても、音源に対するインターフェース、すなわち演奏媒体、演奏方法が変われば、自然とフレージングや発音ニュアンスに違いが生まれ、同じ音になろうはずがないのだ。長い期間を経て醸造されたクラシック音楽で使用される生楽器のアンサンブルの美しさの代替なぞあろう筈も無いのである。これを理解せずしてテクノロジーの発展に戦々恐々としていた連中の音響に対する理解は、潮干狩りが出来る遠浅の海岸より浅い、と言わざるを得まい。

Princeはいまだ現役で、コンスタントに作品を発表しているようだ。つい先日も新作を発表したようだが、俺はこのPueple Rain以降、2~3作までは聴いたものの、その後は全く聴いていない。興味が無いわけではないのだが、ご無沙汰していた20年間を埋めるのは相当な出費と時間を要する覚悟をせねばならず、踏み切れないでいる・・・

Purple Rain (1984 Film)

Purple Rain (1984 Film)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Warner Bros.
  • 発売日: 1994/06/17
  • メディア: CD

nice!(2)  コメント(4)  トラックバック(1) 
共通テーマ:音楽

nice! 2

コメント 4

deacon_blue

☆ 最初のシングルの時はボスの1位を邪魔したのでこのヤローと思っていたのですが(爆),次の「レッツ・ゴー・クレージー」でノックアウトされました。で,改めてLP買って聴いてみるとこれは凄いと脱帽したわけです。映画は「ありふれた青春映画」の枠を使ったもので,映画ファンからみれば。。。音楽ファンが見れば名作(かもしれない)。あたしは昔,深夜映画枠で放映された時にビデオに録って何回か見ました。
by deacon_blue (2007-09-04 11:11) 

lagu

deacon_blueさん、こんばんは。
本文では書きませんでしたが、この作品はいわゆるブラック・ミュージックとロックの境界線をぶち破った革命的な作品だと思っています。
それにしてもPurple Rainをご覧になったんですね。説明を読む限り、だいたい予想通りですねぇ。でも、やっぱり観てみたいなぁ・・・
by lagu (2007-09-04 22:28) 

りおっち

ご無沙汰です。
当時プリンスを好きだということで私も立派な変態女子の地位を確立し、
未だに高校の同窓会ではそれが話題になります。

映画・・・・見ましたよ、しかも場所が何故か新宿の歌舞伎町。
しかも3回見に行きましたが内容は要約すると「大人はわかってくれない」です。
永遠のテーマですわ~。
その後「アンダーザチェリームーン」という映画もわざわざ映画館で2回見ました。

このアルバムはどれも好きな曲ばかりなのですが、
特にDarling Nikkiという曲がスルメイカのように何度聴いても良かったですね(内容のエロさは置いておいて)。

ちなみに殿下は今年の英国公演を最後に音楽活動を辞めて、
聖書を学ぶ旅に出てしまうそうです(ちょっと前の最新情報)。
確かに彼の求道的でもある姿勢から考えると納得せざるを得ない帰結なのですが。

パープルレイン以降の隙間、私が埋めて差し上げましょうか?
by りおっち (2007-09-06 10:47) 

lagu

りおっちさん、こんにちは。お久しぶりです。

そうですか。観に行きましたか。それも歌舞伎町へ。おおかた、その後はコマ劇場あたりのディスコ(死後?)に繰り出していたんでしょう。

>パープルレイン以降の隙間、私が埋めて差し上げましょうか?

おお、ありがたくも恐ろしい(笑)。いったい何枚くらいあるんですか?
by lagu (2007-09-06 14:15) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1