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Monsoon Featuring Sheila Chandra [Pops]

少し前に、「ネオ・アコースティック」として紹介されたBill Nelsonの作品を取り上げた。で、思い出した。ほぼ同時期にインドの民族楽器を多用した音造りで「ネオ・アコースティックの最有力株」としてもてはやされたMonsoonというバンド、というよりプロジェクト、とでもいうものがあった。後にソロ・アーティストとして成功するSheila Chandraの歌手デビュー作である。

Monsoon Featuring Sheila Chandra

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当時聴いていた日本盤はThird Eyeというタイトルだったはずだ。ジャケットも全く違うが、ボーナス・トラック以外は内容は同じである。

音の方はというと、タブラなどの民族楽器を効果的に多用し、ギターやピアノの奏法もそれなりに工夫し、なんとなくインドっぽさを前面に出した良質なポップ・ミュージックである。なんと、前述のBill Nelsonがギターで参加している。興味深いのは2曲目に収録されている、Beatlesがインドの民族音楽に影響を受けて作曲した、Tomorrow Never Knowsのカバー曲。ある意味、逆輸入とも取れる興味深い出来事…と思うのは早計だ。





実は、多くの人が誤解しているが、Sheila Chandraはインド人ではない。インド人の血をひいてはいるようだが、れっきとしたイギリス人である。そしてMonsoonは「インド音楽をルーツに持つミュージシャンたちが自然発生的に始めたバンド」などではなく、敏腕仕掛け人により、「すで若手女優として芸能界で活動していたSheila Chandraのエキゾチックな容貌を有効活用して一発当てよう」と、企画したバンドだったはずだ。当然、この作品で歌われている歌詞も全て英語である。もしかしたら母体となったバンドはあったかもしれないが、デビュー時点で音楽のアプローチの仕方を変えさせられている、と思われる。

この作品を「ワールド・ミュージック・ブームの先駆け的作品」と位置づける風潮も一部にあるが、俺は「それは違うんじゃねぇか?」と思っている。
そんな事言ったら、作品創りにインドっぽいテイストを取り入れたBeatlesだってRolling Stonesだって、Led Zeppelineですらワールド・ミュージック・ブームの先駆けになってしまうではないか。

異論もあること承知でをあえて言わせていただく。

そもそも、俺は「ワールド・ミュージック・ブーム」なるもの自体に疑問を持っている。80年代以降、急速に広まる情報化社会の中で、それまで紹介されることの少なかった欧米以外のポピュラー・ミュージック作品も比較的簡単に入手出来る様になった。それと同時に民族意識に深く根差した、いわゆる民族音楽も(以前に比べれば)頻繁に紹介できるようになった。しかしながら、それらの音楽文化の自国でのスタンスを的確に理解し、整理した上で商業ベースに乗せるような知識や知恵、能力を持った者が業界にはいなかった。そこで、どういう紹介の仕方をしたら良いのか苦慮した音楽業界が、「欧米以外から発信された音楽はとりあえずここに入れてしまえ」とばかりに「ワールド・ミュージック」というカテゴリーを作り、全部押し込んだ、というだけの話ではなかっただろうか?

こんな乱暴な話があるかい。

その後、韓国のドラマがきっかけで日本で物凄い勢いの盛り上がりを見せた韓流ブーム、その勢いにのって台湾、香港、中国、そしてもちろん韓国、と、比較的日本に近い国、地域のアイドルやアーティスト達が次々と日本進出を果たしたが、彼らの作品は大手ショップでさえも「ワールド・ミュージック」のコーナーに集中していたというお粗末な状態。

しかし、これらのアーティスト達の全てが自国の民族意識に深く根差した作品作りをしているわけではない。勿論、海外のマーケットに進出するにあたって、味付けとして「民族テイスト」を取り入れることもあるだろうが、彼ら彼女らの多くが(もしくはプロダクションの多くが)目論んでいるのは、ワールド・ワイドなアーティストの仲間入りなのだ。この視点から考えれば、J-POPだって欧米から見れば「ワールド・ミュージック」というジャンルに放り込まれても全く文句なぞ言える筋ではなかったりするのだ。

ちょっと視点を変えてみよう。日本の歌謡界で活躍したアグネス・チャン、テレサ・テン、マルシア達。彼女らは日本とは他に母国があるが、日本の歌謡界で特別に外国人扱いなど受けていないではないか。立派に日本語で歌ってコミニュケーションを取って、他の日本人歌手と同じ土俵でちゃんと評価されている。

大量に消費される商業音楽世界でいち早く世界進出したイギリスやアメリカの音楽を、やれアート・ロックだ、やれハード・ロックだ、やれプログレだ、パンクだニュー・ウェーブだシューゲイザーだゴシックだスロー・コアだいやサッド・コアだ果てはポスト・ロックだのと、その時々で消費意欲をかき立てるためにトレンドを仕立て上げ勝手にレッテルを貼った評論家を含む音楽業界が、インド人の血をひくイギリス人歌手が「なんちゃってインド風」の演奏で歌っているという理由だけで、後になってから「Monsoonはワールド・ミュージック・ブームの先駆け」などと言い出すのは承服いたしかねますなぁ。

とは言いつつ、これがバンドで作った音かどうかは置いておくとしても、内容的には非常に聴きやすく、前述の通りインドっぽさを感じさせ、なんとなくエキゾチックな気分にさせてくれる。どことなくお香の匂いが漂ってきそうな雰囲気。かといって身体にまとわりつくような感じも無く、爽やかな印象。現在の価値基準で聴いても充分イケる。いわゆる80年代の流行の音からは微妙にずれていたがゆえに現在でも新鮮に感じるのはなんとも皮肉ではあるが、一聴の価値はある。

【追記】いわゆる『ワールド・ミュージック』なるものに関してはまだまだ吐き出したい毒がたくさんあるが、それはまた別の機会にでもお付き合い下されい。

Monsoon Featuring Sheila Chandra

Monsoon Featuring Sheila Chandra

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Mercury
  • 発売日: 1995/03/21
  • メディア: CD


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自主制作映画で使わせてもらったぜ、「ポルナレフ革命」 [Pops]

2年ほど前にしたためた過去記事ではあるが、ちょっと思うところあって直近の位置に移動した。(R.Yさん、見てるか?)

確か高校三年生の時だったと思う。文化祭の出し物に困窮していた俺たちのクラスに、願っても無いような幸運が訪れた。なんと、クラスメートの一人が16ミリ機材を買ったのである。今でこそ家庭用にビデオカメラが普及しているが、当事は音声入りの動画を撮影するなんてとてもとても贅沢なことだったのだ。
演劇部に所属していたクラスメートの熱い提案で、この16ミリ機材を使って自主製作映画を作って文化祭に出品しよう、という事になった。内容は・・・まぁ正直言って全く他愛の無い青春恋愛ものである。しかし、俺たちは「自分たちで映画を製作する」という創造的作業に夢中になった。さまざまなぶつかり合いがありながらも撮影を進め、現像からあがって来たフィルムを、学校そっちのけで友人宅に大挙して泊り込み、連日連夜、「あーでもないこーでもない」と編集し、文化祭の開催が目前に迫ってようやく最終形が見えてきた頃、「何か物足りない」ということになった。音楽のことを全く考えていなかったのである。俺は、「これなんか使えるんじゃないか?」と、当事気に入っていたLPをクラスメート達に聴かせた。「あ、この曲いいじゃん、あ、この曲は最後のシーンにぴったり。これで行こうぜ」

即決だった。「じゃ、うまく合せられるように考えてな」って…おいおいおい。フィルムのサウンドトラックには台詞が入っているし、今更音楽と併せてアフレコする時間なんかないし・・・

かくして、「最初はこの曲をかけて×分×秒にフェードアウト、上映が始まって××分××秒後にこの曲をかけて××分××秒後にフェードアウト云々かんぬん」というタイムチャートを作り、最終的には文化祭開催期間中、一日4~5回の上演(30分程度の作品だったので)にあたっては、ほとんど俺がミキサーとターンテーブルを目の前にオペレーションする羽目になったのである。

なんか、すっげぇ楽しかったなぁ。

で、これがその時に使った音楽である。

MICHEL POLNAREF

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LP発売当事の邦題は「ポルナレフ革命」。数年前にCDで再購入したが、アートワークも曲順も、アルバムタイトルさえ邦盤とは異なっている。今回俺が購入したのはどこの国でプレスされたものなんだろう?良くわからない…

日本のメディアから勝手に「フレンチ・ポップスの貴公子」という称号を冠されたミッシェル・ポルナレフは、明らかに「色物」である。まるで少女漫画から抜け出して来たかのようなルックス、ケバケバしいステージ衣装、ロマンチックな主題。しかし、これらのイメージは計算の上で捻出された虚飾であることは明白だ。デビュー当時はあのトレードマークのサングラスもかけていなかったようだし、髪形もストレートだったようだ。
音楽的にはエルトン・ジョンに通じるところもあり、非常にわかりやすい良質なポップスだが、改めて今こうして聴いてみると、「色気づいたティーンエイジャー向けの音楽」という印象は免れない。が、多分ポルナレフ本人もターゲットをティーンエイジャーに絞っていたはずだ。そういう意味では彼の読みどおりだったのだと思うし、俺たちも彼の術中に見事にはまったわけだ。そのくらい当事のポルナレフにはスターとしての存在感があった。

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Amarantine / ENYA [Pops]

仕事から帰ってきたら、ENYAの新作が届いていた。せっかくだから聴きながらリアルタイムで感想を綴ってみよう。

Amarantine / ENYA

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1.Less than a pearl : 5年ぶりの新作にしては意外にもちょっと暗めの一曲目。転調もあるもののやはり全体的に暗めの印象のままあっという間に終わる。ま、プレリュードという位置付けなのだろう。

2.Amarantine : 表題曲。これこそENYAの音だ。これはこれからのクリスマスシーズンに絶対に受ける。以前より若干唄が前に出ているような気がする。ちょっと短いのが残念。

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ENYAのデビュー作 [Pops]

amazonから、予約していたENYAの新作を発送した旨のメールが来た。多分、明日には届くだろう。楽しみだがどんな内容か予測はつく。大きな音楽的変化はないに決まっているし、ファンもそんなことは期待していない。唯一無二の普遍的美しさを持ったENYAのスタイルには革新は必要ない。万が一、ENYAが流行の音を作品に取り入れたり、技巧に走った音創りを始まったら魅力が半減してしまうことはENYA自身も充分理解しているはずだ。

過去に発表された5作品(ベスト盤やシングル盤、企画盤を除く)は全て購入した。個人的にはシェパード・ムーンに思い入れが深く、一番良く聴いているが、昨日、復習でもしようと思い立ち、最も聴いていない一作目を久しぶりに聴いてみた。

ENYA

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ジャケットを見てみると、1986年の作品。日本デビュー作にして出世作、WATERMARKの二年前にあたる。日本では、3作目(4作目だったか?)の発表後、ずいぶん経ってから発売された記憶がある。俺自身は既に輸入盤で購入していたのだが、CELTSという新しいタイトルを冠され、ジャケットも変わっていたので、ショップで見かけたとき、「すわ、ニューアルバムか?」と、条件反射的に買いそうになってしまった。あぶねぇあぶねぇ

The Celts

The Celts

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Warner Bros.
  • 発売日: 1992/11/16
  • メディア: CD

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北欧前衛ポップ (The World Is Saved / Stina Nordenstam) [Pops]

Sigur Rosの新作を買うつもりでショップに出かけたが、知らないうちにお気に入りの女性アーティストの新作が発売されていたことに気がつき、急遽方向転換、速攻で購入。一度に二枚も新作を買うと消化しきれないので残念ながらSigur Rosは後回しだ。

最近、「アーティスト」という言葉が昔に比べて安易に使われているような気がしてならない。自らは創作活動を行わず、商業音楽作曲家・作詞家に委託した曲を自分の持ち歌にして、(人によっては自作と偽り)マスメディアとの緊密な協力体制で大衆の志向をでっち上げ、大量購買層(若者)に迎合した流行の曲調、音処理、判りやすいメッセージでメガ・ヒットを送り出す流行歌手すら、「アーティスト」と呼ばれているような気がする・・・

え?最近は歌手のこともアーティストっていうの?あ、そうなんですか・・・

ま、それはともかく、STINA NORDENSTAMは間違いなくアーティスト(芸術家)だ。

THE WORLD IS SAVED / STINA NORDENSTAM

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スウェーデンだったかデンマークだったかノルウェーだったか忘れたが、とにかく北欧の女性アーティスト。特に彼女の作品を心待ちにしているわけではないのだが、新作が出ているのを見ると迷わず買う。

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