Brain Salad Surgery / Emerson,Lake & Palmer (ジャケットの楽しみ) [Progressive]
LPレコードを購入する際、ジャケットデザインの良し悪しは重要な判断材料だった。縦横30センチの大きなLPジャケットは、収録されている音楽のイメージを膨らませる重要な要素だったし、音楽を聴きながら鑑賞すべき「作品」でもあったのだ。
しかし、後にCD全盛時代となると、CDのジャケットサイズにあわせてジャケットデザイン自体がどんどん簡素化されていった。CDケースの小さなサイズではおのずとビジュアルで伝えられることに限界があったのだろう。画一的な小さなプラスティックのケースに閉じ込められて、アートワークも自由度を失ってしまった。最近は一部に若干の工夫も見られるが、いかんせんサイズが小さすぎる。
こうして、かつてのLPのジャケットを手に取ったときのわくわくするような感覚は失われてしまった。最近ではネットで音楽データのみを購入出来るようになっているが、所有している「物」を手にとって見ることが出来ないなんてなんとも味気ないもんだ。
それにしてもこの作品のジャケットは強烈だった。
BRAIN SALAD SURGERY / EMERSON,LAKE&PALMER
ミュージシャンの名前を羅列しただけの何のひねりも無い名前のプログレバンド、通称ELPの最大の「ウリ」はなんと言ってもKEITH EMERSONの超絶キーボードだろう。まるで打楽器のように鍵盤を叩きまくるそのアグレッシヴ、かつアクロバティックなプレイは他の追随を許さなかった。ベース&ボーカル担当のGREG LAKEは時折ギターを弾くが、ギター専任者は不在。確かにキーボードがこれだけ弾けてこれだけ自己顕示欲が強ければギター奏者は不要だったはずだ。
後にSFホラー映画の金字塔、ALIENの美術で一躍有名になるH.R.ギーガーの手によるこの作品のアートワークは秀逸だ。なにやら恐ろしげな機械に蹂躙された骸骨。観音開きの表ジャケットを開くとそこには目を閉じたメデューサ。友人から借りてこのレコードを手にした時は「こ、これはただごとじゃないぞ・・・」と、思ったものだ。実際に存在しないものをここまでリアルに描ききる創造力に驚嘆した。エアーブラシという技法を知ったのも確かこの時ではなかったか。
肝心の内容もジャケットの素晴らしさに負けず劣らず素晴らしい。この作品のメインである組曲、KARN EVIL #9や、現代ピアノ曲(作曲家の名前は忘れた)のELP的解釈、TOCCATA等の理解し易い暗黒感はジャケットのイメージにピッタリとはまっている。特にTOCCATAの聴き手を無視して積み上げられていく凄みのある音の数々にはバイオレンスすら感じる。
ところで、ELPはプログレバンドとしては珍しくルックスのいいバンドだった。特に文学青年風のGREG LAKEは女子から人気だったが、人気絶頂期から彼の脂肪細胞は順調に発育し、ついにこの作品に同封されていたポートレイトでは見るも無残な姿をさらしてしまった。本人達がアイドル性を意識してのことなのかどうかは知らないが、ソフトフォーカスで撮影されていただけに尚更痛々しかった記憶がある。周囲の人間は誰も止めなかったんだろうか?
laguさん、こんにちは。
『LPのジャケットを手に取ったときのわくわくするような感覚は失われた』
まったくその通りですね。30cmという微妙な大きさの枠の中に「アート」があったと思います。ということで、「BRAIN SALAD SURGERY」つながりでトラックバックさせていただきます。m(__)m
by masa63 (2005-08-19 16:03)
tanamasa63さん、こんにちは。まだブログを始めて日も浅く、右も左もわからない初心者ですが、どうぞよろしくです。
by lagu (2005-08-20 10:28)