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On Dark Silent Off / Radian [Post Punk / Post Rock]

久しぶりに心がざわざわする音に出会ってしまった。
 
 
On Dark Silent Off / Radian

On Dark Silent Off.jpg

このRadianなる名前のバンド(プロジェクト?)、メンバーはドラム、ギター、ベースの三人で構成されている。メンバーの殆ど(全員?)が、鍵盤楽器等も兼任しているようだ。

若干のエレクトロ二カ風味を帯びた過剰に思慮深い音は、一般にはPost Rock、もしくはMath Rockに分類されてしまうだろうし、それはある意味仕方ないのかもしれない。が、この連中は現在Post RockやMath Rockに分類されている多くのバンドとはアプローチの仕方、というか、アティテュードとでも言い換えることが可能なものが違う。

とりあえず、YouTube上にアルバムの冒頭を飾る曲のOfficialな音源がUpされているのでこれを聴いてほしい。

 


 
この曲に限らず、全編を通し、演奏はとにかくフラットで醒めた印象。作品を横溢するのはヒリヒリとした緊張感。どの曲も似たり寄ったりで曲がどこで終わって始まったのか注意して聞いてないとわからない。歌としての人の声は一切聞かれない。ギターはメインフレーズらしきものを弾く場面があるが、それもソロというには程遠く、途中からノイズに変わる。最終曲のみ、部分的に音圧を上げて効果を狙っている局面があるが、それも爆発的、というほどでは無い。一聴するとフリーフォームな演奏に聞こえるアンサンブルも、楽曲構成はしっかりしており、アレンジはノイズをも含め綿密に作りこまれているはずだ。が、不安感を煽る音響の頻出や、何を中心に聞いていいのかいいのか解らない、即ち、音楽を聞くときに、何かを心のよりどころにして(その『心のよりどころ』とは往々にして歌だったりギターのリフだったりするわけなのだが)いる善良なリスナーにとっての安心材料が提示されていないことによって、多くの者は「気色悪い」と、拒否反応を示すだろうし、まぁ、それが一般的な捉え方だと思う。

こう文章にすると音響を偏重した時代錯誤な実験音楽、と思われるかもしれない。そう、その見方は正しいのだと思う。しかし、あることに気がつくと(それとて万人ではないが)この作品の評価は全く変わる。


音の印象がThis Heatによく似ているのである。

 
残念ながら、This Heatのような瞬発力や表情の豊かさは感じられないが、あの哲学的な音の佇まいがとにかく似ているのである。このことに気がつくと、48分に渡る陰惨な音響地獄に集中することが出来る。当然、聴き終わると疲労を覚えるが「え?もう終わっちゃったの?」と思わされてしまう。しかし、ここでリピート再生でもしようものなら、いずれ身体のどこかに変調をきたす恐れがあるので要注意だ(笑)。

このバンド、どのようなバックボーンがあり、どのような捉えわれかたを想定して作品創りをしているのか俺の情報収集能力では全くわからない。商業音楽としてはあまりにも陰惨な音響でコマーシャリズムには乗りようも無いし、ノリで聴ける局面は皆無だ。本人たちも「いい曲をいい演奏で提供したい」という意識は皆無だと思う。

ただ、This Heatがやり残した音響実験を彼らが現代的解釈で再検証している、と考えたらどうだろう?そう考えるとこの作品の個人的価値は一気に上がる。

Official Videoを試聴して「もっと聴きたい!」と感じた者に限って、強力に、強力に推奨する。

Radianはオーストリアのバンドのようだ。俺はオーストリアのバンドは初めて聴いた(と、思う)。もしかして、オーストリアにはこのような異形の音楽を許容、評価する豊かな土壌があり、彼らのような冒険家達が活躍しているシーンが活況を呈しているのだろうか?


埋没してみてぇ・・・
 
 
 
 
 
 
 
 

on dark silent off

on dark silent off

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Headz
  • 発売日: 2016/11/11
  • メディア: CD


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Kveikur / Sigur Rós [Post Punk / Post Rock]

さて、1年という比較的短いタームでリリースされたSigur Rósの新作を本日入手。とは言っても、前作、Valtariがリリースされていたのを知ったのは発表後半年も経過してからだったので、俺的にはずいぶん短いタームに感じられるのだが。


前作では従来の耽美路線に回帰し、以前からのファンを一安心させてくれたが、音像が曖昧で、かつ冗長な曲が多く、「すべておまかせします」って気持ちで聴かないと途中で放棄したくなる危険性を孕んでいたことは否定出来ない。まぁ、それでも充分に魅力的な作品ではあったのだが、今作はどうなんだろう?また中途半端にアンビエントもどきの事をやってお茶を濁すつもりじゃないだろうな?でも、あそこまでやっちゃったらそれしか進むべき道はないんじゃないだろうか?と、今から聴くに際して、若干の猜疑心を払拭できないのだが・・・今回も聴きながらリアルタイムで第一印象を書きなぐってみようと思う。
 

Kveikur / Sigur Rós

sigur ros k.jpg

では、行きます。

1曲目。お〜、やたら破壊的なノイズの中から力強いビートを伴った潔い演奏。ボーカルもしっかり歌っている。深くエコーのかかったギターの音が戻ってきている。これ、すごくまともな曲だ。名盤、Ágætis byrjunに収録されていても不思議じゃない。中盤、すっと音圧がなくなってからの展開もいい。それにしてもベースがすごく主張しているなぁ。8分弱の曲中、最後の2分はノイジーな音を交えた曖昧なアンビエント風味になっているのは残念。

2曲目。導入部から金物のパーカッションが印象的。この曲もボーカルがまともに歌っている。あ、転調した。おー、早くも盛り上げにかかった。クサいメロディーだが、これぞSigur Rósの真骨頂だな。最後はホーンのみで1分押し通した・・・

3曲目。生々しいドラム、全音符のベース、音に煌めきを与えるグロッケンと単音引きのギター。ボーカルもしっかりしている。普通にかっこいいぞ、この曲。若干一本調子な印象はあるが、これはありだ。残り1分で曲はリフレインに入った。最後40秒で音圧が落ち、メインテーマで終了。

4曲目。ベースのボリュームペダルを多用した演奏。ドラムはキックのみ。ところどころ逆回転のような効果音も使っている。これは有効に作用している。あ、リズムが生まれた。うおー、鳥肌が立ってきた。残り30秒、やっぱり落ち着いた感じになっちゃうのね。まぁ、しょうがないか、と思っていたらボーカルの逆回転ノイズ。

5曲目。ささやかな発信音のような音のなかからギターの単音弾き。いきなり高らかに歌い上げはじまった。散発的なパーカッションのプレイが突如まとまりを持ったリズムを叩き出した。かと思うと、唐突にプレイを中断。そして再開。う〜ん、意表をついた効果的なアレンジだなぁ。ちょっとハウスっぽさも感じさせる。この曲もグロッケンの音の煌めきが要所で絶大な効果を上げている。あ、一瞬だけだがバイオリンが演奏に参入。そのまま繰り返しで終わりか。

6曲目。不穏で破壊的なノイズを切り裂くかのようにボーカルが力強く歌い始める。あ、ドラムが参入。あー、カッコいい。鳥肌立ちっぱなし。Sigur Rósにしてはテンポが早めだな。あ、ギターのハウリングをリズミカルに切ってうまく演奏に取り入れている。これはいいアイデアだ。2分を残してリフレインに突入。このまま力技で押し切るのか?いや、やっぱり残り1分くらいで展開した。なんだ?このノイズ?おそらく主にベースで出しているものだと思うが、妙に金属的。怪獣の咆哮のような印象。

7曲目。前曲の陰惨な終わり方とは対照的に清冽な印象のストリングス系の音。ファルセットでひとしきり歌うと、リズムが参入。あ、また鳥肌立った。おお、ギターの破壊的な音響。ソロ未満ではあるが、実に効果的。残り2分でいったんリズムが引き、ピアノとグロッケン、ボーカルのみに。さぁ、ここから一気に突き抜けるつもりだな。案の定、リズムが生まれ、徐々に音圧を増してきた。ここでも鳥肌。このまま終わるかと思いきや、ボーカルも参入。いい雰囲気だ。ボーカルの1フレーズのみをのこし、あっけなく曲は終わる。

8曲目。ギターの単音とボーカル。ほどなく破壊的な音響のベースが散発的で効果音のようなプレイを聴かせる。控えめなドラムのプレイがしばらく続くが、程なく全楽器が一気に音量を上げ、大団円に突き進む。おお、凄い爆発力。また鳥肌。あ、やはり最後の1分半はクールダウンして終わる訳ね。この方法論は曲げられないんだろうな。

さぁ。最後の曲。俺の予想では、これまでとは一転、静謐な印象に徹するのではと思うが・・・あ、やはりピアノでゆったりと始まった。周囲を取り囲む密やかなコーラスとストリングス系の音。遠くで鳴っているようなノイジーなギター。ピアノの音はオルガンに引き継がれて、音はどんどんと細くなり・・・終了!


以上!


正直な感想。これ、凄いわ。俺の予想と全くちがっていた。Valtariの中途半端なアンビエント風の曖昧路線は潔く断ち切っている。かといって、Med Sud I Eyrum Vid Spilum Endalaustの時のような嘘くさいハッピーさも無い。あえていうなら、Ágætis byrjunを生々しく、力強くした感じ、とでも形容すれば解りやすいだろうか?

勿論、彼らお得意の曖昧な音響も様々な局面で聴かれるし、ボーカルにも相当エフェクトをかけている。空間的奥行き、及び広がりを感じさせる音響処理へのこだわりや、耽美でおセンチな作風は変わっていないが、ここに力強さが加わり、バンドらしさが全面に出ている。Sigur Rósらしさをちゃんと残しながらも「バンドとして」一皮剥けた感じ。

最後の曲はエピローグと解釈し、置いておくとして、本編に全く捨て曲が無いのも凄い。アレンジもよく練られている。似たような曲調の曲もあるが、全く飽きる事がない。少なくとも、一度たりとも「次の曲に飛ばしたい」とは思わなかった。若干エンディングの処理が冗長に感じる曲が散見されるものの、これは彼らの作風と考えれば納得が行く。酩酊感や浮遊感が後退しているのは残念だが、何よりも、それらを補って余りある説得力のある楽曲、及びそれらを際立たせるアレンジ。これはとても魅力的だ。俺は少なくとも5回は鳥肌を立てた。


結論。これは力作。強く、強く推奨する。必ず、一定の満足感を与えてくれる筈だ。
 

 
Kveikur

Kveikur

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Xl Recordings
  • 発売日: 2013/06/25
  • メディア: CD



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Perils from the Sea / Mark Kozelek & Jimmy LaValle [Post Punk / Post Rock]

The Album Leafの主宰者、Jimmy Lavalleと、Sun Kil Moonの主宰者、Mark Kozelekが共同名義で作品を発表した。

The Album Leafと言えば、いわゆるPost Rockの重要バンド、という評価が一般的なようだが、俺にとってPost Rockという言葉は、既存のロックを咀嚼した上で規定の枠にはまらない音を出しているバンドに適用される、と思っており、それは例えばかつてのMogwaiやTortoiseのようなバンドであり、反感を買う事を事を承知の上で言わせてもらえれば、俺にとってのThe Album Leafは、ロック風味を残した耳に心地よい毒の無い軽音楽という印象であり、あえてジャンル分けするなら、New Age Musicという整理になってしまっている。

「音楽にジャンル分け等無意味」、とか「New Age Musicを軽視している」などという揶揄も聞こえてきそうだし、そう思ってもらってもいたしかたないのだが、俺は、ジャンルとしてのNew Ageを卑下するするつもりは全くないのだ。事実、現代音楽の巨匠にして、Brian Enoとの共作、Ambient 2:The Plateaux Of Mirror、そして続編とも言えるThe Pearlを製作したHarold Buddの一部作品も、俺の中ではAmbientというジャンルには定位出来ず、iTunes上でもNew Age、もしくはContemporaryというジャンルにおいてある。勿論、ミュージック・サーバーとしてのコンピュータ上のジャンル分けなど、自分が聴きたいタイプの音楽を直感的に捜す為の指標でしかない。ま、そうやって『俺の聴き方』でジャンルを細分化していった結果、俺のiTunes上の音楽ジャンルは100近い、膨大な数に及んでしまったのだが。

まぁ、それはおいといて。

幾分、ロック風味を残し、エレクトロ二カながらもオーガニックなサウンド(最近流行の、音楽における『オーガニック』という言葉の使い方については一言申し上げたいこともあるが、話は長くなるので今回はパス)を貫いて来たThe Album Leafの主宰者、Jimmy Lavalleと、Slow Coreの重鎮にして、このところアコースティック楽器と悪魔的な魅力のある独特な声で退廃的な独自の世界を築き上げ、電子音楽とは全く無縁な所にいると思われる孤高のボーカリスト、Mark Kozerekの接点がありそうで無さそうなこのコラボレーション作品。事前にこの異色とも言える二人の共同名義で作品が発売されることを知り、色々と妄想を膨らませようとしながらも全く予想が出来ず、発売当日に購入、がっかりを覚悟しながら興味津々で聴いたのだが。

Perils from the Sea / Mark Kozelek & Jimmy LaValle

mark.jpg


予想に反し(失礼)、悪くないんじゃない?これ。

俺の聴く限り、演奏面においてはJimmy Lavalleが主導権を握っているようだ。いわゆる音響派が好きな人にとっては、音数の少ないThe Album Leafという聴き方も可能かもしれない。

一方、ボーカルに関しては完全にMark Kozelekの独壇場。ま、これは当然と言えば当然なのだが、一部、完全に機械的なタイムの取り方のアレンジにMark Kozerekiが戸惑いを見せている曲、ボーカリストの力量として音程的にギリギリな曲もあり、作品創りにおいて密接な連携があったのかどうか、若干疑わしい局面も散見される。

が、逆に、教会音楽風の曲においてはJimmy Lavalleがリアルタイムで演奏していると思われるオルガンが充分なレベルに達していない。端的に言えば、フレージングが安定していない。この事から、作品創りの過程において、単なるデータのやりとりではなく、一定のインタラクティブな共同作業があったことは間違いない、と思われる。

作品を横断的に聴けば、楽曲、音響的にはシンプルでありながら、退廃的なボーカルを前面にたてて、お互いが良いところを犠牲にせず、程よく自己を主張しながらもいい具合に相乗効果が生まれ、共鳴し合った佳作、と言っていいだろう。

これはある意味、画期的、かつ、魅力的だ。非情なまでの荒涼感を漂わせていたMark Kozelekのボーカルが、エレクトロニカ風味でありながら暖かみを漂わせるバッキングに歩み寄る事によって新たな魅力を獲得しており、一方、Jimmy Lavalleも、音響技術に頼らないアコースティックな響きの魅力を再認識している雰囲気が聴いて取れる。

Mark Kozelek、もしくはJimmy Lavalleのファンは迷うことは無い。必聴。


ちなみにこの作品、日本盤では、Sun Kil Moon & The Album Leafという名義で発売され、ジャケットの文字情報も替えられているようだ。まぁ、実質的にSun Kil MoonはMark Kozelek、そしてAlbum LeafはJimmy Lavalleのプロジェクトであることは間違いないし、当然、当事者の了解は取ったものだと理解しいているが、売り手の都合のいいように名義を変更しようとする姿勢はいかがなものか、と思う。



Perils from the Sea

Perils from the Sea

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Caldo Verde
  • 発売日: 2013/04/30
  • メディア: CD






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Les Revenants Soundtrack / MOGWAI [Post Punk / Post Rock]

MOGWAIの最新作を聴いてみた。

このバンドは本当に聴き手に迎合する姿勢を見せない。それは巷に氾濫する消費サイクルの短い一過性の音楽を嗜好するリスナーにとってのみではない。MOGWAIを積極的に理解しようと努める善良なリスナーにさえ迎合しないのだ。おまけに知名度の割にメディアへの露出も極端に少ない。故に何を考えてこういう結果に至ったのか、作品のみを突きつけられるファンは作風が変わる度に困惑させられる。追い討ちをかけるように歌詞を伴う曲が極端に少ないので、言葉から心情の変化を推測することもほぼ不可能なのだ。

まぁ、ゴタクはおいといて、肝心の新作。


Les Revenants Soundtrack / MOGWAI

les mogwai.jpg


まいったな、これ。

この作品、Les Revenantsという、フランスのTVドラマの為の音楽らしい。

楽曲は短い主題の繰り返しが多く、アンサンブルは単調な印象を受ける。若干の盛り上がりのある曲もあるが、音量が多少上がる程度で概ねフラットな雰囲気。ま、これはドラマの中で使用されることを目的に演奏されているわけであり、さらにドラマ中では曲を最初から最後まで使うわけではないだろうし、あまりに曲が存在感を主張してしまっては(音が芝居を凌駕してしまっては)本末転倒なことになりかねないので、ある意味、当然な選択である。

MOGWAIらしい電子楽器を多用しながらも生々しい響きの特徴的な音響設計、丁寧で実直な演奏は相変わらず魅力的だ。しかし、残念なことにMOGWAIのファンなら誰もが期待するであろう、轟音ギターが皆無なのだ。いや、耳をそばだてればノイジーな音が全くないわけではないのだが、「ドラマのサントラ」という商品特性を忘れて「MOGWAIの新作」として聴くと、彼らの大きな魅力である「音圧」が感じられない事に不満が残る。
当然、全ての曲がインストゥルメンタル、と思っていると、最後から2曲目で非常に陳腐な楽曲、演奏に乗せてやたらとヘタレで「おセンチ」な歌が披露される。なんなんだよこれは。

と、ここで気がついた。多分、Les Revenantsというドラマ自体に「おセンチ」な演出がなされているのだろう。まぁ、それならこの作品の煮え切らなさに納得がいかないでもない。

以前、MOGWAIはサッカー選手、ジダンの記録映画のサウンドトラックを担当したことがあったが、あちらの方がまだ「MOGWAIらしさ」とでも言うべきものが感じられたような記憶がある。それに比べ、今回はあまりにもセンチメンタリズムが表に出て来ている。勿論、彼らのセンチメンタルな表現にはそれなりの魅力もあるのだが・・・冒頭で「MOGWAIは聴き手に迎合しない」と、したためたが、お仕事に徹した結果、やっぱりそうなっちゃったわけね。

いや、ちょっと待て。「映像、台詞とのコラボレート」、即ち総合芸術作品を製作する為に最適な選択肢を採択した結果がこれだった、という可能性はないだろうか?


違うか。違うな。


う〜ん、俺、この作品を俺の中のどこにどう定位させたらいいのかわかんねぇや。


はっきり言える事。これが「ドラマの内容を充分に音に反映させたサントラ」では無く、「現時点でのMOGWAIの渾身の作品」であったとしたら、バンドは創造力の欠如に陥っている。勿論、そんな筈は無いと信じているが。

ただ、一応、MOGWAIのファンは自分の耳で聴いて、検証を行っておいた方がいい。俺自身も、「TVドラマの為の音楽」という事前情報を得た上で覚悟を決めて聴き、予想が外れていなかったことを確認、納得した。

ま、結局、彼らの「お仕事の一つ」として割り切って気軽に聴けばいいんじゃない?(投げやり)彼らが完成度が高い素晴らしい作品を創り続けて来ているがゆえに、どうしても評価が厳しくなってしまいがちなのは勘弁して欲しい。


勿論、私は次回作には期待します。はい。



Les Revenants Soundtrack

Les Revenants Soundtrack

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Rock Actio
  • 発売日: 2013/02/26
  • メディア: CD



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Valtari / Sigur Rós [Post Punk / Post Rock]

Sigur Rósは俺が注目している数少ないバンドの一つである。個人的には、2ndアルバム、Ágætis Byrjunが最も気に入っており、ロック史上に残る名盤であるとさえ思っている。あの深い森の奥から聴こえてくるような音世界には神々しささえ感じていた。

ところが、直前のスタジオ作品、Med Sud I Eyrum Vid Spilum Endalaustではどういう意識改革があったのか、やたらと生々しい音でフォーキーな雰囲気に一変してしまっていた。それまでの彼らの最大の魅力である混沌の美とでもいえるような「整合性のあるサイケ感」が薄れており、正直、がっかりした。その後、どこからか解散の噂が俺の耳に届き、また、ボーカリストがソロ活動を始めたこともあり、「やはり、前作の路線変更は失敗だったのだな」と納得した。

ここで一旦、俺のSigur Rósファン歴は終わる。


あれから4年。アマゾンからのダイレクトメールを見てびっくりした。てっきり解散していたものだと思っていたSigur Rósが新譜を発表していたのだ。これは自分の耳で検証してみなくてはなるまい、と、購入。
 

Valtari / Sigur Rós

sigur ros vartali.jpg


前作のフォーキーな雰囲気は全く引きずっていない。やはり、本人達もアプローチに失敗した、と思っているのだろう。個人的には1曲目から3曲目がツボ。特に3曲目のVarúð終盤、規則的なリズムが刻み始められてからの抑制された盛り上がりは圧倒的だ。
この時点では、「これは名盤、Ágætis Byrjunを越えるか?」と思ったのだが・・・
まぁ、せっかくだからアルバムを聴きつつ、順を追って曲の印象をしたためてみよう。



アルバムは聖歌風のスキャットで幕をあける。しばらくの後、ギター、ベースが演奏に参入、ボーカルに導かれるようにドラムもビートをたたき出すが、1分程度でバンドらしいアンサンブルは終わり、聴くものを不安に陥れる曖昧な効果音が1分程度続く。

2曲目。オルガンの演奏を逆回転のような処理を施した全音符によるルートの進行の上に古いレコードをかけているかのような意図的なノイズ。この曖昧な音響の上にボーカルが乗り、僅かの空白の後、ピアノが演奏に参入、彼ららしい音世界が広がるが、収束部分において冒頭部分と同様の演奏をピアノに変えて単独で1分以上も繰り返されるのに付き合うのにはちょっとした我慢が必要。ドラムの音は聴かれない。

3曲目。比較的簡略なイントロが終わると豊かなメロディーがストリングスとピアノのサポートを得てボーカルにより提示される。裏声と地声の使い分けも効果的。中盤、音圧が下がり、そのままフェード・アウトするかと思うも一転、ドラムの単調ながらも意思を感じさせる力強い音に支えられ、様々な楽器が単調なフレーズを繰り返しながらもどんどんと音圧を上げて行き、どこまでも高く上昇する。圧倒的な開放感。ここでアルバムは早くもクライマックスを迎えてしうまう。

4曲目は3曲目と曲構造が似ており、単独で聴けばそれなりの満足感は得られそうではあるが、前の曲の開放感が残ってしまっている状態では存在感が希薄で、曲配列を間違った、と感じざるを得ない。

5曲目。重層化されたボーカルのスキャットに導かれ、ストリングスを中心とした曖昧模糊とした演奏の上に(どういう楽器を使っているんだろう?ただのギターのボリューム奏法か?)ボーカルが乗る。曲の終盤において、再び冒頭で聴かれる重層化されたボーカルが登場、静謐な印象で曲を締めくくる。打楽器はおろか、ベースの出番もなし。

シームレスに繋がって行く6曲目においては主にアルペジオを奏でるピアノ、全音符のみによって演奏されるギター(多分)、これまた全音符のベース。ストリングスも全音符。これに効果音的に細いボーカルが乗る。曲自体に大きな展開や転調は無く、淡々と奏されている。

アルバムの表題曲でもある7曲目。若干パーカッシブな効果音の上にまたまた曖昧模糊な(笑)演奏が乗る。短いテーマの繰り返しの中で各楽器は演奏への参入、離脱を行い、最終的に曲は細い、それこそ細い音で収束する。

いよいよ最終曲。冒頭部分、耳をそばだてないと認識出来ない、ノイズ未満のひそやかな音が20秒程続き、突然ピアノが単独で演奏に参画。リズムの曖昧な散発的なフレージング。どうやら何回かにわけて録音されているようだ。これだけで4分を強行突破する(笑)。後半3分半程はまたまたアタック音の一切無い曖昧な演奏。ボーカルは聴かれない。いや、耳をそばだててみれば、それらしい音もあるのだが、本当にボーカルかどうかわからない。この曲も短いパターンの繰り返し。収束部分において様々な楽器が徐々に演奏から離脱し、それこそ細いストリングス系の音でアルバムは曖昧に幕を閉じる。打楽器の音は一切聴かれない。


以上。いったい、何回「曖昧」って言葉を使ったかな?(笑)


全体を通してみると、圧倒的にドラマーの出番が少ない。一曲通して参加している曲すらない。バンドらしいアンサンブルのある曲はほとんど無い。いや、皆無ではないのだが、いかんせん、曖昧な音響が支配的な「前振り」と「後始末」部分がくどいまでに長過ぎる。アルバム後半になるとボーカルの存在さえも希薄になる。まぁ、もともとこのバンドは造語を使用していることからも判るように、ボーカルも楽器の一部ととらえ、言葉によるメッセージを排除しているのであるからして不思議ではないが。


思うにこの作品、作曲にかけた時間が圧倒的に少ない、と思われる。それよりも音の響きの美しさを目指した作品だと思うし、その結果は充分に出ており、制作側が目指したと思われる、「静謐で程々にアンビエント」な印象は受け取り側に正しく伝わっていると思う。
しかし、決して奇矯な音響に依存したアンビエント・テクノではない。もちろん電子音は皆無という訳ではないが、生っぽい響きの音がアルバムを横溢している。単調なコード進行の曲が目立つが、アンサンブル、もしくはミックス・ダウンの技で盛り上がりを演出している。この点については「ずるい」と、思いつつも、出ている結果は実に見事。

ただ、一方で、物足りなさを覚えるのも事実。何というか、「美味しいがみんな同じやさしい味付けのフル・コースでお腹いっぱい」な感じになってしまうのは残念。ま、それはアルバムのカラーが統一されている、とも言えない事は無いのだが、どこかにスパイス的要素のある曲が欲しかった。

多分、彼らはバンドらしい「毒」のある音を目指すことはやめ、非エレクトロニカな印象のアンビエントな作風で耽美を目指したのだと思う。少なくとも、この作品はRockの文脈で解釈は出来ない。簡単に言えば、この作品を聴いてギタリストを目指す者はいないだろう。

勿論、決して悪い作品ではない。俺の評価はÁgætis Byrjunを最高傑作として、2番目に位置する、といってもいい。この作品自体に失望はしていないし、むしろ好きな音だ。が、ここまで曖昧な音世界に没頭してしまうと、次回作が出せるのかどうか人ごとながら心配になってしまう。もし、出したとしても本作品の2番煎じ的な内容になるのではないだろうか?

次回作が楽しみだが・・・う〜ん・・・どうなるんだろ?




Valtari

Valtari

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMI
  • 発売日: 2012/05/28
  • メディア: CD



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