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反復の魔力、INNVENTIONS FOR ELECTRIC GUITAR / MANUEL GOTTSCHING [Progressive]

最近はデジタル技術が発達し、楽器の素人でも音楽(みたいな音)が簡単に作れるようになった。ちょっとした音楽作成ソフトを使い、サンプリングした音源を上手く並べればなんとなく体裁が整う。作曲能力がなくても全く楽器の演奏が出来なくてもPC と「素材」さえあればみんなにわかクリエイターだ。世間にはそういう使い方をする為の素材集まで存在する。
長尺の曲をレコーディングするには長い時間演奏しなければならない、これは昔は当然のことだった。「範囲選択、はいコピー、これをこっちにペーストして、あとは何回繰り返そうかな?」なんてお気楽な作業では作品は出来なかったのだ。
「このフレーズを64回演奏したから今度はこのフレーズだな・・・確かこのフレーズは128回だったけど・・・あれ?わかんなくなっちゃった・・・今何回目なんだ?んが~っ!最初からやり直しだあっ。誰かタイムキープしてくれぇっ!・・・あ、間違った・・・もうだめだ。指先がボロボロだよ・・・俺はパンチインするぞ」などという修羅場がこの作品の録音現場では展開されたのではあるまいか。

INNVENTIONS FOR ELECTRIC GUITAR / MANUEL GOTTSCHING

ashara invantion foe e guitar.jpg


ASH RA TEMPELの6作目という位置づけになっているが、実際にはギタリスト、Manuel Gottschingのソロ作品といって間違いない。当時、現代音楽の分野で注目を浴びていたミニマリズムをエレクトリックギターで実践したのがこの作品、と言っていいのだろう。
この作品はギターの多重録音(一部キーボードも使用)によって製作されている。主題を伴わない単調なフレーズにちょっとしたバリエーションを加えながら何度も何度も繰り返し、これを異なったフレーズや音色で重層化する。別々に聴くとどうってことないフレーズも複数が折り重なることによって不思議と心地よい音に変わる。似たような音像が延々と続き、新しいフレーズの参入や既存フレーズの展開によって微妙に表情を変えていく様は、ある意味「人力テクノ」と言えなくも無い。
多分、どのような手法でレコーデイングするかは決まっていたが、最終的にどのような音になるのかはManuel Gottsching本人すら判っていなかったのではあるまいか?そういう意味においては実験的作品と言える。実に禁欲的に音を積み上げていっている、と言いたいところだが、途中で我慢しきれなくなって普通の快楽的ギターソロを弾いてしまうのは正直言っていただけない。
74年作品。発表当時は画期的だったんだろうが、残念ながら聴いたのは発表されて20年以上経ってからで、既にSteve Reich、Terry Riley、Philip Glass、(べたべただな・・・)や、Robert Frippのソロ作品群などを散々聴いた後だったので取り立てて大きな感動はなかった。しかしその分、大きな思い入れも無く日常的な生活音楽として気持ちよく聴ける。今日も3回ほどリピートした。

ところで、Manuel Gottschingのこの頃の実験的作品の数々は、現在でもトランス/テクノ系のクリエイターからリスペクトされているらしい。しかし、コード転換もほとんど無くリズム楽器も不在で、かつ、かなりの長時間似た様な音像が続く為、素材として使いやすいことがリスペクトされる理由の大半を占めているのではないか、という疑念を払拭出来ずにいる。


インヴェンションズ・フォー・エレクトリック・ギター

インヴェンションズ・フォー・エレクトリック・ギター

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: キングレコード
  • 発売日: 2000/03/03
  • メディア: CD

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