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Einfluss / Hans-Joachim Roedelius & Arnold Kasar [Ambient/New Age/Experimental]

この作品を紹介できることに喜びを感じている。


この作品はHans-Joachim RoedeliusとArnold Kasarの共同名義で発表されている。が、残念ながら俺はArnold Kasarなる人物のことはよく知らない、というより、この作品で初めて知った。他方、Hans-Joachim Roedeliusといえば、クラウト・ロックの有名バンド・・・う〜ん、この表現は軽すぎるな。あえて言うなら、ドイツのロック黎明期、1960年代後半に実験的な電子音楽を実践し、後にBrian Enoにも多大なる影響を与えた前衛音楽集団、Clusterの中心メンバーである。1977年にはBrian Enoと共同名義で2作品を発表している。つまり、Enoが一連のアンビエント作品を手がける直前に、である。

 
Einfluss / Hans-Joachim Roedelius & Arnold Kasar

Einfluss.jpg


この作品、ピアノと電子楽器(おそらくシンセサイザー)そして様々なエフェクト、効果音で構成されている。

オフィシャルビデオを観た限りでは、ピアノの弦を直接弾くなどの特殊奏法も行なっており、アルバム中に何度か「ピアノから発せられていると思しきピアノらしからぬ音」が聴かれる。基本的にはピアノが骨格を形成している演奏に電子楽器により曲の補強が行われているが、耳をそばだてれば、明らかに電子音響ではない不可解な音やノイズも聴いて取れる。数曲収録されているArnold Kasarのみがクレジットされている曲はピアノのみで演奏されているところから察するに、おそらくこれらの不可解な音やノイズはRoedeliusの手によるものだと推測される。と、言うより、彼が実験音楽集団、Clusterの重要人物であることを鑑みれば当然、と思ったのだが、オフィシャルビデオに登場するPCを操作する手、及びピアノの弦を直接弾く手はArnold Kasarのように見える。う〜ん、どう切り分けたのだろう?
 
 

 
 

基本的に楽曲の主導権を握るピアノは外連味なく演奏されている、と言いたいところだが、Arnold Kasarのみがクレジットされている曲において若干の感情の昂りを感じさせる局面が聴いて取れる。おそらく鍵盤奏者としての表現欲を抑えきれなかったのであろう。が、それらは絶妙にコントロールされており、この作品を横溢する「静謐」な印象を覆すほどのものではない。

クラシック音楽の名門レーベル、ドイツ・グラモフォン(!)からリリースされていることからも容易に察知可能であるが、いわゆるポスト・クラシカル、またはネオ・クラシカルに分類されるべきなのであろうが、アンビエント音楽として聴いても実に有用。事実として、この作品に出会ってからというものの、我が家ではAMBIENT 2 : The Plateaux of Mirrorの出番が無くなってしまった(笑)。勿論、The Plateaux of Mirrorがアンビエント音楽の金字塔にしてピアノ主導型アンビエント作品の頂点であるという俺的絶対評価は変わらないのだが、The Plateaux of Mirrorはそれこそ耳にタコが出来るほど聴いたので、似たような雰囲気ながらもかすかな毒気と茶目っ気を感じられるこの作品についつい手が伸びてしまうのだ。おそらく制作途中でRoedelius本人も「なんだかThe Plateaux of Mirrorに似てきちゃったなぁ」と、感じていたのではあるまいか。
 
 
内容の素晴らしさは勿論のこと、その来歴からもBudd / Enoの流れを組む正統派のアンビエント作品として評価されるに十分であることは間違いない。あまりにも遅れてやって来た非テクノ型アンビエント作品の傑作。ちなみに収録時間も1時間17分とたっぷり。久しぶりに責任推奨。

この作品の発表は2017年、Roedeliusは現在84歳と高齢なようだ。旺盛な創作意欲、そして音楽による実験を追求し続ける様には驚きを禁じ得ない。少しでも興味があるなら迷う必要はない。出来るだけ早く聴くべきだ。



Einfluss

Einfluss

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Deutsche Grammophon
  • 発売日: 2017/06/23
  • メディア: CD




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Dark Sky Island / enya [Ambient/New Age/Experimental]

世の中にクリスマスムードが漂うこの時期にあわせたかのように、いや、絶対にあわせて、Enyaの新しいアルバムが発表された。


Dark Sky Island / enya

enya  dark sky island.jpg

もともとEnyaは寡作であるが、前回の作品から7年という、今までに無い長い歳月が経過している。しかしながら、この時間がEnyaの音楽性にどういう変化をもたらしたか、などと気にする者はいないだろう。デビュー当時からの共同制作者、Roma Ryan、Nicky Ryanとのコンビネーションは鉄壁、案の定、一聴してEnyaと解る、あの清冽な音世界が展開されている。前作と比べて何かが大きく変わったなんてことは無い。

もしかしたら、「それなら過去作品を聴いていても同じじゃないか」と思う者も居るやも知れないし、事実、そうなのかも知れない。

しかしながら、我々ファンの多くは、現在進行形で作品を発表している、Enyaの創作活動の検証者なのだ。Enyaと同時代を生きているファンは、今回の作品を聴いて、今までと同様に「ああ、これだよこれ」と安堵することだろう。完全に出来上がっているこのスタイルは、固有の音楽文化と言っても良い。

 
これは既に一つのジャンルを確立している、と言っても過言では無い、とさえ思う。

 
この珠玉の作品をあまり分析的に聴くのもどうか、と思うが、素晴らしい作品群のほとんどはデジタル機材の恩恵を被っていることは間違いない。しかしながら、注意深く聴いてみれば、コンピュータ制御の自動演奏はほとんど使用せず、彼女一人の手による、気が遠くなるような回数のアナログな鍵盤演奏によって成立していると思われる。これはヘッドフォンで注意深く聴いてみると解るのだが、微妙な発音タイミングのずれや、同じ音色の比較的簡易なフレーズが左右に振り分けられていたりすることからも推測できる。勿論、重層化されたコーラスワークにおいては何をか言わんやである。このあたりのアナログさ加減が、一つ間違うと機械的に響く危険性をはらむ比類無き透明感のある音色に、ふっと手をかざしたくなるかすかなぬくもりをたたえている所以だと思う。いずれにせよ、総じて、ひとかけらの悪意もなく製作された楽曲の数々には安心して身を任せられる。
 
さて、次の作品は何年後になるのだろう?たとえそれが5年先であろうと、10年先であろうと、Enyaがリアルタイムで発信する音楽作品は今後も間違いなく購入することを俺は確信している。そして、アプローチが変わっていないことを確認し、安心することだろう。Enyaに、そして彼女のリスナーにとって必要なのは時代に迎合した曲創りではない。これから先も、Enyaという文化は大きく形を変える事なく「Enyaらしさ」を貫いてくれることだろう。

勿論、今までEnyaのファンであった諸氏は購入をためらう必要は無い。必ず、一定の満足感を得られるはずだ。責任推奨。
 
 

ダーク・スカイ・アイランド (デラックス盤)

ダーク・スカイ・アイランド (デラックス盤)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2015/11/20
  • メディア: CD



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Live In Paris 28.05.1975 / Fripp & Eno [Ambient/New Age/Experimental]

あまり気乗りがしないんだけど、やっぱ、このブログの性質上、この作品のことも取り上げないといけないよなぁ…FrippやEnoのファンから反感を買うのは目に見えているのだが。

これもまたRobert Frippの過去音源整理活動の中から出て来た作品だろう。以前からDGMのオフィシャルサイトでダウンロード購入出来たようだが、作品として手元に持っていたいと思い、先月末の発売日当日に購入、じっくり聞いたが、あることに気がつき、唖然としてしまった。


Live In Paris 28.05.1975 / Fripp & Eno

fripp eno line in paris.jpg

このアルバムの概要だが、Fripp & Enoが1975年5月28日、パリで演奏したコンサートの模様を収録した2枚に、実際にコンサートで使われたループ素材のいくつかとプラスαを1枚に収録した豪華3枚組である。とはいいつつ、実際のコンサートを完全収録したものではなく、最後の曲、それもAn Index Of Metalが途中でカットアウトされている。おそらく、いや、絶対に記録媒体の残量が無くなってしまったが故の事故だと思うが。全く、なんで事前にもっと準備しておかなかったのかね?

アルバムの一曲目は、おそらく開演前に流されていたもので、実際の演奏は行われていないと思う。観客が曲の展開(と言っても、展開らしきものはないが)とは無関係に盛り上がっていることから察するに、これらの拍手や歓声は二人が順次ステージに登場した時に発せられていたものだと思われる。
以降、フリッパートロニクスを多用した上で、Frippがソロを乗せて行く、といった手法でほぼ全編が構成されている。

ご存知の方も多いと思うが、フリッパートロニクスとはRobert Frippが考案した音響システムで、複数台のテープレコーダーを使用し、発音した音を一定周期で再生させ、その上にまた新たな音を重ね、といった具合にバッキングパートをリアルタイムで作って行く機材である。「なんだ、ルーパーの事か」と思われる方も多いであろうし、確かにその通りなのであるが、当時はルーパーなんぞなく、画期的なシステムだったのである。

さて、一方のEnoは…なにやってたんだろ?多分、テープの操作を主にやっていたと思われる。実際、ギターがほとんど登場しないノイズの様な曲において拍手が湧き起こっていることから、この部分においてはEnoにスポットがあてられ、何らかの音響機材を使用し、演奏的(?)行為が行われていたものと推察される。

残念ながら録音状態は良好とは言えない。まぁ、最後まで収録されていないことから察するに、将来的に作品化することを考えずに記録として録音しておいたものなんだろう。聴き所はやはりFrippの粘っこくも様々な表情を見せる雄弁なギター。後にEvening Starに収録される曲もほとんど収録されてる。が、当然のごとくFrippは半ば即興的に演奏を行っているので、同名の曲であってもフレージングは異なっている。まぁ、いずれにせよ、このコンサート時点で、半年後に発表される名盤、Evening Starの素材がほぼ出そろっていた、ということを考えればなかなか面白く聴ける。

さて、注目すべきはDISC3に納められているループ素材。これはコンサートの生演奏では再現出来ない部分を事前に録音し、PA(勿論、モニターも)から会場に流した上で、演奏を乗せて行く為の補助的、もしくは基礎となるものだ。

「え?生演奏じゃないの?そんなのインチキじゃん」と思う人もいるかとは思う。だが、実際のコンサートの現場では良く使われている手法である。端的に言ってしまえば、シーケンサーで作り込み、MIDIで同期させた音に合わせて演奏するのと本質的には変わらないし、ボーカルやソロパートなどのアピールポイントを除いた録音を事前に用意し、会場に流した上で、これに合わせて演奏する場合もある。もっと極端な例えをするなら、予め録音したものをPAから流し、実際のコンサートでは演奏しているふりを装っていたりする場合もある。あえて言うなら、多くの場合、録音に合わせて演奏はしていると思われるが、それらの音はPAから出ていない。

事情通の間では、1971年にGrand Funk Railroadが後楽園球場で嵐の中強行した、『伝説のコンサート』が嘲笑の対象となっている。実はあの時の演奏は、雷を伴う暴風雨の中、屋外ステージでの演奏であった為、感電事故を恐れ、PAから出ていた音は完全に事前録音されたものであったそうで、テープに録音された大爆音に合わせて電源の入っていないアンプに繋げたギターをかきむしるパフォーマンスに当時のロック野郎はずぶ濡れになりながら熱狂したことになる。


ちょっと話が脱線してしまった。起動修正。


まぁ、そんなわけだから、Fipp & Enoという最小限のユニットが人前で演奏を行う際、演奏の一部を事前に仕込んでおくのは当然、と思う。なにせ、Enoは自らをノンミュージシャンと公言しているわけであって、刻一刻と変化する現場の状況にあわせ、高度な演奏技術で適切に対応出来るなんて誰も期待していないだろう。Frippが演奏しやすいように、予めシンセサイザー等で作ったシーケンス音等を会場に流し、場合によっては現場でエフェクト処理を行ったりするものだと思っていたし、ある意味、EnoがFrippとの共同名義のコンサート用に用意した音源が単独で聞けるということは非常に興味深い、と歓迎していたのであるが。

なんと、その録音にはFrippが演奏するフリッパートロニクスの音まで収録されていたのである。前述の通り、フリッパートロニクスを使用すれば、現場でバッキングの環境を作りながらソロ演奏を行う事が可能なのに、Frippは自ら開発したシステムの利便性を放棄し、事前にテープに仕込んでおいた、ということになる。まぁ、現場で少なくない確率で起こりえる予測出来ない不慮の事故を想定してのことなのだろうが…


教授、それでいいんですか?自己矛盾を起こしていませんか?


このことを裏付けるように、CD3に収録されている8曲の内、4曲が実際のコンサートで使用された音源だが、そのどれもが実際のコンサートでの演奏時間より長い。そりゃそうだ。準備されたバッキングが終わってもソロ演奏を行っていれば、いきなり音が薄くなってしまう。録音が切れる前にうまく次の展開に持って行かなければどっちらけだ。そうなると、Enoがステージ上で行っていたのはタイムキーパーか?「おい、そろそろ録音が切れるぞ。次の展開に移れ」とでも、Frippにサインを出していたのだろうか…

それにしても自らネタバレするとは、Frippにはどんな思いがあったのだろう?もしかして懺悔か?いやいや、あのGreat Deciverが自ら懺悔なんてあり得ない。本当にどういうつもりなのか理解に苦しむ。わざわざループ音源の公開なんかしなくてもよかったのに…

誤解なき様に言っておくが、俺自身はFripp & Enoのファンである。で、あるが上に余計に残念。世の中には知らない方が幸せなこともあるのだよなぁ…



Live in Paris

Live in Paris

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Imports
  • 発売日: 2014/09/23
  • メディア: CD




Evening Star

Evening Star

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Dgm / Inner Knot
  • 発売日: 2008/10/21
  • メディア: CD



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Lux / Brian Eno [Ambient/New Age/Experimental]

以前もしたためた記憶があるが、Brian Enoという人の「製作」(演奏とは限らない)する音楽には一貫性が無い。他人とのコラボレーション作品が多い事も影響しているが、全作品を通底するEno独自のシグネイチャー・サウンドとでも言うべき物が無い。で、あるからして、Eno初心者が、特定の作品が琴線に触れたからと言って、既発の過去作品を聴いたりすると少なくない確率で混乱を起こす。また、作品を重ねるごとに進化しているかというと、そうでもない。ま、これは「何を持って進化と言えるのか」という出口の無い問題にぶち当たってしまうので、スタンスも軽くあちらこちらに移動しており、そのプロセスを見せない、と考えるとなんとなく納得が行く。

つまり、最新作を気に入ったからと言って、次回作に期待してはいけないのだ。事実、俺自身、2005年に発表されたAnothr Day On Earthを気に入り、その流れを継承したかのような2008年発表のEverything That Happens Will Happen Todayに一定の満足感を得て、2010年発表のSmall Craft On A Milk Seaに過剰な期待を持ち、「一刻も早く新作を聴きたい!」と、発売が早かった割高な国内盤を予約購入したにも関わらず、期待はずれの今更なアンビエント・テクノな作風に突き落とされ、その後はEnoの作品を追いかけることを止めてしまっていた。

そうだよそうだ。Small Craft On A Milk Sea購入直後に、ここで近いうちに取り上げる、と宣言したものの、結局ポジティブに受け止められなかったので止めたんだったけ。あれは本当に酷かったなぁ。Nerve Netの時にもびっくりしたけど、あのときはアンビエント・テクノの扉を開いたわけで、充分意味があった。それに引き換え、Small Craft On A Milk Seaでは「これは映像を伴わない映画である」みたいな事を言って、気を持たせておきながら出した結果があまりにも雑多でまるでMusic For Filmsの出来損ないみたいな中途半端な駄作だった。俺の感性が鈍いのかどうかわからんが、どこをどう聴いても何も情景らしきものは想起できなかったし、あまつさえ聴く事に苦痛さえ覚える局面もあった。
あ、思い出したぞ。世間では名盤の誉れ高いMusic For Filmsは、映画製作関係者に「こんなん出来ますけどどうですか?ご依頼お待ちしてま~す」と、プロモーション目的でばらまいた自主制作盤を編集して一般販売したんだったけ。映像作品とのコラボレーションによほど魅力を感じていたんだろう。しかしだからと言って、自らの作品を「映像の無い映画」と宣言するなんて、大言壮語もいいところだ。製作開始時点でそういうコンセプトがあったのかどうか、機会があったら真偽の程を小一時間問いつめたい。

ま、それはさて置き。

私がSmall Craft On A Milk Seaで苦々しい思いをして作品を追いかけるのを止めていた間に、こんなん出していたんですね。Enoさん。全然知りませんでしたよ。


Lux / Brian Eno

brian eno  lux.jpg

2012年に発表されていた、なんだか化粧品メーカーみたいな名前のこの作品、久々に「これぞアンビエント、Enoの真骨頂!」と思える出来。ノンリズム、散発的なメロディー未満の音がほとんど規則性を持たずに延々と配置されている。ピアノのような音も聴かれるが、ほとんどシンセサイザーで演奏(?)していると思われる。収録されている曲は合計4曲、それぞれが20分近くあり、順番に、Lux 1、Lux 2、Lux 3、Lux 4と、なんとも簡潔にして潔くも素っ気ない曲名が与えられている。この作りからは、名盤、Music For Airportが思い出されるが、Music For Airportのように曲によって音像が異なる訳でもなく、どれもこれも似たような雰囲気、かつ印象で、あえて言わせてもらえれば、全編を通して、Thursday Afternoonのような雰囲気を醸し出している。試しに、Thursday Afternoonと同時にかけたら、違和感無く聴けた(笑)。

この作品、Enoが提唱する、Music For Thinkingの3作目、という位置づけになっているらしい。以前、Neroriを購入した際、Music For Thinking Vol.2、という表記があり、「じゃあVol.1もあるんだろうが、どれなんだろう?」と疑問に思っていたのだが、どうやらDiscreet Musicがそれにあたるらしい。全然知りませんでした。

Music For Thinkingなるプロジェクトのコンセプトについて、正確なところは知らないし、調べようとも思わないが、俺は、「頭を使う時に邪魔にならない音響作品」もしくは、「深い思考の環境を作る作品」なのではないか、と勝手に思っている。事実、極端に音数が少ないNeroriは、考え事をするのに一切邪魔にならかった。というより、音の存在感があまりにも希薄で、気にならなかった、とも言えるのだが、では、このLuxなる作品が思考の邪魔をしないか、と言えるかと言うと・・・う〜ん、どうなんだろ?ちょっと微妙。若干音がシャープで、アタックが強めの音を選んでいるせいか、これを聴きながら深い思考を行うことは俺には無理かも。

ま、いずれにせよ、Enoの大きな魅力の一つである、静謐なアンビエントアプローチがなされた作品であることは間違いなく、流して聴いている分には心地よい。名盤、と言えるかどうか微妙なところだが、アンビエント作品として良作であることは間違いなく、前述の通り、Thursday Afternoonあたりが好きな人にはお勧めする。

発表は2012年、現在のところ最新作のようであるが、Enoのペースを考えると、そろそろ新作を出してくるような気がするが、どうなるんだろう?一連のMusic For Thinking作品の発表が、1975年、1993年、2012年と馬鹿みたいに間が空いている事から察するに、また作風を変えてくるような気がする。次回作は、Small Craft On A Milk Seaの時のように浮き足立って予約購入はせず、ちょっと様子を視るつもり。

でも、結局、Enoは無視出来ないんだけどね。本当に悩ましい。


LUX [輸入盤] (WARPCD231)

LUX [輸入盤] (WARPCD231)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: WARP RECORDS
  • 発売日: 2012/11/10
  • メディア: CD



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Roman Roads IV - XI / Land Observations [Ambient/New Age/Experimental]

先日、某音楽ダウンロード販売サイトで面白そうなものはないか、と適当に捜していたところ、偶然巡り会った作品。久々の拾い物。

Roman Roads IV - XI / Land Observations

land o bservations.jpg

購入時にはアーティストについての事前情報は一切知らず、部分的に試聴し、直感で決めた。何せ海外のサイトからダウンロード購入したもので、詳しい情報が一切無く、ちょっとググってみたところ、どうやらこのLand Observatiosというプロジェクト、Applianceというバンド(知らん)に在籍していたJames Brooksなる人物(もちろん、知らん)のソロ名義の名前らしい。

この作品、ローマ街道をテーマにしたコンセプト・アルバムの体裁をとっているようだ。アルバム名、収録曲名からも容易に察知することが出来る。さらに言えばプロジェクト名にも情景描写の姿勢が表れている。

肝心の内容だが、エレクトリック・ギターの多重録音により構成されている。前述の通り、ダウンロード購入したので文字情報が極端に少なく、James Brooksなる人物以外の録音参加メンバーは不明だが、何度か分析的に聴いたところ、多分、ドラムもベースも不在のようだ。パーカッシブな音も聴いて取れるが、よくよく耳を澄ませば、全弦をミュートし、ダウン・ストロークでカッティングして音を出している。また、シンセ風のロング・サスティーン音も聴かれるが、これはE-Bowを使っているのだろう。あ、もちろん、ボーカルも不在。

技術的にはそんなに難しい事をやっているわけではない。8トラックの宅録機材でも出来そうだ、っつーか本当にその程度の機材でやっているのではないかなぁと思わせる節もある。

複数のギターによる比較的簡易な演奏が重層的に積み重なり、その上にメロディーラインが乗る。全ての音が綿密に設計されており、無駄なフレージングは聴かれない。このあたりは非常に好印象。さらに良い傾向として、使われているギターの音色が意外にもナチュラルで、基本的にエフェクト控えめな音が中心。全ての局面において冷静沈着に演奏を行っており、威圧的な音響も無い。当然、情感に任せた無軌道なソロも聴かれない。ひたすら禁欲的にギターの音が積み重なって行く音像は非常に真面目な印象、ではあるのだが。

「ギタリストのソロ・プロジェクト」という形態的な特色がそう思わせるのか、Durutti Columnを想起させられる部分もある。しかし、Viniと比較出来る程、音に色気、ぬくもり、表情が感じられない。また、ギターの多重録音作品となると、どうしてもManuel GöttschingのInvantions For Electric Guitarを引き合いに出したくなるが、Manuel Göttschingの偏執的なまでの冷徹さは無い。つまり、ギタリストの多重録音作品としては、「ぬるい」と、言わざるをえないのだ。

致命的な欠点のある曲、演奏は無い。小粒ながらもどの曲にもそれなりの魅力はあり、実直に演奏している姿が手に取るように解るが、曲調も演奏も淡々としており、突き抜けていない感を免れないのは否定しようもなく、結果、作品全体を通して単調な印象になってしまっているのは残念。

しかし、分析的に聴くと前述のようなマイナス面にも気がついてしまうが、聴き方によってはその盛り上がりのないフラットな感じが魅力であることも間違いない。事実、俺自身は購入した事を後悔していないどころか、何度も繰り返し聴いている。というか、流している。生活音楽として気軽に聴ける佳作。

「なんか、邪魔にならず、さらっと聴ける音が欲しいなぁ」と、思っている方にはお勧めする。
 

Roman Roads IV-XI

Roman Roads IV-XI

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Mute U.S.
  • 発売日: 2012/10/22
  • メディア: CD


 
 
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