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ガムラン (Music & Dance of Bali / Yamasari) [ガムラン]

自分が関わった作品を取り上げる誘惑に打ち克つことが出来なかった。しかし、この作品は日本では発売されていないので、たまたまこの記事を読んで興味を持ったとしても入手することは困難。

MUSIC & DANCE OF BALI / YAMASARI


yama1.jpg


YAMASARIは1993年、当時名門TIRTA SARIを率いていたCok Alit Hendrawan氏の呼びかけにすでに他の楽団で活躍していた名手達が結集、バリ島のプリアタン村に誕生した。発足当時はセッショングループ的な要素が強かったが、過去3回の来日公演や現地での定期的演奏会の開催等を経て、2000年頃からほぼ現在のメンバーが定着した。
一口にガムランと言っても様々なスタイルがある。YAMASARIは現在のバリで最もポピュラーなGONG KEBYARというスタイルを採択しており、これは20台前後の金属製の鍵盤楽器を中心とし、他に両面太鼓、笛、ゴング類等が加わる総勢26人前後の大規模なアンサンブルだ。基本的にガムランの金属製鍵盤楽器群はセット単位での注文生産で、楽団指定の音律で調律される。当然、他の楽団の楽器を部分的に持ってきても役に立たない。よしんば同じ音律でも基準音が違ったりするのでトンチンカンなことになる。つまり、楽器の存在自体が楽団の存在であり、音楽の存在と同義語なのだ。
YAMASARIは結成から現在にいたるまで、楽器の調律を3回換えており、収録時に使用している楽器の調律は第二世代にあたる。いずれの世代の楽器にも共通している特長は、通常GONG KEBYAR編成では省略してしまうことの多いGENDER RAMBATという旋律を担当する鍵盤楽器をアンサンブルに加えていること。この楽器は金属製鍵盤楽器としては珍しくアタック音が柔らかく、これにより豪快さと繊細さという相反する表現さえも同時実現可能な豊かな音色のガムランとなっている。
実はこの作品が録音された数週間前、YAMASARIは日本のテレビ局が3日に渡って放送したバリからの衛星生中継番組で最終日のトリを演じている。その為の綿密なリハーサルが功を奏し、楽団の集中力、モチベーションはかつて無いほど高まっており、そのままレコーディングに向けての過酷なリハーサルに突入した。元々レパートリーにあった曲の再確認を行い、後世まで記録として残ってしまうには解釈が不十分なのではないか、と、少しでも疑われる伝統的演目については徹底的な検証が行われ、細部に渡って手直しが施された。また、オリジナルの現代曲にも新たな編曲を施した。リーダーであるCok Alit Hendrawan氏は完璧を求めるが故に指導が厳しいこもことでも知られているが、この一連の創造的作業で、彼の音楽姿勢と熱意は現場ではっきり現れた。リハーサルでは毎日怒鳴り声が轟いており、リハーサルが終了すると声が出なくなっていた程だ。しかし、その怒号の結果が見事に結実していることはこの作品で披露されている素晴らしい演奏を聴けば疑いの無いところだろう。
演目はバリエーションに富み、録音状態もインドネシアの国内盤としては最高レベルと言える。また、レコーディング時には映像も収録されており、CDと同内容のVCDがカップリングされているが、市場ではCD一枚分の値段で流通している。実は、「ちょっと安過ぎるんじゃねぇのか?」と、疑問に思っている。

現在のところ演目の異なるVol.1,Vol.2の2種類が発売されているが、実際にはその倍以上の演目をレコーディングしている。作品化に当たって楽団側に収録曲選択の機会は与えられなかったようで、既発の2作品に収録されていないのが納得のいかない演目も多数ある。多分、発売元がVol.3以降の発売を睨んで温存しているのだろう。是非、LEGONG JOBOG,LEGONG KUNTIR,TARNA JAYA,SEGARA MUNCARを収録した続編の早期発表を望みたいところだ。


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コメント 7

ぱうだー

laguさん(ROSI南部さんのほうがしっくりかも)こんにちは。
あちこちblog渡り歩いててここにたどり着きました。
YAMASARIのVCD来月の渡バリでゲットしてきます。
私も音楽好きでEL&P、キングクリムゾン、ピンクフロイド、YES等リアルタイムで楽しみました、レコード屋さん(もう死語かな?)にも勤めたりもしたなぁ。昔話です。
そのころ偶然知ったガムランで20数年思いを馳せていたバリにちょこちょこ行けるようになり楽しんでおります。10月の渡バリはちょうどガルンガンからクニンガンが滞在時期なのでヤマサリの定期公演がキャンセルにならなければと祈っています。
by ぱうだー (2005-09-03 14:47) 

lagu

ばうだーさん、こんにちは。おっと、見つかっちまいましたか・・・しかし、よく俺だってわかりましたね。でも、別に隠れていたわけじゃないんですよ。某掲示板の私の書き込みにはこのブログのURLが貼ってありますし。でも、ガムランだけじゃなくて音楽全般を扱いたいのでここを始めたってわけです。マイペースでやってきます。今後ともよろしくです。
by lagu (2005-09-03 21:07) 

ぱうだー

ROSI南部さん、我がブログへの訪問ありがとうございます。
トラックバックの方法が今ひとつ良くわからないのですが、ヤマサリVCDの記事でこのページリンクさせて頂きました。
今後もガムラン情報よろしくお願いします。
by ぱうだー (2005-12-04 10:17) 

teamKE

これ,初めて知りました.
===
楽団指定の音律で調律される。当然、他の楽団の楽器を部分的に持ってきても役に立たない。よしんば同じ音律でも基準音が違ったりするのでトンチンカンなことになる。つまり、楽器の存在自体が楽団の存在であり、音楽の存在と同義語なのだ。
===
なにやら,ギリシャ時代のScale, Phrygianとか,Lydian, Mixolydianとかの由来を思い出します.スケールが個々の都市国家に固有で,呪術的要素があって,違うスケールの曲は違う都市国家のものだから,演奏しないとか.(ほんとかな?)

ところで,武満徹さんは,ガムランがいたくお気に入りだったようで,現地での体験を何度も随筆にかいておられます.
そのわりに,ガムラン的な曲は書いていないけど,Takemitsu Toneへの影響はあるのでしょうね.
by teamKE (2009-02-21 07:36) 

lagu

teamKEさん、こんにちは。

武満徹に限らず、ガムラン音楽に影響を受けた現代音楽の作曲家はかなりいますね。
有名どころではジョン・アダムス、ジョン・ケージ、テリー・ライリー、フィリップ・グラスあたりは、明らかに方法論としてのガムランの作曲手法やイメージを作品にとい入れているように思います。ルー・ハリソンに至っては何をかいわんや。

ちなみに、バリのことを中心に綴っているブログもやってますので、興味があったらこちらも覗いてみてください。

http://bntg.exblog.jp/


by lagu (2009-02-28 08:59) 

teamKE

ガムランの,
現代音楽への影響は絶大ですよね.

ビンタンのほうも読ませていただきました.
もう,おもしろすぎてやみつきです.
by teamKE (2009-03-03 12:16) 

lagu

teamKEさん、こんにちは。
そうですか。ビンタン殴り書き、お気に召しましたか。
あのブログもこのブログと同様、気が向いたときに不定期にしか投稿してませんが、暇があったらたまに覗いてやってみて下さい。
by lagu (2009-03-03 14:39) 

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