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Sheer Heart Attack / Queen [HM/HR]

さぁ、いよいよQEENのライブ盤の発売が近づいて来た。はやる心をこんなのを聴いて抑えている。


で、話はいきなり40年前、この作品との出会いへと遡らせてもらう。


俺が中学生の頃、放課後の部活動とは別に、週に一回、授業の一環として「クラブ活動」という枠があった。文化系、体育系ともに細分化されており、必ず何らかのクラブに所属しなければならなかったが、それぞれのクラブに定員があり、希望者がオーバーした場合は抽選になるため、思い通りのクラブに入るのは余程幸運に恵まれた奴らだけだった。

特に人気があったのが「レコード鑑賞クラブ」で、これは読んで字のごとく、持ち寄ったレコードを鑑賞するのが活動である。クラブの顧問となった教師は情操教育の一環としてクラシック音楽を優先させようとしていたが、生徒に選択の自由を与えた結果、実態はロック、フォーク、歌謡曲となんでもありであった。特にロックが好きな奴はこのクラブに入りたがった。なにせ、自宅では聴けないような大音量でロックを聴けるのである。

ある日、「今日のレコード鑑賞クラブでは発売されたばかりのQUEENの新作をかけるらしい」という情報がロック好きな連中の間を駆け抜けて行った。幸いな事にレコード鑑賞クラブが使用する教室(ステレオは毎回、音楽室から運んでいた)は俺が所属していたクラブの教室の隣だった。予め、レコード鑑賞クラブに所属していた友人には、廊下に音が響くように通路側の窓は全開にしろ、ステレオは出来るだけ大きい音でかけろ、とリクエストしたが、これは既に他の友人がほとんど恫喝とも取られかねない口調で要求済みであったようだ。

ま、それはともかく、クラブ活動の時間枠が始まってしばらくの後、どえらい勢いのハードロックが聴こえて来た。10分程度は隣室から聴こえてくる音に耳を澄ませていたが、もう我慢の限界だ。俺は、「先生、トイレ」と離席を告げ、廊下に出ると、隣の教室の前には数十人の生徒達が集まっていた。勿論、QUEENの新譜が聴きたくて自分の授業を抜け出して来た連中であることは想像に難くない。集まった連中の中には顔は知っているものの話をした事のない奴も多く、「そうか、こいつもロックが好きだったのか」と、妙な連帯感が生まれた。結局、それぞれのクラブの顧問教師が事情を察知し、連れ戻しに来るまでの間、俺たちはQUEENの新譜を堪能したが、それは俺たちにとって決して充分な時間とは言えなかった。勿論、俺はその新譜、Sheer Heart Attackを可及的速やかに購入する事にした。


SHEER HEART ATTACK / QUEEN

sheer heart attack.jpg

このアルバムが発売された時、ちょっとした騒ぎが勃発した。それまで、フリルやらプリーツやらレースやらを多用したコスチュームで少女漫画の登場人物のような華麗さを演出していたメンバーが、Sheer Heart Attackのジャケットでは、半ば半裸の汗だく姿で折り重なるようなデザインで納まっており、それまでのイメージを根底から覆す暑苦しい雰囲気を醸し出していたからだ。特に女性ファンには圧倒的に不評で、ジャケットのデザインだけで拒否反応を示し、ファンを止める事を宣言するミーハー(死語?)な奴までいたが、内容は実に素晴らしいものだった。

アルバムはカーニバル風の効果音で華々しく幕を開ける。喧噪の中からBrianの繰り出すギターのミュートされたカッティング音が聞こえてくる。次第に音量が増し、フレーズが形成されると、唐突にRogerがフィルインをかまし、圧倒的にスリリングなハードナンバー、Brighton Rockが始まる。もうこの時点で鳥肌。中盤、ディレイを効果的に使った長尺のギターソロが展開されるが、これが5分弱の曲の半分程を占める。それも後半は完全にギターのみとなるが、見事な構成力で飽きる事無く一気に聴かせる。この冒頭の一曲目だけでギター少年達は完全にノックアウトされた。
一旦間をおいて続くのは、ワールドクラスのヒットとなり、Queenの名前を一気に世界に知らしめたKiller Queen、短調と長調を巧妙に使い分け、素晴らしいメロディーとツボを心得た手練のアンサンブルを聴かせる。耳に馴染みやすい程よい軽さも成功の秘訣と言えるだろう。
以降、Rogerのロック魂が炸裂するTenement Funster、The March Of The Black Queenを彷彿させるFlick Of The Wrist、リリカルなLily Of The Valleyとメドレー形式で一気に聴かせたところで満を持して繰り出されるのが、アナログ時代はA面の最後を飾っていたNow I'm Hereである。ギターのリフや部分的な展開がRock'n'Rolの雰囲気を漂わせるものの、そこはくせ者、静と動の見事な対比、そして腹の座ったリズム。実にQueenらしいアレンジが施されたスケールのでかい名曲だ。

さて、アナログ時代のB面。大迎に始まるIn The Lap Of The Godの作りから、「B面は組曲形式で行くのか」と期待させるが、続くStone Cold Crazyで盛り上げておいてあっけなく中断。「え、どういうこと?」と思っていると、ピアノの弾き語りによる(勿論、バックコーラスはバッチリ作り込まれているが)オーネストな印象のDear Friendで流れは完全にリセットされる。続くMisfire、Bring Back That Leroy Brown、She Makes Meの3曲はほとんど途切れる事なく収録されてこそいるものの、それぞれの曲は独立した個性を持っており、編曲による橋渡しは一切無い。最終曲、In The Lap Of The God…Revisitedはいかにもアルバムの最後を飾るにふさわしい曲だが、リフレインが4分弱の内、半分を占める。コンサートの最後に演奏したら大合唱になるんだろうが、曲想にバリエーションが豊富すぎて、若干、散漫な印象を受ける。
といいつつもStone Cold Crazyの尋常ではない飛ばしっぷりは現在の基準においても驚異的な高揚感を醸し出している名演。後にMetallicaがカバーするに際して苦労したという逸話は有名だ。また、フォーキーでたおやかな印象のShe Makes Meも実に魅力的だ。個人的には、この曲に後のShoegazerにも通じる雰囲気を感じ取っている。Shoegazerのファンは一度聴いてみる事を勧める。

この作品、前2作と比べてサウンドプロデュースが飛躍的に向上しており、生々しいまでに音像が鮮明だ。また、印象がかぶる曲がほとんどなく、豊かなバリエーションは、結果的に聴きやすさ(飽きさせない)にも大きく貢献している。そう考えれば、余韻を残さないように次から次へと繰り出されるB面中盤以降の3曲の曲間を極端に詰めた収録方法にも納得がいこうというものだ。やはり、これも名盤保証!


さて、前述の通り、このアルバムに収録されている曲の曲想は実にバラエティに富んでいるが、中でも飛び抜けて奇矯に感じたのはBring Back The Leroy Brownだった。ディキシーランド風のちょっと人を食ったような小品なのだが、この「オールドファッションな印象の遊び心を反映させた作品」は、次回作、A Night At The Operaに収録されるSeaside RendezvousやLazing On A Sunday Afternoonへの布石となり、A Day At The RacesのGood Old-fashioned Lover Boyへと、News Of The WorldのSleeping On The Sidewalkへと、JazzにおいてはDreamers Ballへと引き継がれて行き、遂にThe GameでCrazy Little Thing Called Loveに結実し、最終的に大ヒットに繋がることはあの時点では誰が予測出来ただろうか。
メンバー達が長期的戦略を練り、その機会を伺っていたかどうかは定かではないが、この辺りの既存の音楽文化をリスペクトした上での柔軟性や多様性に、他のバンドと十把一絡げに出来ないQueenが内在していた音楽性の懐の深さを感じる。


Sheer Heart Attack

Sheer Heart Attack

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Hollywood Records
  • 発売日: 2011/07/26
  • メディア: CD


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