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Live In Paris 28.05.1975 / Fripp & Eno [Ambient/New Age/Experimental]

あまり気乗りがしないんだけど、やっぱ、このブログの性質上、この作品のことも取り上げないといけないよなぁ…FrippやEnoのファンから反感を買うのは目に見えているのだが。

これもまたRobert Frippの過去音源整理活動の中から出て来た作品だろう。以前からDGMのオフィシャルサイトでダウンロード購入出来たようだが、作品として手元に持っていたいと思い、先月末の発売日当日に購入、じっくり聞いたが、あることに気がつき、唖然としてしまった。


Live In Paris 28.05.1975 / Fripp & Eno

fripp eno line in paris.jpg

このアルバムの概要だが、Fripp & Enoが1975年5月28日、パリで演奏したコンサートの模様を収録した2枚に、実際にコンサートで使われたループ素材のいくつかとプラスαを1枚に収録した豪華3枚組である。とはいいつつ、実際のコンサートを完全収録したものではなく、最後の曲、それもAn Index Of Metalが途中でカットアウトされている。おそらく、いや、絶対に記録媒体の残量が無くなってしまったが故の事故だと思うが。全く、なんで事前にもっと準備しておかなかったのかね?

アルバムの一曲目は、おそらく開演前に流されていたもので、実際の演奏は行われていないと思う。観客が曲の展開(と言っても、展開らしきものはないが)とは無関係に盛り上がっていることから察するに、これらの拍手や歓声は二人が順次ステージに登場した時に発せられていたものだと思われる。
以降、フリッパートロニクスを多用した上で、Frippがソロを乗せて行く、といった手法でほぼ全編が構成されている。

ご存知の方も多いと思うが、フリッパートロニクスとはRobert Frippが考案した音響システムで、複数台のテープレコーダーを使用し、発音した音を一定周期で再生させ、その上にまた新たな音を重ね、といった具合にバッキングパートをリアルタイムで作って行く機材である。「なんだ、ルーパーの事か」と思われる方も多いであろうし、確かにその通りなのであるが、当時はルーパーなんぞなく、画期的なシステムだったのである。

さて、一方のEnoは…なにやってたんだろ?多分、テープの操作を主にやっていたと思われる。実際、ギターがほとんど登場しないノイズの様な曲において拍手が湧き起こっていることから、この部分においてはEnoにスポットがあてられ、何らかの音響機材を使用し、演奏的(?)行為が行われていたものと推察される。

残念ながら録音状態は良好とは言えない。まぁ、最後まで収録されていないことから察するに、将来的に作品化することを考えずに記録として録音しておいたものなんだろう。聴き所はやはりFrippの粘っこくも様々な表情を見せる雄弁なギター。後にEvening Starに収録される曲もほとんど収録されてる。が、当然のごとくFrippは半ば即興的に演奏を行っているので、同名の曲であってもフレージングは異なっている。まぁ、いずれにせよ、このコンサート時点で、半年後に発表される名盤、Evening Starの素材がほぼ出そろっていた、ということを考えればなかなか面白く聴ける。

さて、注目すべきはDISC3に納められているループ素材。これはコンサートの生演奏では再現出来ない部分を事前に録音し、PA(勿論、モニターも)から会場に流した上で、演奏を乗せて行く為の補助的、もしくは基礎となるものだ。

「え?生演奏じゃないの?そんなのインチキじゃん」と思う人もいるかとは思う。だが、実際のコンサートの現場では良く使われている手法である。端的に言ってしまえば、シーケンサーで作り込み、MIDIで同期させた音に合わせて演奏するのと本質的には変わらないし、ボーカルやソロパートなどのアピールポイントを除いた録音を事前に用意し、会場に流した上で、これに合わせて演奏する場合もある。もっと極端な例えをするなら、予め録音したものをPAから流し、実際のコンサートでは演奏しているふりを装っていたりする場合もある。あえて言うなら、多くの場合、録音に合わせて演奏はしていると思われるが、それらの音はPAから出ていない。

事情通の間では、1971年にGrand Funk Railroadが後楽園球場で嵐の中強行した、『伝説のコンサート』が嘲笑の対象となっている。実はあの時の演奏は、雷を伴う暴風雨の中、屋外ステージでの演奏であった為、感電事故を恐れ、PAから出ていた音は完全に事前録音されたものであったそうで、テープに録音された大爆音に合わせて電源の入っていないアンプに繋げたギターをかきむしるパフォーマンスに当時のロック野郎はずぶ濡れになりながら熱狂したことになる。


ちょっと話が脱線してしまった。起動修正。


まぁ、そんなわけだから、Fipp & Enoという最小限のユニットが人前で演奏を行う際、演奏の一部を事前に仕込んでおくのは当然、と思う。なにせ、Enoは自らをノンミュージシャンと公言しているわけであって、刻一刻と変化する現場の状況にあわせ、高度な演奏技術で適切に対応出来るなんて誰も期待していないだろう。Frippが演奏しやすいように、予めシンセサイザー等で作ったシーケンス音等を会場に流し、場合によっては現場でエフェクト処理を行ったりするものだと思っていたし、ある意味、EnoがFrippとの共同名義のコンサート用に用意した音源が単独で聞けるということは非常に興味深い、と歓迎していたのであるが。

なんと、その録音にはFrippが演奏するフリッパートロニクスの音まで収録されていたのである。前述の通り、フリッパートロニクスを使用すれば、現場でバッキングの環境を作りながらソロ演奏を行う事が可能なのに、Frippは自ら開発したシステムの利便性を放棄し、事前にテープに仕込んでおいた、ということになる。まぁ、現場で少なくない確率で起こりえる予測出来ない不慮の事故を想定してのことなのだろうが…


教授、それでいいんですか?自己矛盾を起こしていませんか?


このことを裏付けるように、CD3に収録されている8曲の内、4曲が実際のコンサートで使用された音源だが、そのどれもが実際のコンサートでの演奏時間より長い。そりゃそうだ。準備されたバッキングが終わってもソロ演奏を行っていれば、いきなり音が薄くなってしまう。録音が切れる前にうまく次の展開に持って行かなければどっちらけだ。そうなると、Enoがステージ上で行っていたのはタイムキーパーか?「おい、そろそろ録音が切れるぞ。次の展開に移れ」とでも、Frippにサインを出していたのだろうか…

それにしても自らネタバレするとは、Frippにはどんな思いがあったのだろう?もしかして懺悔か?いやいや、あのGreat Deciverが自ら懺悔なんてあり得ない。本当にどういうつもりなのか理解に苦しむ。わざわざループ音源の公開なんかしなくてもよかったのに…

誤解なき様に言っておくが、俺自身はFripp & Enoのファンである。で、あるが上に余計に残念。世の中には知らない方が幸せなこともあるのだよなぁ…



Live in Paris

Live in Paris

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Imports
  • 発売日: 2014/09/23
  • メディア: CD




Evening Star

Evening Star

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Dgm / Inner Knot
  • 発売日: 2008/10/21
  • メディア: CD



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