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13 / BLACK SABBATH [HM/HR]

さぁて、過日のDavid Bowieの復活劇に勝るとも劣らない大イベントがやってきた。Black Sabbath、奇跡の(ほぼオリジナルメンバーでの)復活作だ。

Black Sabbathは1990年代終盤に一時的にオリジナルメンバーが集結してツアーを行い、Reunionという記念碑的なライブ盤も発表したものの・・・あれにはがっかりさせられたなぁ。Ozzyが不安定すぎてとても聴けたもんじゃなかった。俺自身、入手後、最後まで通して聴いたことは一回しかないかもしれない。

しかし、今回は以前のような過去のキャリアを振り返る同窓会的再結成ではなく、全て新曲でアルバムを作成し、ツアーも行う、いわば仕切り直しの再始動のようだ。残念なことに記者会見時にはオリジナル・メンバーでの再結成という話だったはずなのだが、ドラマーのBill Wardが戦線離脱してしまったようだ。ま、年齢のことを考えれば致し方ないか。

それにしてもOzzy脱退から35年ぶりだよ。おまけにプロデューサーはかのRick Rubinだ。彼は最近、複数のアーティストから「ペイに見合うだけの仕事をしていない」、「プロデュースをしないプロデューサー」などと、厳しい批判にさらされているが、Slayerでの一連の仕事や、Red Hot Chili PeppersのBlood Sugar Sex Magicでの「バンドを取り巻くユーザーのニーズを把握し、作り込み過ぎずにバンドが本来持っている音を尊重して結果を出す」プロデュースの手腕には一目置いており、(放っておいても結果の出るアーティストのプロデュースが多い、とも言えるが)「ラウドな音が好き」と公言してはばからないその彼がBlack Sabbathのプロデュースをするってんだから、こりゃ、相乗効果を期待するなって言う方が無理ってもんだ。

で、問題のブツ、今、届きました。これから曲を聴きながらリアルタイムで感想をしたためていこうと思う。(その瞬間のイメージを音だけをたよりに正直に綴るので、若干、厳しい書き方になってしまいがちなのは許してほしい)

13 / Black Sabbath

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さぁ、始まったぜ。1曲目。激しいイントロ。まさにストーナー・ロック。ボーカルが参入すると同じ主題を奏でつつも楽器群の音量、ニュアンスが控えめに。そしてわずかにテンポアップする展開部。なんだかデビューアルバムの表題曲、Black Sabbathに展開が似ているが、これは意識してやっていることだろう。おっと、キー・チェンジした。う〜ん、ドラマーのプレイがいまいちツボにはまっていない。かなりやりたいことを抑えているのはわかるのだが。うわー。ギター・ソロの音がでかすぎ。おっと、無難な感じの着地。

2曲目。怪しげなアルペジオから一気に爆音に突入するや、再び予想通りボーカルパートか。あれ?ちょっと待て。ボーカルの音程が正確すぎるぞ。もしかして補正かけてないか?あ、硬質な音のベースがいい感じだしているなぁ。おっと、1曲目に続き、テンポ・チェンジ、若干だがテンポがあがりながらも引きずるようなリズムは相変わらず。あ、Ozzyのシャウトらしきものが聴こえたが、大した高音でもないのに声が割れている。う〜ん、これが今現在のOzzyの限界なんだな。

3曲目。メインのリフが過去の曲にそっくりだが、まぁ、これはオリジネイターの特権だろう。腹の据わったリズム。この曲はテンポチェンジせずにまとめてほしいなぁ。う・・・ドラムのテンポ感が展開部で前のめりになりやがった。あ、ギターソロで唐突に終わった。もうちょっと引っ張りようもあっただろうに。

4曲目。このアコースティックギターと遠くから聴こえてくるようなボーカルのエフェクト、軽いパーカッション、どこかで聴いたことがあるなぁ・・・確か4枚目に似た感じの曲があったような気がするが、まぁいいか。あ、いいギターソロ弾いているなぁって、そのまま終わりかいっ!

5曲目。おお、つかみのいいリフだ。ボーカルも健闘している。これだよこれ!これがSabbathの音だ!いいねぇ。余分な音がない。ボーカルが引いての展開部、若干、中だるみはあるものの、ちゃんと次につなげている。
あれ、テンポが若干あがった。どうするつもりだろう?まぁ、昔からこういった手法はお得意だったのだが・・・あ、いかにものSabbathなギター・ソロ。音色も文句なし。キーボードが邪魔だが、この手法はSabotageあたりでよく聴かれた表現方法だ。

6曲目。うおお、またまたいきなり重いリフの攻撃。ボーカル参入前に既にテンポチェンジ。2拍3連の使い方はさすがだなぁ。できればドラムはユニゾンにせずに普通に叩いてほしいんだけど、まぁ、しょうがねぇか。キー・チェンジ、テンポ・チェンジをしながらのギター・ソロ、ボーカルとのかけあい・・・って、いきなり終わるなよ。

7曲目。冒頭部分に不穏なSE。どこかで聴いたようなフレーズのバラード。ちょっと軽いかな。いや、もちろん、重く、引きずるような感じは失っていないのだが、あ、ハーモニカのソロに続くギター・ソロ、いい味が出ているなぁ。ちゃんと次の展開にバトンタッチしているし。お、テンポがあがった。これはかっこいいなぁ。ギターがブルース・ハープをバックに大活躍だ。リフも魅力的。って、ああ〜、余韻を残して終わってほしかったなぁ。

最後の曲。かなり硬質なリフで始まり、途中で若干軽めに展開しながら、再びダークなリフに持ってくるこの展開は、名曲、Sabbath Bloody Sabbathのようだ。途中、大きな展開があればいいのだが・・・お、予想通り来た来た。来ましたよ。ちょっと引っ張り方が足りないような気もするが・・・あれ?また最初の雰囲気に戻ってきちゃったよ。どうするつもりなんだろう?あ、冒頭部分のリフだ。これを繰りかえして終わりなんてことは・・・あ、終わった。雨の降る音と鐘の音のSE、すなわちデビューアルバムの冒頭部分と同じ音響でアルバム終了!


さて、どう考えたらいいのだろうか?いや、だいたい、こうだろうな、という感じではあったのだが。


Tony Iommiのリフは相変わらず堅牢そのもの。ソロに関しては、昨今流行の無駄に音数の多いソロに挑戦していないところはさすが重鎮。自分の立ち位置を良く理解している。曲作りに関しては、一曲中で展開する昔ながらの手法が効果を上げているが、若干、性急すぎる感じがする。フェードアウトやカットアウトの多用を排除した結果、余韻の部分で若干の不満は残るが、これはいたしかたないところだろう。
Ozzyのボーカルについては、残念なことに高音は望むべくも無く、さらに以前のぶち切れた感じも一切無く、やたら正確なのがちょっと不気味。表現力は明らかに落ちているが、まぁ、この声があってこそのBlack Sabbathなのだな、ということを再確認させるだけの説得力は保っている。
Geezer Butlerのベースは、ギターの圧倒的な歪みに隠れがちながらも、相変わらず硬質な音で時折耳を奪われる光るプレイにはっとさせられる瞬間があり、まぁ、端的に言えばSabbathらしい(って、当たり前か)。
ゲスト・プレイヤーのドラムに関しては・・・う〜ん・・・及第点ではあるが、どうでもいいです(笑)。ドカスカパカスカ叩きまくらずにこらえたところは好印象だが、これはBlack Sabbathの復活アルバムで叩かせていただけるのだから表現欲を捨てて当然。もし、こやつが「ワシ、ここまでできまっせ!」とばかりに叩きまくったら即刻クビだろう。

アルバム全体を通しての感想。ようやく長い混迷の時代を乗り越えてあるべきBlack Sabbathが戻ってきた、という印象。ま、当然なのだが、技術革新のせいか、音像がクリアーになってこそいるものの、Ozzy在籍時のBlack Sabbathと印象がさほど変わらない。やはり、SabbathをSabbathたらしめていたのは、展開の多い曲作りとTony Iommiの重厚なリフ、そしてOzzyの独特の声質だったことを再確認した。残念なことにOzzyの表現力の低下はいかんともしがたいが、それを補うべく、Tony Iommi御大は大活躍しており、過去の名盤の延長線上(勿論、Ozzy在籍時代に限る)で受け止めるに足りる出来映えの作品になっていると思う。

では、現在進行形の超絶技巧が当たり前になっている新世代のメタル・バンドと比べてどうか、というと・・・これは比較する意味も無いし、比較して優劣を考えることなど愚の骨頂だ。Ozzy脱退後、紆余曲折がありつつも徐々に、そして確実に下降方向に向かっていたBlack Sabbathが、Ozzyの復帰によってBlack Sabbathらしさを取り戻したかどうかが最も重要なのであって、技術的に向上したかどうか、若い連中に負けない創造力を発揮したかどうか、ましてやバンドとして新しい地平を切り開いたかどうかなんてのはどうでもいいことであり、この作品を待ち望んでいたファン共通の暗黙の了解のはずだ.


そういうわけだからして、この作品、正直言って、Ozzy在籍時のBlack Sabbathを聴いたことの無い者、もしくは後追いで聴いて魅力を感じられなかった者は好意的に受け止められないと思う。

しかし、バンドの表題曲、Black Sabbathの怪しげな雰囲気に鳥肌を立てた者、Sabbath Bloody Sabbathのリフに熱くなった者、Hole In The Skyの腹の据わったリズムに頭を振りそうになった者、Iron Manの低音チョーキング一発にぐらりとした者、即ち、未だにあの暗黒感を忘れられずにどこかでひきずっているロック親父は必聴。「これだよ。これがBlack Sabbathだよ」と、思わせてくれる。


あ、ちなみにプロデューサーのRick Rubin、充分に仕事はできたのかなぁ?彼が好きなタイプの音になっていることはわかるけど、そもそもRick Rubin自身がBlack Sabbathの大ファンだったはずだし、御大Tony Iommiに口出し出来るなんて思ってもいなかったはずだ。ま、いいところに名前を並べてもらえて嬉しかったことは想像に難くない。


それにしても最近、ストーナー・ロックが見直されているようだけど、ようやく帝王の復活だね。平伏。



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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Republic
  • 発売日: 2013/06/06
  • メディア: CD



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