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NEU! (早すぎたPOST ROCK) [Ambient/New Age/Experimental]

ここまで来たら、当然NEU!、である。

初期、Kraftwerkに在籍していたKlaus DingerとMichael Rotherによるユニット。発表は…驚くべき事に1971年。

なんで驚くのかって?1971年にしてもう音響派のPost Rockをやっているからだよ!


NEU!

neu.jpg

なんだか超投げやりなジャケットだなぁ…まぁ、見方を変えればポップ・アートとも言えなくもないのだが…

作品全体を横溢するのは…いや、何も横溢なんぞしていない。正直言えば収録されている6曲の曲想はバラバラ。

だが、根底に見え隠れするのは実験的な精神。アヴァンギャルドな作風なのに妙にポップな部分もあり、ひねくれていて、それでいて妙に素直で…う~ん、適切な言葉がみつからない。


これはもう一曲ずつ感想を述べていくしかないだろう。

アルバムの冒頭を飾るHallogalloは、後のKraftwerkのAutobahnにも通じるような疾走感のある曲だ。ドラムの叩き出す無機質なビートに乗って、多重録音されたギターが様々な音響を駆使し、多様な表情を見せていく。特筆すべきはほとんど音程を持たないワウを使用したギターのカッティングと、テープの逆回転。

続くSonderangebotはシンバルとディメンジョン系エフェクターを使用したフリー・フォームな実験的作品。ところどころスライド・バーを使ったと思われる揺らめくギターが参入し、怪しい雰囲気を作り上げている。

シームレスに繋がっていくWeissenseeはゆったりしたリズム、ワウを多用したギターが心地よい作品。安心して浮遊感に身を任せられる音。どこか遠いところに連れて行ってくれそうな雰囲気が魅力的。

LP時代にはB面の一曲目だったと思われるIm Gluckは、水が流れる効果音で始まる。続いて明らかにインド音楽に影響を受けたと思われるドローンの上を、フリー・フォームなギターが浮遊する。スライド・バーを使用したボリューム奏法、ワウを使用した穏やかなメロディーが散発的に聞かれる。リズムこそないが、曲の雰囲気はWeissenseeに良く似ている。

続くNegativland。前2曲の穏やかな雰囲気を突き破るかのように、いきなり削岩機の音が轟き渡る。続いて始まるのは無機質なハンマー・ビート。単調なベースに乗せてノイジーなギターが破壊的な音響を聴かせる。何回かテンポ・チェンジするものの転調は一度も無い。

アルバムの最後を飾るLieber Honigでは、Slow Coreにも通じるようなエレクトリック・ギターのクリーンなトーンに乗せ、つぶやくようなド下手なボーカルが聴かれる。勿論、この下手さ加減は意図的にやっている事であろう。中盤以降はIm Gluckで聞かれるドローン音と水が流れる音。エコーが深くかかり、まるで鍾乳洞の中に取り残されたかのようなイメージでアルバムは幕を閉じる。

よくよく聴いてみれば、シンセサイザーは一箇所も使用していないようで、ドラムとギター、ベース等の弦楽器、録音された効果音でアルバムは構成されている。驚くべきことに転調している曲が一曲も無い!これは楽曲の良さを度外視し、音響の面白さを追及した結果だろう。


実を言うと、恥ずかしながら、NEU!の作品はリアルタイムでは聴く機会がなかった。それどころか、初めて接したのがたかだか10年くらい前である。付き合いのある様々なミュージシャンのボキャブラリーの中にNEU!の名前が頻繁に現れ、ジャーマン・ビート、いわゆるハンマー・ビートの元祖であり、Joy DivisionULTRAVOXにも大きな影響を与えた、と言う事を知り、「今更、と言われようがなんだろうが、これは聴いておかねばなるまい」とこの作品を購入。即座にファンになり、全作品(と言っても3枚だが)を購入して聴いて聴いて聴き倒したことは言うまでもない。


NEU!は、This Heatにも匹敵する存在だとおもう。そして、NEU!にとっての幸運は、This Heatと同様、いい音が簡単に出せるデジタル機材が一般に広まる前にこの作品を含む一連の活動を終えた、ということだ。これが限りある機材を駆使し、実験的でありながら結果的にポピュラー・ミュージックとしても聴ける作品を世に送り出せた要因だと思う。NEU!は商業的成功を納められなかったようだが、その冒険的精神は多くのミュージシャンに影響を与え、これまたThis Heatと同様カルト的人気を獲得し、その評価は衰えることがない。

と、言うより。現代でこそ正当に評価されるべき音楽であり、音創りだと思う。決して万人向けではないが、好きな人は絶対に抜け出せなくなる音。個人的には大名盤。

早すぎた音響系。現代においてこれほどNUE!にピッタリの言葉はないのではないか?




Neu!

Neu!

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: High Wire
  • 発売日: 2008/08/26
  • メディア: CD



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Autobahn / Kraftwerk [Ambient/New Age/Experimental]

さて、Tngerine Dreamがシンセサイザーによるビートで寒色系サイケデリックな作品を発表した頃、同じドイツでこれまたシンセによるリズム創りで傑作を発表した音楽集団がいた。

Autobahn / Kraftwerk

kraftwerk ab.jpg

テクノ・ポップの礎を築いたKraftwerkの…確か4枚目。発表はTangerine DreamのPhaedraと同じ1974年。

LP時代はA面をぶち抜いていた23分に渡る表題作は、その名前通りドイツの高速道路、Autobahnを車が走る様子を音で描写したしたものである。後のテクノ・ポップに通じるような音響でシンセサイザーの作り出すビートに乗り、曲は爽快に飛ばしていく。クラクションの音、車がすれ違う時のドップラー効果、より高速の車に追い越される時の音なども工夫してシンセで表現しているのは面白い。また、低音の短いフレーズの繰り返しのみならず、シンセで擬似的にドラム風のパーカッシブな音を作っていることも特筆に価する。このためか、リズムがはっきりしており、聴いていて非常に安心感がある(笑)。

4曲の小品が収録されたLP時代のB面でも、鯨の鳴く声、小鳥の囀り、水滴が水溜りに落ちる音なども電子楽器により表現。その音創りの多彩さ、探究心、ちょっとした遊び心にはおもわずニヤリとさせられてしまう。

この時代のTngerine DreamとKraftwerkが決定的に違うのは、Tngerine Dreamが即興演奏を感じさせる作品で曲の解釈を聴き手側に委ねていたのに対し、Kraftwerkは表現したい事を明確にするためかアレンジを作り込み、アンサンブルを重視しているところだ。この作品でもシンセのみならず、ギター、フルート、オカリナ(多分)などを使用し、さらにところどころボーカルも入り、楽曲としての完成度も追求されている。


この作品発表の翌年、グループはRadio Activityという作品を発表。基本的な音創りは継承しながらもボーカル比率が高くなり、1977年発表のTrans-Europe Expressでテクノ・ポップの先駆者にして第一人者となる。その後はThe Man Machine、Computer Worldなどから次々とヒット曲を生み出し、テクノ・ポップ全盛期を作り上げ、後進のバンドに多大なる影響を与え続けた。


面白い事に、Kraftwerkは最先端の機材を使用して最先端の音楽を作り続けたにもかかわらず、何故か当時から不思議とレトロな雰囲気を醸し出していた。それは音のみならず、ジャケットのデザインにもはっきりと現れている。これらは明らかに『狙って』やったことであろう。このアルバムのジャケット・デザインもモノクロ写真に彩色を施したようなものであったし、その後もこの方法論は継承され、彼らの音楽に影響を受けた後進のバンドのファッションにさえもその影響が見られる。


アウトバーン

アウトバーン

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1998/05/27
  • メディア: CD




ヨーロッパ特急

ヨーロッパ特急

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1999/09/29
  • メディア: CD



The Man-Machine

The Man-Machine

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Universal
  • 発売日: 1998/12/08
  • メディア: CD



Computer World: Remastered

Computer World: Remastered

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Mute
  • 発売日: 2009/08/20
  • メディア: CD



Radio-Activity

Radio-Activity

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Astralwerks
  • 発売日: 2003/02/11
  • メディア: CD



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Phaedra / Tangerine Dream [Ambient/New Age/Experimental]

確か、高校生2年生の頃だったと思う。愛読していた音楽雑誌、Music Lifeの広告ページにドイツのプログレッシブ・ロックとしてある作品が紹介されていた。宣伝コピーも忘れてしまったが、『ドイツのプログレ』という事のみが強烈なインパクトになって頭に残った。

当時はプログレの面白さに目覚め、EL&PYESPINK FLOYDKING CRIMSON等の斬新なアプローチに夢中になっていた頃だが、これらは全てイギリスのバンドである。「ドイツのプログレってどんなんだ?」と、興味を持った。

って、イギリスのプログレ・バンドだって様々なアプローチをしているわけであって、たった1作品を聴いただけで『ドイツのプログレ』を知ったことになんかならねぇだろ、と、今になれば思うわけだが。

ま、とにかくだ。

学校帰りにレコード屋に立ち寄ったところ、丁度件のLPを発見。悩んだ挙句、購入。自宅に帰り、期待に胸膨らませて親父のステレオでかけたのだが…


なんですか?これ…


Phaedra / Tangerine Dream

tangerine dream f.jpg

Edgar Froseを中心としたドイツの有名バンド、Tangerine Dreamの…何作目だっけ?多分、5作目。シンセサイザーによる自動演奏を導入した画期的な作品である。

前述の通り、購入当時は全く面白いと思えなかった。ま、シンセサイザー中心の音響は近未来的な感じで楽しめたが、(注:当時はシンセサイザーの音が聴けるだけでありがたかった時代である)いつまで経ってもボーカルはおろか、ギターもドラムも出てこないのである。なんだか曖昧な音は中空をたゆたうのみで、散発的にメロディーらしきものが現れるものの次に繋がっていかない…

そんなわけで、購入直後は「わけのわからんもん買っちまったぜ」と、苦々しく思い、ほとんど聴いてなかったのだが、しばらく経ってから思い出し、何回か繰り返し聴いているうちに面白く聴こえてきた。


はっきり言って、作曲を試行錯誤した跡は希薄。LP時代のA面をぶち抜く18分に及ぶ表題作には起承転結らしき展開はあるのだが、それよりも音響の妙がはるかに勝っている。特筆すべきはシンセによるビートの創出。淡々と繰り返される低音の短いフレーズの上に様々な音が参入し、多様な表情を見せる。さながら寒色の万華鏡を覗いているようだ。これは音響による擬似トリップ体験、と言ってもいいかもしれない。

MIDI(Music Instruments Digital Interface)機器を多用し、PCによってそれらをコントロールする自動演奏が常識化している今となっては稚拙に感じるかもしれない。もしかしたら、単なる音の垂れ流し、と感じる者もいるかもしれない。

が、この作品が録音された当時はシーケンサーなど一般に販売されていない。勿論、MIDI企画なんぞない。当然、パソコンなんぞない。コンピュータと言えば一部屋を占領するような機械で、おまけにディスプレイらしいディスプレイなんぞない。あったとしてもたった一行、80文字を表示するのが関の山。そしてシンセサイザーと言えば、壁のような操作パネルにおびただしいジャックが並び、そのジャックを繋ぎかえることにより音の出る回路を作っていた時代であり、デスクトップ・ミュージックという言葉なんぞ生まれてもいないはるか昔である。

この様な環境の中で、Tangerine Dreamは試行錯誤しながら「シンセサイザーによるビート」を生み出し、この作品を創ったのだ。これははっきり言って、シンセサイザーの可能性を実験的に検証した試み、いや、冒険と言っても良く、Tangerine Dreamはまさにシンセサイザーによるニュー・エイジ・ミュージックの先駆者なのだ。

この作品、発表から30年以上が経過し、電子楽器の性能が飛躍的に向上した現在でも、不思議な事にレトロな感じは受けない。これは音響にこだわって作品が創られているからだろう。

前述の通り、『楽曲』として聴くと物足りなさを感じる者もいるかとは思うが、その後のポピュラー・ミュージックとしての電子音楽にKraftwerkと共に多大なる貢献をした記念碑的作品。興味があったら聴いてみる事をお勧めする。


その後、シンセサイザーが楽器として成熟し操作が容易になり、劇的に小型化して機動性をも手に入れて以降のTngerine Dreamは…俺はパス。音創りにさほど苦労しなくなったせいか、メロディー志向が強まり、またそのメロディーに対する意識の陳腐さが露呈し、面白みが半減してしまった。個人的に勧められるのはこのPhaedra、続くRubyconと初のライブ盤となるRicochetまでである。


Phaedra

Phaedra

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ANTILLES/NEW DI
  • 発売日: 1995/02/27
  • メディア: CD



Rubycon

Rubycon

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Virgin
  • 発売日: 1995/02/27
  • メディア: CD



Ricochet

Ricochet

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Virgin
  • 発売日: 1995/02/27
  • メディア: CD



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Alina / Arvo Pärt [Ambient/New Age/Experimental]

Arvo Pärtはエストニアの作曲家。現代音楽の世界では巨匠の部類に入る、と思う。

正直言えば、俺はArvo Pärtについて語れる程詳しくない。作品もECMから発売されているCDを数枚聴いただけだ。
インターネットを駆使すればいくらでも情報は得られるのだろうが、そんなことすると純粋に音楽を聴けなくなるので、あえて止めておく。ただ、俺のおぼろげな記憶では、エストニアは旧ソ連崩壊の後独立したものの、ロシアとの国境問題、国内での民族問題を抱えている、いわゆる紛争地域だったはずだ。その事が作品作りに影響しているのかどうかは判然としないが、Arvo Pärtの作品は、Arbosにしろ、Tabla Rasaにしろ、Passioにしろ、快楽的な響きを意図的に排除したのではないか、とさえ思えるような威厳を感じさせる、というか、俺の知る限り、聴き手にある種の「試練」とでも言うべきものを突きつける厳しい作風が多い。

で、この作品であるが。

Alina / Arvo Pärt

alina.jpg

数年前、某ショップの現代音楽のコーナーで「Arvo Pärtの作品としては最も音数が少なく、癒し系とも言える」と言うような紹介のされ方をしていた。「癒し系のArvo Pärtだって?そんなんありか?」と疑念を抱きつつも購入したのであるが…


いやぁ、確かに癒されるわ。これは。


一応、収録曲を紹介。

1.Spiegel Im Spiegel
2.Für Alina
3.Spiegel Im Spiegel
4.Für Alina
5.Spiegel Im Spiegel

この通り、たった2曲で構成されている。楽章を分けて収録しているわけではない。Spiegel Im Spiegelなる曲が3回、Für Alinaなる曲が2回収録されているのである。それぞれの曲はテイクによって大きなアレンジが施されているわけではなく、印象は基本的に同じである。

1,3,5曲目のSpiegel Im Spiegelはピアノとバイオリン(3曲目はチェロ)により緩やかに、そして淡々と演奏される。大きな盛り上がりはない。ピアノが演奏しているのは4分音符のアルペジオと全音符のみ、バイオリンに至っては全音符のみのようである。これが10分続く。どこか温かみを感じる、牧歌的な曲調。テイクによっては部分的にピアノの装飾音(これも全音符)が1オクターブ下がったりしているが、注意して聴いていないと判らない。
そして2,4曲目に収録されているFür Alinaは、ピアノのソロにより演奏されている。非常に静謐な印象。こちらも部分的に装飾音が1オクターブ下がったりしているが、勿論注意して聴いていないと判らない。この曲も10分強ある。

多分、同じ曲でもテイクによって演奏者は異なっているのだろう。が、正直言ってよく判らない。演奏者の個性が出ないように意図的に作曲したのでは、とすら思う。


この作品、同じく現代音楽の巨匠である、Steve ReichやTerry Rileyの手法に代表されるような短いフレーズの繰り返しはない。そういった意味では「これってミニマルじゃないよな」と思う人もいるかもしれない。しかし、俺に言わせれば、これもまたミニマリズムの到達点の一つであることは間違いない(と思われる)。

そもそも、だ。ミニマル・ミュージックとは、「短いサイクルで同じフレーズを繰り返し、重層化させた」音楽とは限らない。前述の通り、Steve ReichやTerry Rileyは「繰り返し」という手法により音そのものが根源的に持つ力を検証した。そしてArvo Pärtは作曲行為を重要視しながらも、音数を削れるとこまで削って最小限に絞込み、音の持つ力を検証したのではあるまいか?アプローチの仕方こそ違いはあるが、そこには陳腐化した音楽実験を古典的手法によって見直す実直さが聴いて取れる。


異論もあるだろう。しかしながら、歴然たる事実としてこれだけは言える。

この作品は存在を主張しない。にもかかわらず、たとえようも無く、美しい。そして、何度聴いても飽きる事がない。

そういえば、「もし無人島にCDを1枚だけ持っていくなら」という究極的な選択を迫る言葉遊びが流行った時期があった。当時の俺はBrian EnoのMusic For Airport以外には考えられなかったが、このAlinaを聴いてから、どちらにするべきか悩んでいる。って、そんなことになったら大変だけどね。


Alina - Arvo Part

Alina - Arvo Part

  • アーティスト: Arvo Part,Alexander Malter,Sergei Bezrodny,Vladimir Spivakov
  • 出版社/メーカー: ECM
  • 発売日: 2000/02/01
  • メディア: CD



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Carousel / Robin Guthrie [Ambient/New Age/Experimental]

重ねて言うが、俺はCocteau Twinsが好きである。アルバムはほとんど所持している。近年発表されたBBCライブまで持っている。が、Cocteau Twinsはおびただしい数のシングル盤を発表しており、これらのかなりの曲がアルバム未収録のようである。
数年前にアルバム未収録の曲を全て集めた作品が(確かボックスセット)発売されたが購入を見送った。これを入手すれば一発で決着がつくのだが、俺は少しずつシングル盤を集めていく選択肢を採択した。一気に何十曲も同じバンドの曲を入手しても消化しきれず、聴いている途中で飽きてしまう可能性があるからだ。せっかく好きなバンドなのだから、少しづつ楽しみたいのだ。

これはCocteau Twinsのギタリスト、Robin Guthrieの最新(多分)ソロアルバム。

Carousel / Robin Guthrie

robin.jpg

この人は本当に精力的に活動している。Cocteau Twins解散以降、ソロ作品、Harold Budd等のアーティストとの共同名義作品、新しいプロジェクトViolet Indianaにとどまらず、様々なアーティストの作品にゲストとして首を突っ込んでいる。

前作の3:19は映画のサントラ盤ということもあってか、心地よい音ながらもいまいち消化不良気味、というか、創り込んでいない印象を受けた。それでもRobin Guthrieの真骨頂とも言える透明感のあるサウンドはそこそこ魅力的であった。

で、肝心のこの作品。奥に引っ込んだドラム、ルート音を淡々と奏するベース、わずかばかりのキーボードの上に、クリーン・トーンのギターが注意深く配置されていく。いわゆるロック・スピリットを感じさせるソロらしいものはほとんど聴かれない。相変わらずである。ほとんど全ての楽器に過剰なまでに深くリバーブがかけられており、これが現実離れした浮遊感に一役も二役もかっており、どこまでも醒めきった印象を与えている。「まずリバーブありきで作品創りをしているのではないか?」と感じるほどだ。多分、Robin Guthrieはリバーブを「音場に広がりを与えるエフェクター」としてではなく、ほとんど楽器の一部、として捉えていると思われる。

こう整理して書くと、「Cocteau Twinsとどこが違うんじゃい!」と思う。多分、この音にElizabeth Fraserのボーカルが乗れば中期以降のCocteau Twinsにそっくりになるはずだ。「せっかくだから誰かに歌わせれば良かったのに」などと思ってしまう。

ま、心地いい音ではあるが、進歩的な音ではない。ある意味、「ああ、Robin Guthrieらしいな」と、安心して聴くことは出来る。最先端の機材に極度に依存し、こけおどし的な音響を使用していないのは好感が持てるが、決定的な欠点がある。
曲があまりにも短いのである。ほとんどの曲が2、3分代。「ま、気持ち良いからいいか」と、曖昧模糊とした音に身を任せようと思っていると中途半端に終わってしまうのである。なんとももどかしい。だいたい、今どき10曲で37分っていったいどうなのよ?「これって、もしかして3:19のアウト・テイク集なんじゃねぇか?」などと思ってしまう。

これはちょっとまずいよなぁ。

特に印象に残る曲があるわけでもなく、どれもこれも似通ったようなアレンジ、そして音像。これだったら繰り返しでもいいから一曲を長くして欲しかった。
音自体は魅力的であり、プレイ・スタイルも確立されているわけであるからして、ワン・パターン、もしくはマンネリという揶揄は意味がない。しかし、聴き手を圧倒するようなテクニックや音響で勝負しないのだったら、もっと聴き手の立場に立って考えるべきだったのではないか。

好きなアーティストなだけに残念である。次の作品に期待…していいのかな?う~ん…


Carousel

Carousel

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Darla
  • 発売日: 2009/09/01
  • メディア: CD



3:19 Bande Originale Du Film

3:19 Bande Originale Du Film

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Darla
  • 発売日: 2008/10/07
  • メディア: CD



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