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GAMELAN SEMAR PEGULINGAN [ガムラン]

前回に引き続き、ガムランである。

東京地方は桜が狂い咲き。俺はこの時期になると毎年のようにGunung Jatiの「耽美と陶酔のガムラン」を聴き続けることになるのだが、今年はこんなのを加えてみた。


Gamelan of the love god GAMELAN SEMAR PEGULINGAN

gunung jati  nonsuch 2.jpg

これも前回紹介したMusic from the Morning of the Worldと同じ、NONSUCH EXPLORERからの発売。初版は1972年。録音場所は、Teges Kanyinan, Pliatan, Baliとのみあり、楽団の名前は記載されていない。が、楽団の主要メンバーとして、I Made GrindamとI Made Rubahが名前を挙げられている。と、言う事は、これは将来的にGunung Jatiに繋がって行く楽団であることは間違いない。使っている楽器のセットも同じもののようだ。

元々この楽団が使用している楽器群は、マンダラ王家が所有していたSemar Pegulinganのセットを、当時バリでフィールドワークを行っていたカナダ人の音楽家、Colin Macpheeが借り受けたもので、Macpheeの発案により調律を変え、交流のあった音楽家、I Made Rubah達を中心に結成した楽団に使わせていたもののはずだ。
日本盤の解説書を読んで初めて知ったのだが、Colin MacPheeが帰国後、楽団は活動を止めてしまったそうだが、この作品のレコーディングがきっかけかどうかは定かではないが、長い休眠期間を経て再び活動を始めたらしい。それにしても、Colin MacPheeが帰国したのが1939年とのことだから、解説書が正しければ30年近くは活動していなかった事になる。ま、中心メンバー以外は相当数世代交代しているんだろうが。

で、肝心の内容だが、これがまた素晴らしい!ダイナミックな抑揚がありながらも実に実直な印象な演奏。楽器の音響的特徴と相まって、独特な退廃的雰囲気を作り出している。

収録されているのは以下の6曲。

1. Tabuh Gari
2. Gambang
3. Tabuh Pisan
4. Barong
5. Sinom Ladrang
6. Legong Keraton : Playon

日本盤のライナーには個別に解説がなされているので全てに言及することは避けるが、2曲目に収録されているGambangとクレジットされている曲は、I Wayan Lotring作曲の、現在ではGambang Kutaと呼ばれる事の多いあの名曲である。また、4曲目のBarongとは、バロン・ダンスの抜粋などではなく、これまたI Wayan Lotring作曲の名曲、Liar Samasである。おそらく、バロン劇の序曲として演奏されることが多いので、曲名の聞き取り調査の時にコミュニケーション能力不足が災いして齟齬が生じ、このような名前でクレジットされることになったものだと思われる。勿論、Bebarongan編成で演奏されているため、との仮説も成り立つが、もしそうだとしたら、同じくBebarongan編成で演奏されている3曲目のTabuh PisanがBarongという名前でクレジットされていないことの説明がつかない。あ、もしかしたら、楽団の連中、30年近く演奏していなかったせいで曲名忘れちゃったのかも。なんか、ありそうだなぁ。

音質面においては、さすがに1970年代初頭の現地録音なので、超良好、とまでは言えない。若干、音圧が足りないような気がしないでもないが、元々Semar Pegilinganは音圧で勝負するようなタイプの楽器群ではないし、このバランスに不満は感じない。あえて残念な点を挙げるとするなら、「耽美と陶酔のガムラン」が醸し出していた、肌にねっとりとまとわりつくようなバリの夜のあの熱気や湿度感が感じられないところだ。まぁ、そもそもこの録音が夜間行われたとも思われないのだが、音像に薄いベールがかかってしまっているような印象を受ける。
とはいいつつ、じっくりと鑑賞するに足りる十分なレベルを保っており、何よりもあの悪魔的な魅力を持つGunun Jatiの音であることに間違いない。勿論、これよりも先に「耽美と陶酔のガムラン」を聴くべきだが、この作品もガムラン愛好者は必聴であることに変わりはない。

そして何よりも、この楽器群で演奏されるセミ・クラシカルな曲の表情が、桜の花弁がはらはらと舞い散る風景に完璧にはまるのだ!その視覚と聴覚に訴える相乗効果は圧倒的、かつ絶大であり、狂おしいまでに美しい、と言っても決して過言では無い。

さぁて、今日はこいつをiPodで聴きながら夜桜見物と洒落込むか。




≪バリ≫バリのガムラン2~ガムラン・スマル・パグリンガン

≪バリ≫バリのガムラン2~ガムラン・スマル・パグリンガン

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2013/11/20
  • メディア: CD


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