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Mark Kozelek & Desertshore [Rock]

さて、本日発売となったMark Kozelek & Desertshore名義の作品。

Red House Painters解散後のMark Kozelekはソロ活動と平行し、自身のバンド、Sun Kil Moonを立ち上げ、Red House Painters路線、即ち、アコースティック・ギターを多用しつつも、必要があれば音を歪ませたエレクトリック・ギターも使用し、バンドらしい音を聴かせていた。が、徐々にアコースティック比率が高くなり、気がつけば本人しか録音に関わっていない作品、それも使用楽器はアコースティック・ギターのみの作品もSun Kil Moon名義で発表するようになり、ついにはソロ活動とバンド活動との境界線さえ曖昧になっていた。最新作、Among the Leavesでは一曲のみ、エレクトリック・ギターを使用し、久しぶりに、以前の「心地よいダルさ」を聴かせていたが、たった一曲ではあまりにももの足りなかった。

ところが、先日このブログでも取り上げた、後期Red House Paintersでギターを担当していたメンバーの新プロジェクト、Desertshoreの2作目となるDrawing of ThreesにはなんとMark Kozelekが半数以上の曲でゲスト参加、Red House Paintersを彷彿とさせる音世界が繰り広げられていた。が、それはMark Kozelekが参加した曲のみに限定されていた。しかし、今回は作品自体がDesertshoreとMark Kozelekの共同名義。こうなるとRed House Paintersが体現していたSlow/Sad Core路線を期待するなという方が無理ってもんだろう。

と、言う訳で、たった今、Amazonから届きました。

Mark Kozelek & Desertshore

mark kozelek and desertshore 2.jpg

聴く前にとりあえずジャケットに記載されているクレジットを見ると、Desertshoreのギターとピアノの二名以外はMark Kozelekとドラマーのみのようだ。ゲストとして1曲でバックボーカルが、ベースが2曲で参加しているようだが、あれ?どうなってんだ?あ、Mark kozelekの担当がボーカル、ベース、ギターになっている・・・おまけに、作曲はDesertshoreの2名のようだ。と、言う事は、Mark Kozerekは曲に関わっていないってこと?ちょっと嫌な予感がする。

まぁ、いい。じゃぁ、聴きながら、第一印象を書き連ねて行きます。

一曲目。のっけから意外にも明るい雰囲気のイントロのワルツ。細かいギターのパッセージは予想外。Mark Kozelekが珍しく力強い歌唱を聴かせる。ピアノとクリーントーンのギターの絡み始まったが・・・あれ、フェードアウトしちゃった。もっと引っ張って欲しかったなぁ。

次!おお、いい感じの頭がつぶれたギターの音。Song For Bulue Guitarの頃の音、曲を思い起こさせる。意外にも力強いMark Kozelekのボーカル。サビが結構いいなぁ。曲調はちょっと元気が良すぎるかなぁ・・・あ、ギターがディレイを使って効果音を出しているが、これはいらないな。

3曲目。ギターの考えられたシーケンスのフレーズ。途切れないボーカル。ほとんど展開しない曲。う〜ん、なんだろ?この違和感。このスタイルだったらMark Kozelekがボーカルである必要ないんじゃないか?あ、後半、シンセがオブリガート入れて来たけど、ギターとうまく絡んでない。

さ、次!あ、また、ミニマリズムを意識したと思われるシーケンシャルなギターのフレーズ。また、Mark Kozelekが必要以上に頑張っちゃっている。まぁ、この早めのテンポじゃ仕方ないが、やはりこの人、雰囲気だけじゃなく、かなりボーカルが巧いんだな。あ、曲が盛り上がって来た・・・と思ったらフェードアウトかい。

5曲目。のっけからボーカルが大活躍だ。演奏は実直、かつ無難な感じ。

6曲目。おお〜、アコギの絡みが美しい。この曲もMark Kozelekがかなり頑張っている。この感じ、最近のMark Kozelekのソロ・ワークのようだ。この曲には他の音は必要ない。多分、このまま他の楽器は参入せずに終わるんだろうな。あ、予想通りだ。

7曲目。来た来た!いかにもSlow Core調の始まり方。ボーカルも生々しいながらもつぶやくようなあの声だ。手数の少ないオルガンがサイケデリックな雰囲気を醸し出している。うわー、この展開部分、かっこいい。ただコードが変わってギターがジャラーンと流すだけなのに鳥肌立ったぜ。ギターも単調なフレーズをこらえて真面目に演奏しているなぁ。かなり好印象。

次も期待しちゃうぞ。あ、メジャースケールながらも、後期Red House Paintersを思い起こさせるような曲調。ゆったりとしたテンポ、Mark Kozelekも前半と比べると落ち着きを取り戻している。この曲、気持ちいいなぁ。あ、展開部分で今まで聴いた事の無い裏声を使っている。表現にも充分情感が入っている。

もうアルバムも残すところあと2曲か。おっと、なんだなんだこの曲は。エレクトリックギターこそ使っているものの、やたら軽快なC&Wな曲調。バンジョーの音があってもおかしくないなぁ。バックの単調なオルガン、いらねー。これだったらいっその事ホンキートンクなピアノにするとか。あ、いい加減なところで唐突に終わるなよ。無理矢理だろ、これ。

いよいよ最終曲。ピアノのイントロに導かれてMark Kozelekの表情豊かなボーカルが乗る。う〜ん、ピアノとボーカルが微妙に絡んでいない。決して悪い曲じゃないんだが・・・あ、バックのファルセットもKozelekの声だ。あれ?4分が経過したのに、ピアノとボーカルしか聴かれない。このまま押し通すつもりかな?6分経過。どうやら、そのようだ。静謐な印象はなかなか魅力的ではあるのだが・・・あ、最後だってのに余韻を残さずに中途半端にカットオフしちまいやがった・・・


う〜ん・・・予想が外れてしまった。いや、こちらの一方的な期待に応えてくれていなかった、と言うべきか。


決して悪い作品ではない。それは間違いない。しかし、なんと言うか、全体的に詰めが甘いような気がする。いや、作り込めばいいってもんじゃないし、ゴージャスに音を重ねればいいってもんでもない。そんなこと、この作品に興味を持った者なら誰一人として求めていないだろう。しかし、決定的な欠点は見当たらないにもかかわらず、「もうちょっといい感じに出来たんじゃないだろうか?」と思わせてしまう。だから、「詰めが甘い」としか、言いようがないのだ。コンセプトをまとめる段階で、もうちょっと調整が必要だったのではないかなぁ・・・

俺が求めていた、Red House Paintersに通じるような曲も数曲聴かれるのだが、中途半端に収録曲にバリエーションがあり、統一感に欠ける感は否めない。アルバム全体を通して聴いてみて、期待していた「退廃の美学」が感じ取れなかったのは残念だが、その一方で、Mark Kozelekの表現力が全く衰えていないどころか、以前よりも増していることに驚かされた。これは収穫。勿論、Mark Kozelekのファンは一定の満足を得られることと思うし、俺自身も新たな魅力を発見した。あ、そうだ。過日、このブログでも取り上げた、Mark KozelekとJimmy LaValle共作名義の、Perilis from the Seaが好きな人はこの作品を喜んで受け入れる事が出来ると思う。


このところ佳作続きのMark Kozelek、今の緩いスタンスを否定するものではないが、個人的にはそろそろ「傑作!」と、両手離しで歓迎出来る作品を望みたい。



Mark Kozelek & Destershore

Mark Kozelek & Destershore

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Caldo Verde
  • 発売日: 2013/08/20
  • メディア: CD



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