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Reggatta de Blanc / The Police [Rock]

前回取り上げたNina HagenのUnbehagenと同じ1979年発表、The Policeの2作目である。これは誰が何と言おうと名盤。もし、異論があるなら好き嫌い以外の明確な根拠を提示しろって言いたいくらいの名盤。

Reggatta de Blanc / The Police

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このバンドははっきり言って、ズルい。New Waveの『ぽっと出バンド』のふりして、その実は各メンバーに立派なキャリアがある。ボーカル、ベースのStingはジャズ・バンドでベースを弾いていたし、ギターのAndy SummersはかのThe Animalsのメンバーだったし、ドラムのStewart Copelandに至ってはプログレ・バンド、Curved Airで叩いていた。つまり、百戦錬磨の達人が集って組んだバンドなのである。

この作品、デビュー作と同様、大胆にレゲェのリズムを取り入れつつも咀嚼し、音の『間』を上手く聞かせる。彼らの過去の音楽活動にレゲェは含まれていないと思われるので、相当研究してバンドの音を創ったはずだ。また、空間的広がりを持たせる音響処理をしながらも必要以上に音圧を上げず、全体的にひんやりとした耳ざわり。これは魅力的だ。

収録曲は殆どが素晴らしいが、中でもヒット曲、フリーキーなドラムと考え抜かれたギターが印象的なMessage In A Bottle、静かに始まりながら徐々に盛り上げていくテンションのコントロールが行き渡った表題作Reggatta De Blanc、疾走感溢れるIt's Alright For You、Andy Summersの冒険心がスリリングなBring On The NightにDeathwish、これまたAndy Summersのミュートしたギターと開放感に満ちたコード・ワークが光るWalking On The Moon、そして…って、おいおいおい、全てが凄いじゃないか。

コンプレッサーとディレイを効果的に使った透明感のあるAndy Summersのギターは秀逸だ。彼はディストーションで威圧感のある音を出すような安易な真似はしていない。Bring On The NightやNo Time This Timeのソロではナチュラルなオーバー・ドライブが聴かれるが、それ以外はほぼクリーン・トーンで通している。
ギター弾きなら解ると思うが、実はエレクトリック・ギターという楽器は音を歪ませると非常に弾き易いのだ。端的に言えば、誤魔化しがきく、とでも言ったらいいだろうか。しかし、Andy Summersは、「いくら弾き易かろうがなんだろうがこのバンドの目指す音に威圧的なディストーションは不要」と、判断し、茨の道を選んだのだろう。素晴らしい職人魂。
フレーズも相当工夫している。特にMessage In A Bottleのメイン・フレーズにその姿勢ははっきりと現れている。実際に弾いてみるとわかるのだが、とんでもない指使いをしている。普通だったらあんな苦労をせずにもっと楽な方法を選ぶと思うのだが、ギター職人魂はそれを潔しとしなかったのだろう。勇猛果敢に、かつ正確無比に、しかし苦労しているなんて雰囲気はおくびにも出さずに弾いている。

すげぇよ。恐れ入った。

また、忘れていけないのはStewart Copelandのドラム。軽快な音ながらおっそろしい手数で正確無比に、かつ自由自在に叩きまくる。何がいったいどうなってんだか解らんが、素晴らしいタイム感とセンス。全編通してほとんどドラム・ソロ。が、曲を逸脱するような事は一切無い。これはもう超人である。彼の技術は高く評価されている。例えばPeter GabrielのSoという作品では1曲目のRed Rainでゲストとしてハイハットのみを担当しているが、一聴して彼の仕事と解る。

ハイハットのみで誰だか解るんだぜ?どれだけタイムの取りかたに誰にも真似できない程の個性があるかわかろうってもんだ。

これらのバカテクをフォローするためか、もしくは歌いながら演奏することを前提としたためか、Stingのベースは若干控えめな印象であるが、それがまた必要以上に音を埋めすぎず、いい結果が出ている。また、ちょっとかすれ気味の高音に寄ったボーカルも魅力的である。

総じて、高度な技を持ったミュージシャン・シップの高い連中が時代の流れに逆らわず、かといって必要以上に迎合せず、旺盛な探究心で比較対象すら無いような素晴らしい結果を出した傑作。絶対的名盤保証。The Policeの作品は全て聴いたが、俺はこのReggatta de Blancが一番好きである。このブログを読んでいる者は間違いなくこの作品を聴いていると思うが、万が一、不幸にも聴いてない者は今からでも遅くない。絶対に聴くべきだ。時代に淘汰されることのない素晴らしい音楽がここにある。


実は、The Policeの初来日公演を一足違いで見逃してしまった苦い思い出がある。当時、俺は某芸能プロダクションに出入りする、いわゆる『デビュー予備軍』だった。で、ある日事務所に顔を出すと、スタッフ達がえらく盛り上がっていた。

「おはようございます」
「あ、何で昨日来なかったの?」
「いや、来ましたけど?」
「ああ、そうか…君が帰った後だったんだ…」
「何がですか?」
「実はね、The Policeの来日公演を仕切っているプロモーターから連絡があって」
「はぁ」
「招待されて観に行ったんだよ」
え?
「それもバック・ステージから」
うそぉ!
「いやぁ、凄かったよ。ドラム。もう最初から最後までドラム・ソロ」
「…」
「もう凄い手数でね、速すぎてスティックが見えないくらい」
「…」
「残念なことしたねぇ…」
「…」
「いやぁ、あれは絶対に見ておくべきだったよ。うん。」
「…もしかして俺のこといじめてます?」

今思い出しても、く、悔しい…


Reggatta de Blanc

Reggatta de Blanc

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Universal Japan
  • 発売日: 2003/03/04
  • メディア: CD



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コメント 2

石原茂和

そうかあ.
必要以上に音圧を上げず、全体的にひんやりとした耳ざわり
これですか.

彼ら,アルバムを作るときに,当時としてはめずらしく,
わりとスタジオにこだわりましたよね.
そういう理由もあったのでしょう.
ミキサーとか,部屋の鳴りとか.
by 石原茂和 (2010-03-27 11:30) 

lagu

そうです。アンサンブルを創り込み、音響にこだわりながらも音圧を上げなかったところがこの作品を横溢する独特な雰囲気に繋がっているのではないか、と。
by lagu (2010-03-27 12:05) 

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