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世界遺産、古琴 [民族音楽]

風邪ひいた。

昨日、やたらくしゃみが出るので、「花粉症か?」と思っていたのだが、明け方寒気で目が覚めた。すぐさま薬を飲んだが、なんだかぼーっとしている。これから熱が出そうな予感…

ああ、外は桜が満開だってのに…

毎年、桜の時期になると俺はGunung Jatiの『耽美と陶酔のガムラン』を繰り返し聴く。以前、神田川の上流近くに住んでいた時には、桜の時期になるとちょっと遠回りになる神田川沿いに通勤ルートを変えて、iPodでSekar MasやLegong Lasemを聴きつつ、両岸に咲く桜を愛でながら自宅から最寄り駅まで往復したものである。特に散り始めの桜の美しさと、時代を経て枯れきったGunung Jatiの演奏するSemar Pegulinganの音色との相乗効果は信じがたい程で、それはもう、狂おしいまでに美しく、はらはらと舞い落ちる花弁の中、ゆっくりと歩みを進め、時として立ち止まって桜の木を見上げていたものである。


実はこれとは別に、桜の木の下を歩くときにお気に入りのCDがある。

中国の古琴~姚公白

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古琴は非常に起源が古い中国の楽器で、書画などと並んで文人のたしなみとされたらしい。で、あるからして、当然独奏が基本である。元は単に琴と呼んでいたらしいが、後に様々な種類の琴が作られるようになり、これらと区別するために古琴と呼ぶようになったそうだ。古琴は楽器構造もさることながら、その音楽文化は西洋音楽の影響を全く受けずに現代に受け継がれているそうで、世界遺産にも登録されている。

肝心のこの作品の内容であるが、前述の通り独奏である。意外にも太くて膨らみのある音色。「文人のたしなみ」として発展した、ということが物語るように、非常に思慮深い演奏。要所ではハンマリング・オンやハーモニクス、弦を引っ張って離し、楽器本体にぶつけて強いアタック音を出したりと、音色にバリエーションを与えている。が、一聴するとアドリブのように聴こえるこれらは演奏者の自由裁量で行っているのではなく、曲によって厳密に奏法が決められているようである。たしかに世界遺産が自由に形を変えてしまうのでは遺産にならないわけであって、これは当然といえば当然である。

曲は全てが素晴らしい。演奏も素晴らしい。時として流麗、時として軽妙。音の散文詩といった印象で、全体を通して格調の高さを感じさせる。かといって(聴いている分には)敷居が高い印象は無く、普通に聴いていて心地よく、何度でも繰り返して聴ける。このCDに出会ってから古琴に興味を持ち、何枚か古琴のCDを購入したが、俺はこの作品が一番好きである。


実は数年前、本気でこの楽器をやってみたく、何軒か中国の輸入楽器を扱う店をはしごした事があるのだが、数台発見した古琴は弦が張ってなかったり、張ってあっても一部が欠損していたり、楽器自体が壊れていたり、と、一台として納得のいくコンディションの物が無く、その時は購入を諦めた。が、とりあえず音を出してみたく、弦が一部欠損している個体を弾かせてもらった。

実際に触ってみて驚いたことがいくつか。先ず、調弦が非合理的なほど難しい。一応、各弦毎に糸巻きもあるのだが、これは微調整しか出来ない。弦を支点に結んだ時点でほぼ完全に調律されていないといけないのである。これは至難の業である。さらに、一般の琴と異なり、コマが無い。つまり、指で弦を押さえ、音程を確保する構造であり、当然、1本の弦に無数の音程が割り当てられている。さらに、演奏者から見て手前が高音弦、奥が低音弦。もう、大混乱であった。が、なかなか面白く、楽器屋の迷惑も顧みずしばらくあーでもないこーでもないと試行錯誤していると、中国人の店長が話しかけてきた。

「そんなに古琴をやってみたい?他にもお勧めの楽器があるんだけど…」
「いや、俺がやってみたいのは古琴だけです」
「二胡はウチでも教えられるんだけど…古琴はあまり人気がないんですよね。古琴を少しでも演奏できる人は関東近郊には48人しかいません」
「なんで全部把握できるんですか?」
「教えられる先生が二人しか居なくて、その先生の生徒の数が48人だから」
「あ~、そうか。自己流は認められないからですね」
「今、ウチには完璧なコンディションの古琴は無いんだけど、今度仕入れに行ったときに調達してきますよ」
「頼みます。いいのが手に入ったら連絡を下さい」

と、言ったきり2,3年経つが、まだ連絡が無い…


中国の古琴~姚公白

中国の古琴~姚公白

  • アーティスト: 姚公白
  • 出版社/メーカー: キングレコード
  • 発売日: 2008/07/09
  • メディア: CD



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