TUBEWAY ARMY [Rock]
実は、俺は『隠れ』Gary Numanファンである。
現在の彼の活動は耳に届いてこないが、テクノ・ポップ全盛時代はCARSという曲をヒットさせ、一世を風靡。複数のシンセサイザーを中心に据えたアンサンブル、意外にもわかりやすいメロディー、そしてエキセントリックな歌唱などで異彩を放っていた。
が、自らを「アンドロイドである」と言い、ステージではエナメル素材を多用した奇抜なコスチュームを着用、そしてあまり似合っているとは言い難いメイクを施していた為か、『色物』扱いを受けていた。さらに、アンドロイドのはずなのに実生活の親孝行ぶりや、飛行機の免許を取得したりと、人間臭いところが写真入りで報道されたりしたのが災いし、ロッカーとして中途半端な印象を与えていたことも否定出来ない。そんなこんなで「Gary Numanのファンである」と公言することは(少なくとも俺の仲間内では)はばかられていたりした。
これはそのGary NumanがTubeway Armyというバンドを従えての記念すべきデビュー作。数日前、思い立って久しぶりに聴いてみた。
Tubeway Army / Gary Numan & Tubeway Army
この作品、意外にもギタリストが主導権を取って曲作りをしているのが明らかにわかる。曲によってはそれなりにシンセサイザーも使用しており、後のテクノ・ポップの萌芽も感じさせるが、出来上がりはギター・オリエンテッドなロック、と言われても反論出来まい。さらに、そのギターのアプローチが…なんというか、ハードロック(それもへなちょこ)の域から脱していないんだよなぁ…
そして、この作品の最大の白眉(?)は、ドラマーの犯罪的なまでのリズム感の無さである。とにかく、笑えるほどリズムが乱れる乱れる。普通のリズム・キープの局面でも乱れる。フィル・インを入れようものならほぼ確実にリズムが流れる。見事なもんである。このへたくそさ加減は尋常じゃない。「次はいつ乱れるか?」と、ハラハラドキドキである。ある意味、スリリング。しかし、よくぞプロデューサーはOKを出し、レコード会社は発売する気になったものである。
いやぁ、なんつーの?これ。
しかし、だ。これが面白いんだな。なぜか。
勿論、前述の通り、演奏は不手際が多い。が、Gary Numanのエキセントリックなボーカルは唯一無二な雰囲気を醸し出している。そして、演奏は稚拙、曲の完成度もアンサンブルも未熟ながらも、「何か新しい音を作り出したいんだ!」という気概が音から感じられる。聴いていて、笑いを誘われながらも、なにか熱いものがこみ上げて来るのだ。
Punk Rockの初期衝動、エレクトロニクスに対する意識の高まり。それらを融合したい試みと、試行錯誤の結果の失敗、わずかばかりの成功。そして理想的な形で具現化出来ないが故の苛立ち、いや、理想形が無いが故の葛藤。それらの思いがバンドの意志とは(多分)無関係に聴き手にフィード・バックされる。
俺、これ、好きかも… も、もしかして、これって名盤?
この作品の発表は記録によると1978年。Ultravoxが名作、Systems Of Romanceを発表した年と同じである。完成度を比べると、残念ながらTubeway Armyの負けは明らかである。その後、バンドは飛躍的な技術的進歩を遂げ、間髪入れずにReplicasという佳作を発表、高い評価を得た(このことから、多分、デビュー作は録音してからしばらくお蔵入りになっていたのだと思う)。そして翌年、ソロに転向したGary Numanは名曲、Carsを含むThe Pleasure Princepleで確固たる地位を築いたように見えた。が、ほぼ同時期にイメチェンしたJapanがQiet Lifeを発表し、大量購買層である婦女子に圧倒的人気を博してしまった。さらに翌年には比較対象に取り上げられがちだったUltravoxもViennaという傑作を発表。相次ぐライバルの健闘にGary Numanは苦戦しながらもMick KarnやBill Nelsonと組んで、かなり良質な作品をコンスタントに発表したが、テクノ・ポップの衰退と共に徐々に忘れ去られていった…
しかし、俺はあえて言う。Gary Numanはその業績、後進に与えた影響を考えるとあまりにも軽く扱われている、と思う。彼の評価対象がCarsの一曲のみだったとしても、だ。
再評価の兆しは…残念ながら俺の知る限り無い。
現在の彼の活動は耳に届いてこないが、テクノ・ポップ全盛時代はCARSという曲をヒットさせ、一世を風靡。複数のシンセサイザーを中心に据えたアンサンブル、意外にもわかりやすいメロディー、そしてエキセントリックな歌唱などで異彩を放っていた。
が、自らを「アンドロイドである」と言い、ステージではエナメル素材を多用した奇抜なコスチュームを着用、そしてあまり似合っているとは言い難いメイクを施していた為か、『色物』扱いを受けていた。さらに、アンドロイドのはずなのに実生活の親孝行ぶりや、飛行機の免許を取得したりと、人間臭いところが写真入りで報道されたりしたのが災いし、ロッカーとして中途半端な印象を与えていたことも否定出来ない。そんなこんなで「Gary Numanのファンである」と公言することは(少なくとも俺の仲間内では)はばかられていたりした。
これはそのGary NumanがTubeway Armyというバンドを従えての記念すべきデビュー作。数日前、思い立って久しぶりに聴いてみた。
Tubeway Army / Gary Numan & Tubeway Army
この作品、意外にもギタリストが主導権を取って曲作りをしているのが明らかにわかる。曲によってはそれなりにシンセサイザーも使用しており、後のテクノ・ポップの萌芽も感じさせるが、出来上がりはギター・オリエンテッドなロック、と言われても反論出来まい。さらに、そのギターのアプローチが…なんというか、ハードロック(それもへなちょこ)の域から脱していないんだよなぁ…
そして、この作品の最大の白眉(?)は、ドラマーの犯罪的なまでのリズム感の無さである。とにかく、笑えるほどリズムが乱れる乱れる。普通のリズム・キープの局面でも乱れる。フィル・インを入れようものならほぼ確実にリズムが流れる。見事なもんである。このへたくそさ加減は尋常じゃない。「次はいつ乱れるか?」と、ハラハラドキドキである。ある意味、スリリング。しかし、よくぞプロデューサーはOKを出し、レコード会社は発売する気になったものである。
いやぁ、なんつーの?これ。
しかし、だ。これが面白いんだな。なぜか。
勿論、前述の通り、演奏は不手際が多い。が、Gary Numanのエキセントリックなボーカルは唯一無二な雰囲気を醸し出している。そして、演奏は稚拙、曲の完成度もアンサンブルも未熟ながらも、「何か新しい音を作り出したいんだ!」という気概が音から感じられる。聴いていて、笑いを誘われながらも、なにか熱いものがこみ上げて来るのだ。
Punk Rockの初期衝動、エレクトロニクスに対する意識の高まり。それらを融合したい試みと、試行錯誤の結果の失敗、わずかばかりの成功。そして理想的な形で具現化出来ないが故の苛立ち、いや、理想形が無いが故の葛藤。それらの思いがバンドの意志とは(多分)無関係に聴き手にフィード・バックされる。
俺、これ、好きかも… も、もしかして、これって名盤?
この作品の発表は記録によると1978年。Ultravoxが名作、Systems Of Romanceを発表した年と同じである。完成度を比べると、残念ながらTubeway Armyの負けは明らかである。その後、バンドは飛躍的な技術的進歩を遂げ、間髪入れずにReplicasという佳作を発表、高い評価を得た(このことから、多分、デビュー作は録音してからしばらくお蔵入りになっていたのだと思う)。そして翌年、ソロに転向したGary Numanは名曲、Carsを含むThe Pleasure Princepleで確固たる地位を築いたように見えた。が、ほぼ同時期にイメチェンしたJapanがQiet Lifeを発表し、大量購買層である婦女子に圧倒的人気を博してしまった。さらに翌年には比較対象に取り上げられがちだったUltravoxもViennaという傑作を発表。相次ぐライバルの健闘にGary Numanは苦戦しながらもMick KarnやBill Nelsonと組んで、かなり良質な作品をコンスタントに発表したが、テクノ・ポップの衰退と共に徐々に忘れ去られていった…
しかし、俺はあえて言う。Gary Numanはその業績、後進に与えた影響を考えるとあまりにも軽く扱われている、と思う。彼の評価対象がCarsの一曲のみだったとしても、だ。
再評価の兆しは…残念ながら俺の知る限り無い。
申し訳ない..Tubeway Armyは聴いていません.
ソロになってからです.
Gary Numanもういちど聴いてみないといけないなあ
妙なスケールでメロディ作ってたりしますか?
by 石原茂和 (2009-04-05 07:00)
石原さん、こんにちは。
Gary Numanはテクノ・ポップの理想形の一つを作った、という意味で評価されると思います。
妙なスケールは俺の知る限り使ってないと思うなぁ…非常に解りやすい作り方をしてますよね。
by lagu (2009-04-05 09:17)
YouTubeにあったこれ,
そのときのメンバーでしょうか?
ずいぶん,まともに聴こえますが,,
http://www.youtube.com/watch?v=Uu6MDdxBork
いま聴いてもオリジナリティ高いですね..
意外と,Gary Numanのエキセントリックなボーカルスタイル
が,他に大きく影響を与えていると思いました.
by 石原茂和 (2009-04-05 23:14)
う~ん、実はメンバーの顔は識別していないので、正直わかりません。
すごくきっちりとまとまった演奏ですよね。ただし、やっぱりギターはハードロックののり…この演奏にサンパーストのレスポールはないよなぁ…
by lagu (2009-04-06 08:41)