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デトロイト・メタル・シティ [音楽一般]

俺は学生時代からほとんど漫画を読まない。が、ちょっと前から気になっている漫画があった。この漫画が昨年映画化され、一週間ほど前にDVDがレンタル開始となったので、暇つぶしに借りて観た。

デトロイト・メタル・シティ

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このタイトル、当然、KISSの名曲、DETROIT ROCK CITYのパクりであることは想像に難くない。

内容はと言えば、「お洒落なポップ・ミュージック」を演りたい若者が、所属した音楽事務所の方針でおどろおどろしいメークを施すデス・メタル・バンドをやらされ、思いのほか人気が出てしまい、「やりたい音楽」と「やらされている音楽」とのギャップ、思いを寄せている女性が自分のバンドを嫌悪していること、素性を隠しているがゆえにそれが自分であることがバレるのを恐れていること、自分が本当に「やりたい音楽」が全く世間に評価されないこと、等等に悩み、最後は「理想とはかけ離れているが、自分は求められている」ということに目覚め、そこに「プッ」と笑えるコネタを挟む、という…ま~、なんつーか、ロックを題材にした取るに足らない青春コメディー映画である。


「くだらねぇなぁ」と思いつつも、「事務所の方針で自分のやりたい音楽が出来ない」というシチュエーションには共感してしまった。

実は俺自身、20代前半の一時期、音楽事務所に所属、事務所方針で自分が好きな音楽が出来なかった、という憂き目に遭っているからだ。
さすがに事務所要求はデス・メタルではなかったが(そもそも当時はデス・メタルというカテゴリーはなかった)、ギター・オリエンテッドなハード・ロックを演りたかったのに、当時流行していたパンク、もしくはニュー・ウェーブ風にイメチェンを要求された。ギター・ソロは封印され、長髪は切って髪を立てろ、スリムのジーンズは穿くな、スニーカーも履くな、等と色々と私生活面も干渉された。おまけに他のメンバー(寄せ集めである)の年齢層より俺がかなり若かった為、7歳も上に年齢詐称を要求された。実年齢よりも上に偽るなんて思ってもいなかった。

幸か不幸かこのバンドは一年くらい業界内でのプロモーションやら何やらをやった挙句、ものにならずレコーディングもせずに空中分解してしまったが、ま、今にして思えば色々と勉強させてもらったし、貴重な経験もさせてもらったし、結果はでなかったが面白い体験ではあった。


ま、それはさておき、本題に戻ろう。

実は、DVD化されたデトロイト・メタル・シティを観るに先立ち、事前知識としてコミック(未完結)を一巻目だけ読んだ。馬鹿馬鹿しいながらもなかなかに面白く、コミック内での演奏シーンで登場する、「SATSUGAI」なる曲の稚拙な歌詞に触発され、自ら「俺だったらこういう曲にする」と、自宅録音までしてしまった程だ。

肝心の映画であるが、はっきり言うが、これはいわゆる「音楽映画」ではない。重ねて言うが、ロックを題材にした「青春コメディー」である。先ず、本編中、何回か演奏されている音楽がデス・メタルではない。さらに、なんと御大、ジーン・シモンズ自らが「デス・メタルの帝王」として出演し、演奏シーンもあるが、当然のごとくデス・メタルなんぞではない。それを理解せずにデス・メタルを期待して観ると、映画製作関係者全員を地獄の底に叩き落し、永遠に終わる事のない責め苦を味あわせ、血の最後の一滴まで悪鬼に絞り取られるところを見届けてやるぜ、ってな気分になる。(勿論、冗談である)

救いは主演である松山ケンイチがメイクを施し、虚構のロック・ヒーロー、「クラウザーⅡ世」に変身したときのブチ切れた演技だ。松山ケンイチ本人は音楽的素養に乏しいらしいが、撮影に当たってはマリリン・マンソンあたりのビデオを観て相当研究したのではないか、と思わせる。(マリリン・マンソンとてデス・メタルではないが)本編内でのステージ・パフォーマンスはそんじゃそこらのアマチュア・ミュージシャンでは太刀打ちが出来ない程の存在感がある。
それとは裏腹に、お洒落なポップ・ミュージックを演奏したい、素の「根岸宗一」に戻ったときの演技は痛々しくて見ていられない。特にコミックの台詞そのものの独白が多く、やたら説明的で醒める。「俳優なら演技で表現すればいいじゃねぇか」と思うが、これは彼の責任ではない。演出家、脚本家は八つ裂きじゃー!


ちなみに、企画バンドが演奏した映画のサントラ盤も出ているようだが…俺は全く興味なし。





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