DOME 3 [Post Punk / Post Rock]
DOMEはポスト・パンクの最重要グループ、WIREの Graham LewisとBruce Gilbertによるサブ・プロジェクト。活動していた時期は80年代中盤だったと記憶している。4枚目まで出ていたはずだが、中でもこの3枚目の音響実験は恐ろしくもあり、素晴らしくもある。
DOME (3) / DOME
彼らの本来のバンド、WIREのリーダー(だったと思う)のColin Newmanのソロ作品の数々も雰囲気があってなかなか面白いのだが、かなりまっとうな音楽の体裁を保っていて、聴きようによっては良質なポップ・ミュージックも多い。
それに引き換え、このDOMEなるプロジェクトが出すのは、聴き手を拒絶するかのような陰惨な音だ。
曲によってはギター、ドラム、ベース、驚くべきことにホーン、グロッケンなども使用し、ボーカルも入ったりするのだが、全体を支配するのはアバンギャルドなノイズ、というか、聴き手を不安に陥れる音響。いわゆる「気持ちよく聴ける楽曲」として音を成立させるための重要ファクターであるアンサンブル、曲の整合性は価値基準からほぼ外されている。特に印象的なのは、殆どの曲で聞かれる工場で発せられるような規則的にして非音楽的な音響。これにわずかばかりの音楽的作為を施した作品は独特な「非人間的」な雰囲気を漂わせる。
一聴すると興味深いながらも不愉快な音のはずなのだが、不思議なことに聴き込んでいくうちに脳内のどこかで革命が起こり、ある瞬間、心地よく感じるようになってしまうのだ。こうなるともういけない。何度でもリピートし、環境音楽として聴けるようにもなってしまう。かと言って、来訪者がいる時にこれをかけると変人扱いを受けることになるので要注意である。
俺自身はいまだに大好きであるが、客観的に言えば、聴き手にとっては決して善良な音楽ではないし、そこで使われている音響は、部分的に抽出しても一般的に心地よく感じられない物が多い。実験的な試みが聴いて取れる作品ではあるが、この実験からどのような結果が出たのか解らないくらい混沌が支配的である。
This Heatとの相似形を指摘する者も多いし、時代的にもほぼ重なっているが、この作品を聴くに際しては、これらの音がこの時代のメイン・ストリームを形成していた訳ではなかったことを理解するべきであろう。あくまでも、非アカデミックな音楽の広がりの可能性を実験的に行ったものであり、本人たちも「前衛的である」ことを意識してこの作品を制作したはずだ。事実、この作品が発表後20年以上を経過した現在でも陳腐化せずに前衛的であり続けていることは驚きに値する。
幸いなことにDOMEが発表した4作品は2枚のCDに集約されて発売されている。俺がショップで偶然発見、鼻息も荒く購入した時は一枚¥3,000超だった記憶があるが、なんと今確認したらAMAZAONでは¥1,500以下で売っているではないか・・・
。
ちなみに、Bruce Gilbertは個人名義でも数枚の作品を発表している(勿論、所持している)。中には現代バレエのための作品もあったりするから驚きである
DOME (3) / DOME
彼らの本来のバンド、WIREのリーダー(だったと思う)のColin Newmanのソロ作品の数々も雰囲気があってなかなか面白いのだが、かなりまっとうな音楽の体裁を保っていて、聴きようによっては良質なポップ・ミュージックも多い。
それに引き換え、このDOMEなるプロジェクトが出すのは、聴き手を拒絶するかのような陰惨な音だ。
曲によってはギター、ドラム、ベース、驚くべきことにホーン、グロッケンなども使用し、ボーカルも入ったりするのだが、全体を支配するのはアバンギャルドなノイズ、というか、聴き手を不安に陥れる音響。いわゆる「気持ちよく聴ける楽曲」として音を成立させるための重要ファクターであるアンサンブル、曲の整合性は価値基準からほぼ外されている。特に印象的なのは、殆どの曲で聞かれる工場で発せられるような規則的にして非音楽的な音響。これにわずかばかりの音楽的作為を施した作品は独特な「非人間的」な雰囲気を漂わせる。
一聴すると興味深いながらも不愉快な音のはずなのだが、不思議なことに聴き込んでいくうちに脳内のどこかで革命が起こり、ある瞬間、心地よく感じるようになってしまうのだ。こうなるともういけない。何度でもリピートし、環境音楽として聴けるようにもなってしまう。かと言って、来訪者がいる時にこれをかけると変人扱いを受けることになるので要注意である。
俺自身はいまだに大好きであるが、客観的に言えば、聴き手にとっては決して善良な音楽ではないし、そこで使われている音響は、部分的に抽出しても一般的に心地よく感じられない物が多い。実験的な試みが聴いて取れる作品ではあるが、この実験からどのような結果が出たのか解らないくらい混沌が支配的である。
This Heatとの相似形を指摘する者も多いし、時代的にもほぼ重なっているが、この作品を聴くに際しては、これらの音がこの時代のメイン・ストリームを形成していた訳ではなかったことを理解するべきであろう。あくまでも、非アカデミックな音楽の広がりの可能性を実験的に行ったものであり、本人たちも「前衛的である」ことを意識してこの作品を制作したはずだ。事実、この作品が発表後20年以上を経過した現在でも陳腐化せずに前衛的であり続けていることは驚きに値する。
幸いなことにDOMEが発表した4作品は2枚のCDに集約されて発売されている。俺がショップで偶然発見、鼻息も荒く購入した時は一枚¥3,000超だった記憶があるが、なんと今確認したらAMAZAONでは¥1,500以下で売っているではないか・・・
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ちなみに、Bruce Gilbertは個人名義でも数枚の作品を発表している(勿論、所持している)。中には現代バレエのための作品もあったりするから驚きである
こんばんは.teamKEでした,石原茂和です.
ワタシ,まじめなブログには,本名で書かせて頂く
主義でありまして,今後は,まともに名前出します.
インターネットという言葉もないころ(ARPAnet-Junet)
からネット使っていたせいか,どうもハンドルだと,
本気でないという妙なところがあります.
私の趣味ですので.それは気にしないでお相手くだされば
幸いです.
それにしても,Dome3が出てしまいましたか.....
アナログLPで持っています.
私が,高校3年のときでしたから,81年か,そのあたりではなかったでしょうか.
当時あまり話題になることもなく,またその後も再評価されることもなかったせいか,記憶の彼方に霞んでいますが,
たしかにThis Heatっぽいところもありましたね.
まさか,今頃になってCD化されているとは驚きました.
Wire周辺だと,A.C.Mariasというのもありました..
どこにしまったかな.引っ張り出してもう一度聴いてみます.
再結成Wireは,WIRE magazine(ややこしい)に
写真や記事が何度かでていましたが,
見事な不良ジジイぶりに感動しました
(格好はジジイなのに,皆眼光するどい)
by 石原茂和 (2009-03-06 23:17)
石原さん、こんにちは。申し訳ありませんが、私の名前はこちらでは出さないようにしています。
とはいいつつ、以前お教えしたもう一つのブログでは出ちゃってますけどね。
ところで、このCDは最近発売されたものではなく、少なくとも15年くらい前に購入しました。確かに、DOMEが再評価されたって話は聞いた事ないですが、4枚残した作品中、この3枚目は音響的にも突出してますよね。
by lagu (2009-03-07 09:13)
名前の件,
あ,いやいや,私の趣味ですから,気にしないで.
15年も前にCDが出ていたとは,ちょっとびっくり.
DOME(3)について,なぜ自分でもあまり振り返ることがなかったかを考えると,同時期に,TGが日本に紹介されたからですね.
TGがまき散らす華と毒と同時期だと,高校生の耳では,TGのほうが残ってしまうわなあ.
でも,この作品の,薄めのノイズと不思議にリズミックな響きはいまも記憶しています.個人的には,後のAutecheにつながってくるなあ
by 石原茂和 (2009-03-07 15:10)
石原さん、こんにちは。
実は恥ずかしながら、TGはあまり聴いていないんです。あ、いや、勿論CDは持ってますが…どこに行ったかなぁ?当時、ステージ・パフォーマンスのえげつなさ、カルト教団まがいの言動に嫌悪感に近いものを持っていて、先入観を持っていたんですね。今にしてみれば惜しいことをしたものです。
by lagu (2009-03-07 15:53)
TGですが,当時,彼らの問題意識として,
人間が持っている全体主義的な志向を
えぐり出すということをテーマの1つに
持っていたことは明白でした.
これは,良識あるヨーロッパ人には共通するもので,
いったいどうして,ナチスのような集団に.
勤勉で教育も高いドイツ国民が操られてしまったのか?
という疑問です.
現代音楽の中心テーマに,アンチクライマックス,
アンチマーラー,アンチロマン主義が
長らくあったのは,音楽がナチスに
もののみごとに人心高揚につかわれてしまった
という反省があったというのは良く言われます.
Discipline Liveというレコードがあって,
Discipline! Discipline! We need some discipline now!
と叫びながら,行進曲調ハンマービート+ノイズを延々とやっているライブ録音です.
それを聴くと,こんなに絶叫+ノイズで,
なぜ(聴いている私は)高揚するんだ?
と誰しも自分に問いかけたくなります.
それを自分に問いかけろという提示だったのでしょう.
音楽でそういう問題提示(というか,疑似体験ですね)の例は
Laibachぐらいしか,他には思いつきません.
ノイズミュージックは,聴いていると気持ちよくなるのですが
(マゾ?)ノイズをやっている,当時の他のアーティストとは
全く違った提示だったと思います.
その一方で,テクノなディスコチューン(しかも出来がよい)を出すなど,なかなかくせ者でした.
TGは3年前に,復活してやってますね.
復活TGの音はまだ聴いていません.
by 石原茂和 (2009-03-07 19:59)
音響効果による精神コントロールについて。
例えば、ヒトラーは自分の演説前に低音成分が多く含まれる交響曲をオーケストラの演奏させた、という話は有名ですね。
また、寺内タケシは、旧ソ連で初めてコンサートを行う際に、開演前に観客の耳には聞こえない低周波を長時間流したそうで、ステージに上がって最初の一音を出しただけで観客が総立ちになったそうです。
また、人間の耳に聞こえないある高周波は、脳を活性化させる、という研究結果も発表されていますね。これはガムランによく言われることなんですが。
一聴すると耳障り、もしくは可聴不能な音響も、音楽(音程の規則を持った並び)とは無関係なところで我々の精神に何らかの作用を与えているようです。
ただ、人間の可聴範囲に特化された周波数内で作品化された音源(CDとか)を自宅で聴いている分にはこの効果を期待することは出来ないでしょうね。
by lagu (2009-03-08 00:01)
音響による,精神的な操作ですが,
これはそれによる効果よりも
個人差のほうががものすごくデカイので,
あまり研究にならんという側面があります.
また,それを研究することによって
人類に寄与するかというと,寄与しないので
大学のようなアカデミックなところで研究しようという
人はほとんどいません.
1950〜60年代の,アメリカの心理学では
結構マッドな実験をしていた人が多いので
そこらの論文をほじくれば,出て来るかもしれませんが,
軍関係だと,公表されていない研究も多いと思います.
一方,幸せになる,活性化させるというほうは
寄与するので,わりと研究されることが多いです.
ガムランはよく使われますね.
ただ,おっしゃる通りで,
問題は,高い周波数の音をどうやって録音再生するかということです.再生のほうは,いいスピーカーを使えば,まあまあ大丈夫なようです.
山城組の山城彰二さん=大橋力先生から直接聞いたお話です.
熱帯雨林で聞こえる音のうち,可聴領域ぎりぎりか,それよりも
高い音がポジティブな効果があるだろうとおもって,
エンジニアに録音機材を相談してみた.
コンデンサーマイクにかける電圧を高くすれば録れるということだったので,そのように改造して持っていったところ,
湿気が高いので,すぐショートしてこわれてしまって苦労した
と言われていました.
大橋力先生は,そういう可聴領域外,特に高い方に
こだわっておられましたね.
有名な論文がこれです
Oohashi et al., Inaudible High-Frequency Sounds Affect Brain Activity: Hypersonic Effect, J. of Neurophysiology, 83, 3548-3558, 2000.
http://jn.physiology.org/cgi/content/full/83/6/3548
22kHz 以上を除外してしまったガムランと,除外していないガムランを聴かせて,脳波と血流量を測定する.
ちなみに,22kHz以上だけを聴かせてみたら,それが聞こえたという人はいない.
22kHz以上を除外していないガムランでは,除外したものと比べて
後頭部のアルファ波成分が統計的有意に増大,PETでの測定では脳幹と左視床の血流量が増大,心理評価では,ソフトな,共鳴する,バランスがとれた,心地よい,ニュアンスに富むの評価で有意に高い評価.
by 石原茂和 (2009-03-08 09:40)