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ヤマサリ(燦然と神秘のガムラン) [ガムラン]

夏らしくなってきたことだし、久々にガムランである。


以前もここにしたためたように、10年以上前の一時期、特種な事情があり、時間の許す限りガムラン音楽を聴きまくっていたが、最近はあまり聴かなくなってしまっていた。が、先週末、日本の某ガムラン楽団から客演依頼があり、「予定演目は全て身に染み付いているから事前に練習する必要なんか無いだろ」と、個人練習もせずに気楽に応じて演奏してきたところ、絶対に覚えていると確信を持っていた曲を間違えてしまった・・・
「こりゃまずい」と、現在聴き直している最中である。


燦然と神秘のガムラン / YAMASARI

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YAMASARIとの出会いは確か1994年だったと記憶している。俺がバリに長期逗留し、ガムラン音楽を勉強していた時期だ。師事していた先生がTIRTA SARIという楽団に所属しており、数ヶ月の特訓を経て、俺もTIRTA SARIのステージで演奏をするようになっていたある日のこと、演奏会終了後、TIRTA SARIの音楽監督、C.A.Hendrawan氏が珍しく俺に声をかけてきた。

「最近、新しい楽団を立ち上げたんだ。今度、演奏会を開催する予定があるから、お前、観に来い」
「はい、是非お邪魔します」
「あ、演奏会は録音しておくんだぞ?忘れるなよ?」
「・・・はぁ・・・」

かくして招かれた演奏会での公演内容はバカテクの応酬の嵐、動と静、力強さと優美さの対比が見事で、格調の高さを感じさせる素晴らしいものだった。また、楽器の調律も今まで聴いたことがないもので、それがまた独特の雰囲気を醸し出していた。

終演後、C.A.Hendrawan氏が俺に歩み寄ってきた。

「どうだった?」
「いや、これは凄いですね」
「いしししし、そうだろうそうだろう」
「楽団の名前はなんて言うんですか?」
「これはな、YAMASARIって言うんだ。来週また演奏する予定があるから、お前も勉強しておくようにな」
「は?」
「だから、次回からお前もYAMASARIの演奏に参加するのだ」
「そんな無茶な。だってレパートリーだって知らないのに・・・」
「お前、さっき録音していただろ?それを聴いて練習して来ればいいのだ」
「でも、レパートリーはあれで全てじゃないんでしょ?他の曲を演られたら対応出来ませんが・・・」
「ああっ!もうっ!そんな面倒なこと言うんだったらプリアタンの楽団が演奏する曲は片っ端から練習して来いっ!」

という経緯があって、俺も参加することになったのである。

びっくりしたな、もう。

 

さて、肝心のこの作品だが、1996年の初来日に合わせて発売されている(録音時期には俺は日本に居て演奏には参加していない)。演目はオリジナル器楽曲3曲、オリジナル舞踊曲1曲、古典舞踊曲1曲、近代器楽曲1曲で構成されている。オリジナル器楽曲の3曲については、以前、このblogでも紹介した日本盤の2作目にも収録されている。

楽団としてはオリジナル曲を聴いて欲しいところだし、勿論これらのオリジナル曲は古典的手法の現代的解釈、そして若干の遊び心が余裕を感じさせる名演であるが、(遊び心とは何を指すのかはここで触れるのは止めておく)一般リスナーにとってこの作品の価値を最も高めているのは古典舞踊曲、Legong Jobogであろう。
Legongという種類の舞踊は『バリ舞踊の華』とも言われ、様々なバリエーションがあるが、通常はLegong Lasemという曲が収録されることが多い。バリ島で発表されているCDやカセットには他のバリエーションも収録されているものもあるが、海外で発売されるCDではほぼ例外なくLegong Lasemが選ばれている。これは、海外での発売となると、どうしても『ガムラン音楽の紹介』的な扱いにならざるを得なく、最も有名な曲を選びがちであることに由来しているのだと思うが、YAMASARIはあえてその選択肢を採択しなかった。その理由は実際にこのCDを聴けばわかるはずだが、通常は単調になりがちなLegon Jobogの演奏が、舞踊映像が無くても観賞に耐える程に演奏が緩急に満ちた芸術音楽の域に達しているからだ。特に楽曲が単純な繰り返しに入る10分あたりから終盤にかけての演奏の緩急の付け方は見事である。
また、最後に収録されている近代器楽曲、Kapi Rajaは、1929年(だったと思う)にパリの植民地博覧会で初めてバリの楽団が海外に紹介されたときに序曲として作曲されたものであり、3分程度と短いながらもガムラン音楽の魅力を濃縮した名曲中の名曲であり、様々な楽団がレパートリーに取り入れているが、このCDに収録されている演奏ほど集中力とパワーに満ちた演奏にはついぞお目にかかったことがない。それもそのはず、YAMASARIのリーダーであるC.A.Hendrawan氏は、植民地博覧会で演奏したGunung Sariという楽団のリーダーを若い頃に務めていたこともあり、また、2~3年前にGunung Sariの要請によってYAMASARIとの兼任で再びリーダーの座に着任している。つまり、この名曲の正当な継承者と言えるのだ。

残念なことに、この作品で使用している楽器は数年前に調律し直され、一般的なペロッグ音階に近くなってしまった。俺としては、あのまま、ゴン・クビャール様式としては珍しいスレンドロ音階のまま取っておいて欲しかったのだが、メンバーは現在の調律の方が気に入っているようだ。

(基礎知識:ガムランの楽団の演奏する楽器は個人が持ち寄るものではなく、楽団が所有するものであり、調律は楽団によって微妙に異なる。また、調律は『鍵盤を削る』、もしくは『鍵盤自体をあらたに鋳造し直す』といった大作業抜きにしては不可能であり、一旦変えてしまった調律を元に戻すことは容易なことではない)

(宣伝:YAMASARIは毎週水曜日、バリ島のウブドにて一般向けの定期的な公演を開催している。バリに行った際にはスケジュールの合う限り、自分の目と耳でその素晴らしさを検証することを薦める

ヤマサリは2014年時点で観光客向けの定期公演を休止している。

燦然と神秘のガムラン

燦然と神秘のガムラン

  • アーティスト: ヤマ・サリ
  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 2000/08/02
  • メディア: CD


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コメント 8

Berry

はじめまして。
いつも会社のお昼休みにお弁当食べながら拝見しております。
どの日記も勉強になります!

参加されたのは新宿西口で行われた、山○組ですか?金曜日の夜に見に行きました。通勤中のipodはロック(HC&HM)ばかりですが、この湿度と気温でガムランが恋しくなるバリ好き(舞踊が特に)です。

トランス系のガムランもお好きですか?
by Berry (2007-08-02 20:59) 

lagu

Berryさん、はじめまして。
ご推察の通り、客演したのは芸能山城組のガムランです。ちなみに、金曜の夜なら私は演奏してました。
ところで、トランス系のガムランって何ですか?
by lagu (2007-08-02 21:47) 

Berry

ごめんなさい、言葉足らずでした・・。
クラブでかかる、アンビエントというのか、ミニマルというのか・・伝統っぽくないガムランです。個人的にはゴアトランスの衝撃に近かったです。
もしオススメがあれば・・・と^^;

音楽ジャンル・・凡人には難しいです・・・(泣)
by Berry (2007-08-03 20:48) 

lagu

う~ん・・・クラブでかかる、ですか・・・・
そういう場所にはまず行かないので、ちょっと私の守備範囲外ですね。
ごめんなさい。
by lagu (2007-08-03 21:41) 

「ゆ」

はじめまして。先週初バリ旅行に行き、短い休みではありますがウブドに数日滞在、帰りにジャカルタで買ったCDの中にYamasariのプリアタン録音のVCD&CD x2セットがあり、その内容の凄さに驚いて調べているうちに、ここに辿り着きました(2005/08/30の記事)。ここで弦楽器を演奏されているのがlaguさんでしょうか?

ウブドで滞在した水曜日、ゲストハウスのご主人に「今日、うちのグループの演奏会があるから一緒に来る?」と言われていたのですが、夕方になって「ちょっと忙しいから僕、今日は演奏会キャンセル。ウブドのお祭り見に行っておいで」と言われ、結局そのように。そのご主人とは、Yuliati HouseのAjikさん。上記VCDでもその姿を見たので、ということは、そのグループってYamasari? こんな凄い演奏なら、そっち見に行っておけばよかったと今さら後悔... Ajikさんは「お客さん少ないんだよねぇ」とかおっしゃってたんですが。

今までインドネシアの伝統音楽はノーチェックだったのですが、ウブドでの各種ライブや、買ってきたCDやらカセットやらで、バリ以外のものも含めてかなりやられてます。Semara Ratihは現地で見ることが出来て、このグループのヘビーで高速なハイテク演奏も凄かったです。

ところで、別の記事でGR用のギターを紹介されていましたが、これはG-202でしょうか?今のGRシステムで使えないのはもったいないですけど、ルックスかっこいいと思います。弾いたことないんですが、いい音するんですね。

だらだらすみません。またお邪魔します。
by 「ゆ」 (2007-08-19 17:24) 

lagu

ゆさん、はじめまして。ようこそ。

ご推察の通り、購入されたYAMASARIのVCDで弦楽器(ルバブ)を弾いているのは私です。
また、水曜日にアジから演奏会に誘われたとのことですが、それも間違い無くYAMASARIでしょうね。

あ、GRのギター型コントローラーですが、ご推察の通り、G202です。本当はトレモロ・アームの付いたシングルコイルのやつ(Adrial Blewが使っていたやつです)が欲しかったのですが、迷っているうちに売れてしまって・・・でも、結局、G202にして良かったです。ご存知かとも思いますが、この時代のGR用MIDIコンバーターは調律の狂いに異常に敏感に反応しますので。また、音もかなり硬めではありますが、出力も程々にあり、ハンバッキングにしては分離がかなりよく、粒立ちもはっきりしています。さすがに最近はマイクの磁力が低下したのか、一時期に比べるとエッジが若干丸くなった気もしますが・・・

バリのことを中心に綴ったブログもやってますので、お暇がありましたらそちらも覗いて見てください。URLは以下です。
http://bntg.exblog.jp/
by lagu (2007-08-20 17:27) 

「ゆ」

そうですか、やっぱりYamasariだったんですね。アジさんももうちょっと、「うちは名うてのミュージシャンが集まるスーパーグループだから、見ないと後悔するよ」くらい言ってくれれば良かったんですが、そんなこと言う方じゃないですよね... 2時間ほどガムラン(ハンマーで鉄琴叩くやつ)を教えてもらったんですが、教えてもらった簡単なリフの裏に鋭く打ち込んでくるビートに、ずっとドキドキしっ放し。「しゅごいねぇ~!(日本語で)」を連発してくれる、とても褒め上手な先生でした。次はいついけるのかなぁ...

GR、今のものは随分使いやすくなってると思います。同じくローランドのV-Guitarは触られたことありますか?MIDI変換がないのでストレスがなく、いろんなギターの音も、そうじゃない音も、普通にギター的に演奏できる不思議な機械です。GRと同じく、6弦独立でピッチ(というか弦鳴り)を拾うので、各弦独立歪(歪単音をオーバーダブしたみたいな)とか、弦毎に高低が異なるピッチシフターや指定弦のみベンドとか、ちょっとあり得ないことも出来て、面白いです。

ビンタン雑記、少しずつ読んでます(ありがとうございます)。百面オゴオゴ、あれ凄いですね。生で見てみたい...
by 「ゆ」 (2007-08-21 23:08) 

lagu

ゆさん、こんにちは。
ガンサを使ってガムランの勉強をされたのですね。
ゆさんが体験された、表拍子のフレーズと裏拍子のフレーズを担当分けして一つのフレーズが出来上がる手法を、コテカンといいます。バッチリ決まると凄くカッコいいんですよね。あれは実際にやったこと無い人じゃないとわからないと思います。いい体験学習をされましたね。

ところで、V-Guitarのことは知りませんでした。しかし、やはりGKデバイスを使用する必要があるのですね・・・以前GK1をストラトにマウントしていたときは、あのピックアップ部分のケーブルが接続がやわで、記事にも書いた通り、やたらと断線し、その都度ユニット毎に交換しなければならず、(ケーブルの断線を繋げる修理は出来ないそうです・・・)、G202を購入した、という経緯があります。しかしG202と互換性がないのは残念です。
by lagu (2007-08-24 10:31) 

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