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Peter Gabriel(Ⅲ) [Rock]

このところ、なぜかこのブログにはRobert Frippが関わった作品が登場することが多い。俺がRobert Frippのファンであることは間違いないのだが、別に無理して彼が参加している作品を探して聴いているわけじゃない。しかし、、今日聴いているアルバムでもやっぱりRobert Frippがギターを弾いていた・・・

PETER GABRIEL

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Peter Gabrielはアルバムに名前をつけるのが大嫌いだそうである。ソロになってから3枚目となるこのアルバムにもオフィシャルな名前は付けられていないが、その顔面から肩にかけて溶解している恐ろしげなジャケット・デザインから一般にはMeltと呼ばれることが多いようだ。

アルバムはゲート・リバーブをかけたドラムの叩き出すリズムが印象的なIntruderで幕を開ける。ドゥン、ドゥンと潜る重低音。ギリギリギリと何かの歯車が軋むような効果音。最初の4小節だけでもう鳥肌が立つ(ちなみに、最初にドラムにゲート・リバーブを使ったのはこのアルバムだと言われている)。また、間奏ではシロフォンが重要な役割を果たしている。続くNo Self Controlや、名曲、Bikoの為の序曲とも言えるLead A Normal Lifeでもシロフォンが大活躍する。この曲の終盤部分ではアフリカの太鼓を意識したと思われるリズムが聴いて取れる。もしかしたら実際に民族楽器を使用しているかもしれないが、CDのスリーブにはPercussion奏者として二名がクレジットされているだけで、使用している楽器の種類まではわからないが、民族音楽を意識したアレンジであることは間違いない。そして、そのBikoの導入部分と終盤部分ではアフリカのコーラスが聞かれる。が、これはいわゆるサンプリングという使い方ではなく、曲とは絡ませずに、録音されたものをそのまま効果音として使用している。いずれにせよ、民族音楽への意識の高まりが聴いて取れるアルバムである。察するに、シロフォンを使用している部分は本当はバラフォン類(アフリカの木琴状の民族楽器)あたりを使いたかったのだが、音程、音階が合わずに断念したのではないだろうか?

この作品、ソロ・アルバムということもあって、複数のギタリストが参加している。誰がどの曲で演奏しているのかは明らかにされていないが、やはり存在感があるのはRobert Frippのギターである。そしてTony Levinがスティックを担当。この二人はPeter Gabrielのソロ・アルバム一作目から協力しており、たしかPeter Gabrielのセッションで知り合ったものだと記憶している。つまり、80年代のKING CRIMSONはPeter Gabrielがとりもった縁で結成された、というわけだ。
勿論、Larry Fastや、盟友Phil Collinsを含め、その他のミュージシャン達も出すぎず引っ込み過ぎず素晴らしい演奏で、アーティスト、Peter Gabrielを見事にサポートしており、非常に聞き応えのあるアルバムに仕上がっている。Intruderに代表されるように、かなりドギツイ音響を聴かせる曲もあるので、ライト・リスナーには敬遠されるかもしれないが、個人的には数あるPeter Gabrielの作品の中でも一番好きであり、内容的にも充実していると思う。

 

さて、Peter Gabrielが主催したWOMADというフェスティバルが人種隔離政策下の南アフリカで開催され(注:Peter Gabrielの単独公演だった可能性あり)、評判を一気に落としてしまったことについては過日触れたが、このアルバムのハイライトであるBikoは、弾圧の末に命を落とした南アフリカの人権活動家を歌ったものであり、歌詞の最後では『世界中が見ているぞ』と、アパルトヘイト下の南アフリカに対して警鐘を鳴らしている。


このアルバムの発表は1980年、即ちWOMAD以前であるので、公演開催時点では由々しき問題が南アフリカで起こっており、国自体が世界中から非難されていたことについて明確に認識しており、そういった場所で公演を行えば何らかのバッシングを受けることは承知の上だったはずだ。Peter Gabrielもバカではないはずなので、あえて彼の地の選んだのにはそれなりの意図があったはずであるし、南アフリカ共和国政府側にも国家政策を批判するアーティストに公演の開催を許可したということは何らかの思惑があったはずだ。が、国際社会からは『南アフリカで公演を行った』という事実のみを取り上げられてしまい、周囲からの非難の声にかき消されて本人の声は一般のリスナーには届いていない。もしかしたら何らかのメディアを通じてメッセージを発信したのかもしれないが、少なくとも俺は知らない。実際に彼が意図したものは何だったのか、そして彼の地でのPeter Gabrielの言動、フェスティバルの評価はどのようなものだったのかについて非常に興味がある。

ちなみに、そのころの南アフリカでは、日本人は『名誉白人』と言う名前で白人側として扱われていたようである。ムナクソ悪い話である。


Peter Gabriel 3: Melt

Peter Gabriel 3: Melt

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Geffen Records
  • 発売日: 2002/05/07
  • メディア: CD


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コメント 3

deacon_blue

☆ 全く同じ意識が『グレイスランド』を制作したポール・サイモンにも覗えます。人種差別の国だから一切交渉を絶つのではなく,敢えてそこに飛び込むのもまた,意思表示と言えると思います。
by deacon_blue (2007-07-31 17:33) 

lagu

deacon_blueさん、こんにちは。
おっしゃる通りですね。外野から何を言っても始まらない。ならば懐に飛び込んで行ってやろう、という発想には反骨精神すら感じます。PUNK以上にPUNKですね。Peter Gabriel自身も南アフリカで公演した、と聴いていますが、BIKOは演奏したのだろうか?非常に興味があります。
by lagu (2007-07-31 18:24) 

lagu

あれ?南アフリカでWOMADが開催されたのは本当に人種隔離政策の最中でしたっけ?なんか記憶が曖昧になってきました・・・少なくとも、Peter Gabrielが人種隔離政策中の南アフリカで公演したことは間違いないんですが・・・まずいなぁ・・・どなたか、間違っていたら訂正してください。
by lagu (2007-07-31 20:28) 

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