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バリでよく聴く音楽(FIDELITY / THE DURUTTI COLUMN) [Ambient/New Age/Experimental]

俺はよくバリに行く。仕事の切れ目を見つけてはバリに行く。へたすると休職、場合によっては仕事を辞めてまでバリに行く。そこまでする主な目的は彼の地のガムラン音楽があまりにも魅力的だからだ。国内で入手できるガムラン音楽のCDは勿論のこと、海外で発売されているガムランのCDも俺がその存在を確認しており、興味があるものはほとんど所持している。勿論、本場バリで発売されているCDやカセットも面白そうなものがあると買うようにしている。さらに現地で録音した生演奏のMDやカセットなんぞを加えるとその数はとんでもないものになる。

では、俺がバリでガムラン音楽ばかり聴いているか、というと、これは否である。確かに以前は現地で購入したばかりのCDを覚えるまでしつこく聴いたり、録音して来たばかりのMDを分析的に長時間聴いたりした時期もあったが、最近はそこまではしなくなった。だいたい、様々なシーンでしょっちゅう生のガムラン音楽が演奏されているのに、わざわざPCに食わせたダイナミック・レンジの低い録音を聴く必要なんぞない。

では、何を聴いているのかというと、たとえばこのような音楽である。

FIDELITY / THE DURUTTI COLUMN

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THE DURUTTI COLUMNはPUNK/NEW WAVEムーブメントの頃から活動している息の長いバンドであるが、その実態はVini Reillyというギタリスト兼キーボードプレイヤーのソロ・プロジェクトであると言っていいだろう。一時期はパートナー・シップを持ったメンバーも居たようだが、現在は作品を作る度に必要があればゲスト・ミュージシャンを迎え、必要な曲だけ演奏およびボーカルに参加してもらっているようだ。
確かデビューはJoy Divisionと同じファクトリー・レーベルからであり、時期的にもPUNK/NEW WAVEムーブメントと重なっていた為、一連のPUNK/NEW WAVEのバンドと並べ評価されることも多いが、実際に音を聴いてみればわかる通り、PUNKからの影響はほとんど感じられない。

正直言って、このVini Reillyという人物、作品を聴く限り、いわゆる『おタク』であることが容易に推察される。作品のほとんどは少人数、または本人のみの多重録音で作成されている。では、初期のMike Oldfieldのような気の遠くなるような録音作業をしているかというとそうでもなく、音数はさほど多くない。せいぜい16トラックもあれば充分で、へたすると8トラックでも再現可能だ。また、良く言えば冒険心旺盛、悪く言えば節操がなく、自分が興味を持った音楽なら何でもやる。この作品でもハウス風の音作りに挑戦したり、カリプソっぽい演奏に手を染めてみたりしている。音楽性に対してここまでこだわりを持っていない人も珍しいのではないか?しかし、それらの音は良い意味で中途半端であり、Vini Reillyらしさを残しているのがある意味魅力に繋がっている。

この人の弾くギターには誰にも似ていない独特の味わいがある。音響面ではディレイを効果的に使用し、空間的な奥行き感じさせる音響設計が特徴的だ。よく、『ギターでスケッチする男』などと言われているようだが、まさにその表現は適切だと思う。そして、そのスケッチの対象は当然ながらVini Reillyというあくまで一個人の視点を通した私小説的なものであり、ある意味、ノスタルジアに訴えかける絵画的と言えるメロディー作り、及びプレイを得意としている。このあたりの雰囲気を持った曲をこのアルバムに収録されている曲で具体的に挙げれば、Storm For SteveやGuitar For Motherなどであるが、これらの曲はバリで聴くと『どん嵌り』である。このアルバムに限らず、こういった雰囲気の曲は俺の所持しているTHE DURUTTI COLUMNのほぼ全てのアルバムに収録されており、これらの曲を集めてiTunes上でプレイリストにしてバリで聴いていたりするのである。

また、Vini Reillyは効果音を曲に取り入れることを好む。遠雷、小鳥の囀りなどをサンプリングしたり、シンセサイザーでそれらしき音を作ったりして使用することも多い。彼がサンプリングするのは自然音にとどまらない。他人の歌、それも主に民族音楽を中心にボーカルパートを採取し、自分の演奏に乗せて別の曲に仕立ててしまうような事もしている。このアルバムでも何曲かそういった手法で作られた曲がある。個人的には、自らの創造力の欠如をすでに作品化されている他人の芸術作品を借用することによって埋めようとする行為には正直言って首を傾げざるを得ない。が、その結果は実に見事なものなので、我々リスナーがどうこう言う問題ではないのかもしれない。勿論、著作権の問題をクリアーしていることが前提であるが。
ちなみに、俺がこのアルバム中最も気に入っているGraceなる曲もこの方法で作られているが、サンプリングの元ネタが、日本でもヒットしたコメディ・ホラー、『霊幻導師』のエンディング・テーマであることに気がついたときはびっくりした。

この『民族音楽をサンプリングして自分の作品に取り入れる』という手法が評価されたらしく、Peter Gabrielが主催したWOMADのフェスティバルなどでも演奏している。このWOMADというフェスティバルは、洋の東西、先進国/発展途上国を問わず、世界中の優れた音楽芸術を紹介することが大きな目的だったはずなのに、人種隔離政策真っ只中の南アフリカで開催された事があり、(後日記:Peter Gabrielの単独公演だった可能性あり。記憶が定かでない・・・)識者たちからは大顰蹙を買い、Peter Gabrielは一気に評判を落としてしまう結果となる。Vini Reillyも自分の都合のいいように民族音楽を借用し、弄り回しているだけなので、冷静に考えればフェスティバルへの参加資格なぞ無い、と思うのだが、大舞台に立てることが嬉しくて誘いに乗ってしまったのだろうか・・・

音楽製作の姿勢については賛同しかねる部分もあるが、俺がこのTHE DURUTTI COLUMNの出す音のファンであることは間違いなく、相当枚数のCDを所持している。「いったい自分はこの人の趣味にどのくらい付き合っているんだろう?」と思い、数えてみたところなんと17枚も持っていた・・・多分、新しい作品が出ればこれからも買い続けることと思う。

Fidelity

Fidelity

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Les Temps Modernes
  • 発売日: 2008/01/15
  • メディア: CD

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