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狂気の反復 [Ambient/New Age/Experimental]

最近、暇をみつけてはこつこつとアナログ音源のデジタル化を行っている。大抵はLPから録音したカセットテープで、CDで買い直していないものだ。即ち、「改めてCDで買い直す程の価値を見出せないもの」ということになるが、中には買い直そうにもCD化されていないものも結構あったりする。
例えばこれなんかもそうだ。

God Save The Queen – Under Heavy Manners / Robert Fripp

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KING CRIMSONを解散させたRobert Fripp御大のソロ第二弾。先日、デジタル化するために久々に聴いて、改めてぶっ飛んだ。

この作品はLPのA面とB面がそれぞれ別の作品になっていて、A面にはGod Save The Queen、B面にはUnder Heavy Mannersという名前が付けられている。

A面に収録されている3曲は、いずれもRobert Frippが開発したフリッパートロニクスという演奏機材を使用してのソロ作品。LPが手元にないので詳細は確認出来ないが、確かライブ演奏だったはずだ。とはいえ、若干のオーバーダブは加えられていると思う。
フリッパートロニクスとは、ざっくばらんに言えば、複数のエコーマシンをループさせてリアルタイムで自動演奏を行わせる機材だと思う。自分で演奏したフレーズを繰り返させ、その上に次々と新しい音を乗せていけば、「一人輪唱」が可能となるわけだ。フリッパートロニクス固有の音は無いと思われるが、主にギターに滑らかなディストーションをかけ、ボリュームペダルによってフェード・インさせていると思われる音が頻繁に使われており、この音は後のギター・シンセの萌芽を思わせる。また、ロングサスティーン中にスイッチのON/OFFによって発音をコントロールしていると思われる手法も使っており、これはオルガン風の印象を与える。いずれにせよ、およそギターらしからぬ音だ。当然、いわゆるロックの音ではない。曲もいわゆるロックではない。全体の印象は環境音楽っぽいのだが、音楽的な完成度うんぬんより、Fripp自身は自分が開発した手法・機材がどれだけの効果を生むのかをソロで実験したかったのではないか、と思われる。

さて、Under Heavy Mannersと銘打たれたB面の二曲だが、これは凄い(と、俺は思う)。ここでの手法はディスコトロニクスといわれるもので、(勿論、Frippの造語だ)俺の記憶が正しければ「フリッパートロニクスとディスコの亀裂に生じた音楽」だったような。(なんじゃ?そりゃ?)ま、後付け論理の詭弁家、Frippのゴタクはさておくとして、(ある意味)すさまじい音を出している。
前述のフリッパートロニクスの演奏の上に、オーバーダブされたシンプルでタイトなドラムとベース、多分、League Of Gentlemenでも使われていたRolland製のキーボード(シンセサイザーでは無い。2オクターブ程度の10万円程度で売られていた安物だ。これについては実機を触った事のある人にしか理解出来ない面白い根拠があるが、それは長くなるので省く)が単純なバッキングフレーズを演奏し、全体を支えている。曲調は不気味に明るいのだが、その上に乗るボーカルが「いっちゃって」いる…

「ラッパだ・・・・・・・ラッパの音が聞こえる・・・・・・・○○主義・・・・・・・××主義・・・・・・・△△主義・・・・・・・◎◎××主義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・▼▼主義!▲▲主義!あっあっあっ、あ~っ!あ~っ!あ~っ!・・・・・・・・・・・・・・」

と、まぁ、こんな調子の「狂った」語りと叫びが延々と続くのだ・・・・

つづく曲は最初からアップテンポでガンガンと演奏が進む。上に乗るのは効果があるんだかないんだか判らないフリッパートロニクス。ところが、あるときに気が付く。

「ちょっと待て…最初からギターが弾いているこの4つしか音程の無いフルピッキングの単純なスケール練習みたいなフレーズ、まだ一回も途切れていないよな…?あれれれれ?いつまで続くんだ?おいおいおい、これ、テープ操作でもフリッパートロニクスでもないぞ?実際に演奏しているぞ?おいおいおい、腕が吊るぞ?大丈夫なのか?こいつ、どうかしているんじゃないのか?なんでそこまで自分を追い込むんだ?」

とにかく、凄いのだ!全くメロディアスじゃないフレーズを8分に渡って延々と繰り返すのだ!正気の沙汰とは思えない。ここまで偏執的に弾き倒す根性。背筋が寒くなる。これは、明らかに苦行だ。そしてこのフレーズがリズム隊もろともフェードアウトすると、そこに残るのは静かなフリッパートロニクス。強烈なトランス感が漂う。

アルバム全体を通して、難解、メロディーらしきものは全く見当たらない。ポピュラーミュージック作品としては大問題作だと思う。CD化されていないのも当然。多分、この音楽を聴いたら、10人中9人が「なんじゃ?こりゃ?」と思うはずだ。しかし、俺は大好きだ。早くCD化してくれ。迷わず、買う。


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