雪景色に似合う音楽 (AMBIENT 3 : Day Of Radiance / Laraaji)

久しぶりに東京もけっこうな雪が降っている。全国的にみればこんなの雪のうちに入らないんだと思うが、東京で雪が積もるなんて年に１～２回程度しかないので、俺は雪が降ったときの対策なんぞ全くしていない。幸いにも今日は仕事が休みなので一日中自宅で好きな音楽を聴きながらゆっくり過ごすことにした。

で、朝から何回か聴いた音楽がこれ。謀らずも、前回に引き続き、アンビエント・シリーズになってしまったが･･･

AMBIENT 3 : Day Of Radiance / Laraaji

1980年発表、環境音楽の隠れた名盤（？）発売当時の邦題は「発光」だったと思う。

Brian Enoのアンビエント・シリーズの第三作目となるこの作品は、Laraajiなる演奏者名義のダルシマーの演奏を中心とした作品。Enoはプロデューサーとしてのみ名前を連ねている。このことが災いしているのか、この作品に対する評価はあまり聞かないし、俺自身もこの作品の存在は前々から知っていたものの、入手にかなりの時間がかかった。すっかり諦めていたところ、某大手ショップで偶然見つけ、値段も見ずに速攻で購入した。なにせ、大手ショップならどこでも設けてあるであろうEnoのコーナーに置いてないのだから始末が悪い。

この作品で演奏されているダルシマーとは、箱型の共鳴体の上におびただしい数の弦を張り、これを両手に一つづつ持った軽いバチで叩いて音を出す楽器だ。音量は決して大きいとは言えないが、非常に繊細で美しい音色は一回聞いたら忘れられない。この形状・原理の楽器はユーラシア大陸に広く分布しており、インドではサントゥール、中国では楊琴（こういう字だったっけ？忘れた）、他の･･･ええっと、どこだったっけ？チターと呼ばれている地域もあったはずだ。あれ？たしかスイスにも同じような楽器があったはずだが･･･そもそも、ダルシマーってのはどこの呼び方なんだろう？もしかしたらスイスなのかな？あれ？イランだったっかな？ちょっと調べれば判ることなのだが、別に楽器の解説をすることが目的ではないので、まぁいいや。

ジャケットの情報を見ると、どうやらアナログ時代にはA面にはDANCE、B面にはMEDITATIONと名前が付けられていたようだ。その名前の通り、前半の３曲はアンビエント･シリーズにしては異色なかなりリズミカルな印象の演奏が中心。結構いいテンポで淡々と演奏されている。それにしても凄い集中力だ。明らかにミニマル・ミュージックを意識しているようで、似たような短いフレーズをこれでもかとばかりに延々と繰り返しており、真面目に聴いていると眩暈がしてくるが、音の響きそのものが美しくて耳障りでないし、さらにまとまったメロディーらしきものが見当たらないので、聞き流すのに最適。この細かい演奏のパッセージはまさに雪の降る様子を連想させる。

後半の２曲は音量も控えめで、「MEDITATION」というタイトルの通り、かすかに響く美しい音、哲学的につむぎだされる散発的なメロディーが瞑想するのにぴったりだ･･･って、俺は瞑想なんぞしないので、これは憶測である。ま、いずれにせよ、時間に追われない休日に部屋からぼんやりと雪景色を見ながら聴くのに最適な音楽だ。

多分、何回かオーバーダブがなされており、時折ダルシマー以外の音も効果音的に聴かれる。Enoはプロデューサーとしてかなり越権しているのではないか。また、ダルシマーの弦にも何か異物を挟んだりして音を変えていると思われる部分もある。総じて、毎日聴きたい音楽ではないが、体調が悪いわけでもないのに何か特殊な事情で外出できず、一日家で過ごすときに聴いたら結構いいと思う。やっぱり、今日みたいな日が一番いいんだろうな。

実は、このLaraajiというミュージシャンのことは殆ど知らない。が、察するに、いわゆるアカデミズムの人ではないし、いわゆる民族楽器こそ使っているものの、多分ダルシマーという楽器を自民族の楽器として使うネイティブの人では無いと思われる。明確な根拠は無いが、音からスタンスの自由さが感じられるのだ。これは言い方を換えれば、「軽い」という事なのだが･･･勿論、それがいいかどうかは別の問題。
もし、Laraajiがダルシマーという楽器を自国の民族楽器とするその道の巨匠だったら･･･ゴメンナサイ。

Ambient 3: Day of Radiance

• アーティスト:
• 出版社/メーカー: EG
• 発売日: 1987/07/06
• メディア: CD