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The Road To Red、発売延期だって? [Progressive]

アマゾンからメールが来た。ま、表題の通り、The Road To Redが発売延期になったので納期が遅れる、と。
マジか、と、アメリカのアマゾンを見たら、なる程、確かに発売日が11月5日になっている。念のため、UKのアマゾンを見ると・・・
おいおいおいおい、UK盤は発売されてるじゃねーか!
 
どうなるんだろう?これもFrippの仕掛けた罠か?

いっそのこと、UKに発注を入れるか、現在検討中・・・


Road to Red Box

Road to Red Box

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Discipline Us
  • 発売日: 2013/11/05
  • メディア: CD



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The Road To Red、どうなっているんだ? [Progressive]

先月下旬にAmazonで予約した、King Crimsonの究極的マニア向け極悪非道の24枚組、The Road To Red、「とりあえず予約はしたが、発売までは一ヶ月あるのでそれまでキャンセルするかどうか考える」とは言ったものの、完全に購入する気になってしまった。

ファンとはかくも本当に悲しい(愚かしい)ものなのである。

いくらボックスセットとは言え、2万近い金額の音楽作品を購入するのは初めてで、ちょっとした罪悪感と高揚感があり、俺的にはちょっとしたイベントだ。

で、問題のThe Road To Red。公式HPでは14日発売とあった。と、言う事は、もう発売になっているはずだ。

しかし、Amazonでは22日発売とある。当初は業者が輸入し、Amazonが発送する、ということになっていた。が、現在はAmazonが輸入、発送することになっている。多分、予約数を代行の業者がとりまとめて輸入、Amazonに発送を依頼するものだと思っていたのだが、直輸入、直発送となった現在、納入時期が変更になっていないのはどういうことだろう?

「他の通販業者はどうなっているのだろう?」と、HMVのHPを参照したところ、発売日は15日だと言う。
タワーレコードにいたっては、発売日は10日、現在取り扱い中止って・・・どう解釈したらいいんだろう?悪いファクターだけを抽出すると、予約数だけで完売、以降は受け付けないってことなんだろうが・・・

 
Amazon、せっかく悩んだあげくに腹を決めたんだから、頼むから『ブツ』は確保してくれよ。
 
 
わくわくどきどきである。いや、『わくわく』はないかな。 


Road to Red Box

Road to Red Box

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Discipline Us
  • 発売日: 2013/10/22
  • メディア: CD



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The Road To Red / King Crimson [Progressive]


とんでもなくバカバカしいものが発売されようとしている。


The Road To Red / King Crimson

road to red.jpg

Robert Frippが行っている、King Crimsonが残した過去音源整理活動からまたまた出て来た作品集。

驚愕のその内容だが。

1974年の各地でのライブ、計16公演のCD、20枚
RED(CD)、1枚
DVDオーディオ、1枚
Blue-Rayオーディオ、2枚

メインとなるのは、当然、1974年のライブを収録した20枚のCDだろう。King Crimsonが、John Wetton、David Cross、Bill Bruford、そして勿論、御大Robert Frippで構成されていた時代。つまり、各メンバーの実験精神が、確かなテクニックと驚異的な集中力により、個性を犠牲にすることなく高いレベルで共鳴しつつ、勇猛果敢に突進していった黄金のクアルテットによる演奏だ。当然、悪いはずがない。この頃の魔術的な演奏は、ライブ盤、USAや、1973年から1974年の期間に、複数箇所で行われたライブ演奏をダイジェストでまとめた4枚組の作品、Great Deceiver等で聴く事が出来る。近年、Great Deceiverは2枚組の2セットに分けられ、とんでもなく安い値段で販売されているが、発売された時は「海賊盤でしか聴けなかった名演がまとめて聴ける!それもCD4枚も!」と、大興奮したものだ。

しかし、今回は合計24枚という非常識極まりないボリューム。目眩がしてきたぜ。

オフィシャルサイトを参照しながら検証してみたところ、20枚に渡るライブ音源は、DGMからダウンロード購入出来るものが半数。リスナーの嗜好を無視したカップリングで悪名高い、Collectors Club Seriesに収録されている公演もある。どうせ、4枚組のライブ番、Great Deciverと収録内容が被っているはずだと思い、調べてみたところ、案の定、Great Deceiverに収録されている公演のほとんどが含まれていた。と、言うより、Great Deceiverに収録されている74年の録音は全て網羅されている。勿論、The Collectors' King Crimson BOX 3 1972-1974とも1公演がダブっている。おまけにAsbury Parkでのライブ、つまり、USAの元ネタとなったライブまで収録されている。これはColectable King Crimson Vol.1に収録されていたものと全く同内容だ。さらにあろうことか、インプロが一曲加えられ、この公演の完全版としてご丁寧にも別ディスクになっている。結局、完全未発表の公演は6公演のみ。

これだけじゃないぞ。

なんと、DVDオーディオには同じくAsbury Parkの公演が手を替え品を替え4回も収録されているのだ。中にはわざわざUSAのアナログ盤から逆起こしした録音まで。
呆れるのはまだ早いぞ。さらに、DVDオーディオに収録されているのと全く同じ内容がBlue-Rayオーディオにも収録されているのだよ。つまり、このセットにはAsbury Parkの公演が合計10回、収録されているのだ。

アホかぁ〜

アナログ盤時代、Asbury Parkでの公演は、抜粋、加工され、前述のUSAという作品としてリリースされたが、長年CD化されなかった。結果、アナログ盤は高値で取引され、(実は、持ってる)アナログ盤から起こしたブートレグのCDが市場に出回るという異常事態になっていた。ボーナストラックが加えられ、Earthboundと共にようやくCD化されたのがたかだか10年ほど前の事だ。これらが長期間CD化されなかったのは、Frippが演奏の出来に不満があり、カタログ化を拒否していたからだと伝えられているが、だったら何で今更これでもかとばかりに何バージョンも出しまくるんだ。まったく理解不能。

さらに、REDもCDとして1枚のみならず、Blue-Rayオーディオにも、サラウンドミックスだの30th Aniversary Mixだの2013 Stereo Mixだのと3回も収録されている。

どうしたもんかね?

Robert Frippは音楽活動を既に止めていて、過去音源の整理くらいしか仕事のネタがないのは解るが、(注:2014年に再開)これはちょっとやり過ぎだ。特に、既に発表済みの録音を未発表音源との抱き合わせで付加価値をつけるやりかたはもはや詐欺に近い。クリムゾンキングの宮殿の6枚組をリリースした時には笑わせてもらったが、今回のでたらめさにはさすがに呆れた。


こんなもん、いったいどんな奴が買うんだ?




 
はい、私のような奴です。予約してしまいました。まだ発売まで一ヶ月あるので、それまでキャンセルするかどうか悩み続けるつもりです。


Frippさん、お願いですから、もう、これっきりにして下さい。

 

【後日記】この作品、聴いてみた感想はこちら


Road to Red Box

Road to Red Box

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Discipline Us
  • 発売日: 2013/10/22
  • メディア: CD




こんなもんに付き合えるか、という、まっとうなリスナーは、こっちでも充分お腹いっぱいです。

The Great Deceiver 1: Live 1973-1974

The Great Deceiver 1: Live 1973-1974

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Dgm / Inner Knot
  • 発売日: 2007/10/25
  • メディア: CD



The Great Deceiver 2: Live 1973-1974

The Great Deceiver 2: Live 1973-1974

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Dgm / Inner Knot
  • 発売日: 2007/10/25
  • メディア: CD



この時代のKing Crimsonのライブの入門としては、これでも充分かも。

USA: 30th Anniversary Edition

USA: 30th Anniversary Edition

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Discipline Us
  • 発売日: 2005/02/17
  • メディア: CD



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THRaKaTTaK / KING CRIMSON [Progressive]

充分なリハーサルを積んだバンドが行うインプロビゼーションでは、しばしば魔術的なことが起こる。かくいう俺ですら、ライブを録音してもらった自分自身の演奏を後で聴いて、なんでこんなフレーズを思いついたのか、なんでこんなことが出来たのか、なんでこんなコンビネーションがつくれたのか、驚いた事が何度かある。俺はこの状態を「音が天から降ってきた」と言っている。ある大げさな知人は「神がそこにいた」などとまで形容する。

ただし、これは、あくまでも前述の通り、『充分なリハーサルを積んだバンドが行うインプロビゼーション』に限定される。つまり、バンドが『あうんの呼吸』を獲得していなければ、こういったことはまず不可能だ。そして、忘れてはならない重要な要素は『引き際』だ。聴き手が冗長に感じた時点でそのインプロビゼーションは失敗なのである。


前々回も取り上げたが、ライブでのインプロビゼーションの面白さがKing Crimsonの存在価値を高めている、と思う。これはKing Crimsonの海賊盤の多さが如実に物語っている。
Robert Fripp本人もそのことは重々承知で、1996年、再々結成クリムゾンで恐ろしいライブアルバムを制作した。しかし、これは・・・


THRaKaTTaK / King Crimson

king crimson thrakattak.jpg

その存在を知ってはいたが、「この作品でも魔術的なことが行われているのだろうか?」との疑念を払拭出来ず、あえて長年遠ざけていた。

内容はと言えば、複数のライブの寄せ集めなのだが、ただの寄せ集めではない。Thrakという曲で演奏されたフリー・インプロビゼーションをシームレスに延々と繋げたものなのだ。

元々、Thrakは7分程の曲で、冒頭部分と収束部分に決められたアンサンブルが2分程度あるのだが、中盤の3分程度はかなりフリーな印象だった。で、ライブではこの部分で演奏時間を含め、予定調和を排除したフリー・インプロビゼーションを展開していたらしい。このフリー・インプロビゼーションを複数箇所でのライブから選び、50分以上(!)も繋げ、冒頭部分と収束部分で挟んだものだ。つまり、全行程、57分のThrakを聴く事になり、そのほとんどがフリー・インプロビゼーションというわけなのである。

いずれにせよ、シームレスに繋がっているのであるから、これは全編を通して聴かねばなるまい、と、最後まで中断しない覚悟を決めてオーディオ・セットの前に座った。


***** 警告。ここから先は、King Crimsonの盲信者はご遠慮ください *****














意を決して再生開始直後、圧倒的な演奏力に耳を奪われる。おお、これぞKing Crimsonだ。
再生開始10分後、イライラしている自分に気づく。
再生開始20分後、集中力が著しく低下、スピーカーから流れる音のどこかに救いを探し始める。
再生開始30分後、頭痛の兆しが見られる。と、同時に吐き気をもよおす。
再生開始40分後、このCDを聴き始まってしまったことを後悔するが、「ここまで来たら最後まで聴いてやるぞ」と、腹を決める。
再生開始50分後、プレイヤーの電源を落としたい衝動にかられる。が、「あと10分足らずの我慢だ」と自分を勇気づける。
そして再生開始55分後。「あと×秒でこの苦痛から開放される」とカウント・ダウンを始める。
再生終了。涙が止まらない。勿論、感動の涙ではなく、自分の愚かさを悔いての涙である。


上記は半分冗談、半分本当である。


全編を通してリズムらしい打楽器による規則的音響が聴かれるのは2~3回、(冒頭、収束部分は除く)それも1分程度。つまり、ノリで聴ける部分はほぼ皆無。Robert Frippが演奏するサウンドスケープシリーズで聴かれる音は勿論、Adrian Blewの極悪変態ギター、Bill BruffordとPat Mastelottoの瞬発力のあるドラム、およびパーカッション類、Tony LevinとTrey Gunnが奏するベースに留まらないなんだか分けのわからん音。これらが散発的に、時に連続的に交差し、ぐちゃぐちゃに歪み、怒鳴りちらし、笑い転げ、暴走し、衝突し、時に絡み合い、時に殴り合い、血反吐を吐きながらのたうちまわる。この陰惨な音響地獄が50分以上続く。





この責任をいったい誰がとってくれると言うのか?


非常によろしくない要素として、この時のメンバーは、ギター担当者、打楽器担当者、低音楽器担当者がそれぞれ2名いることが挙げられる。バンドアンサンブルにおいて役割が被る3組、合計6名の達人が自由裁量により即興演奏をおこなったらどうなるか、想像がつこうと言う物だ。さらに様々なエフェクターやら電子機器を使用するもんだから、聴いている方は「いったい誰がどんな楽器から出している音なんだ?」と、不安で不安でたまらない。唯一、ところどころで聴かれるBill Bruffordが演奏していると思われるシロフォンの音だけが心のよりどころだ。


実際にはアルバムは8トラックに分けられていて、前述の通り、1トラック目と8トラック目はThrakの冒頭部分と収束部分であるが、その他の6トラックは短くて4分弱、長いと11分超もある。そして、これらは、実際の演奏現場で出来てきた流れの中において収束に向かうのに適切である、と判断された長さ、及び展開すべき箇所のはずだ。勿論、それぞれのトラックが1回のフリー・インプロビゼーションの最初から最後までを収録しているわけではなく、繋げ易いところで切ったことは容易に察する事が出来るが。

しかし、「よし、このあたりが引き際だろう」との判断がなされ、中断されたはずのフリー・インプロビゼーションをそれが演奏された環境を変えて6回も収録するなんて、いったいどういうことだよ。演奏の流れを察しようとしても無駄じゃねーか。フリー・インプロビゼーションを行ったことの意味さえ自己否定する本末転倒な馬鹿げたことじゃねーか何考えてんだおめーらはこんなもん俺は受け入れられねーぞあー受け入れられませんともFripp翁がどんなご立派なお題目を並べ立てたって受け入れられねーよっ!


そういえば、現代音楽の作曲家、吉松隆氏が、著書、『魚座の音楽論』で、聴き手に極度の我慢を強いる種の現代音楽を揶揄し、音楽による兵器の開発を行っている研究所を取材する架空の物語をでっち上げていた。用途としては、主に拷問用につかうのだとか。


THRaKaTTaK、これ、まんま使えるんじゃねぇか?



追記:俺はKing Crimsonの大ファンであって、決してクリムゾンを貶めようとしているわけではない。素晴らしい作品も数えきれない程ある。しかし、この作品についてはどうにか好意的に消化しようと努力したが、断念した。




スラック・アタック(紙ジャケット仕様)

スラック・アタック(紙ジャケット仕様)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: WHDエンタテインメント
  • 発売日: 2008/03/26
  • メディア: CD


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NIGHT WATCH / KING CRIMSON [Progressive]

久しぶりに聴いちまったぜ。大満足。


NIGHT WATCH / KING CRIMSON

king crimson nw.jpg

CDとしての発売は1998年、演奏は1973年11月23日、アムステルダムで行われたKing Crimsonのコンサートをほぼ完全に収録した珠玉のライブ盤である。せっかく2枚組なのになぜに完全ではないか、というと、収録日当日、記録係のエンジニアが操作ミスをしてしまい、冒頭部分が欠損してしまったのだそうだ。スカタンめが。

それにしても、なぜに1973年の録音が四半世紀経過した1998年に発表されたのか?
この文章を読んでおられる大多数の方には周知の事実とは思うが、整理を行う意味でもあえて記述させていただく。

King Crimsonはそのライブでの演奏の質の高さ、インプロビゼーションの面白さから、おびただしい数の海賊盤が出回っており、さらにはオフィシャル盤として発売したもののCD化を見送っていたライブ盤のLPまでがコピーされ、海賊盤CDとなって市場に氾濫する、という滅茶苦茶な状態が長く続いていた。この状況に憤慨したKing Crimsonの主宰者Robert Frippが、海賊盤に対抗する手段として、録りためていた自分たちのコンサートの模様から、1973年から1974年までのライブをコンピレーションした4枚組という圧倒的ボリュームのセットをGreat Deciverというタイトルで発表、海賊盤業界に一定のダメージを与えた(近年、Great Deciverは2枚づつに分けられ、Vol.1、Vol.2としてかなり安い値段設定で販売されている)。与えたダメージが予想より足りなかったのか、それとも徹底的にやるべきだと判断したのか、今度は出回っていた海賊盤を逆起こしして正規盤として発表するなど、常軌を逸したとも言えるような徹底した海賊盤市場破壊活動に出た。このNight Watchもその流れの中で生まれてきた、究極の海賊盤対策作品だ。

なぜに究極的対策か、と言うと、この日のコンサートの模様はBBCが非常に良好な音質で放送、それが音源としてコピーされて数多の海賊盤を生んだという曰く付きの演奏である。つまり、内容の同じ海賊盤が何種類も存在するという、とんでもない状況になっていた。俺自身も海賊盤を扱う店でタイトル別収録日のリストを見て驚いた記憶がある。これらを一網打尽にしたかったのであろう。事実、このアルバム発売後、『伝説のアムステルダム・ライブ』を収録した海賊盤は一斉に値崩れを起こしたと聞いている。

実は日本の某放送局もBBCから正規音源の放送権を購入、細切れのMCを入れず、前半、後半にわけてFM電波に乗せて放送する、という快挙が行われた。当然、俺もカセットに録音してしばらく愛聴していたのだが、誤って消してしまったようで、長年「あの演奏をもう一度聴きたい」と切望していた名演奏である。まぁ、当時は90分のカセットが800円もした時代だったので、おおかた友人から借りたPink FloydかELPででも上書きしてしまったのだろう。

断るまでも無いと思うが、この時期のラインナップはRobert Fripp、John Wetton、Bill Bruford、そしてDavid Crossと、最高の集中力で最大のパフォーマンスを引き出していた黄金のクアルテットである。King Crimsonはその長い歴史の中でころころとメンバー、音楽性を変えているが、この時期のファンがいまだに最も多いのではないだろうか?


さて、肝心の内容の方だが、筆舌に尽くしがたい。では、どうにもならないので、少々。

叙情性と無機質な印象を併せ持つ独特な世界観。確固たるテクニックに裏打ちされた上での唯一無二なるオリジナリティ。元々作品化され、構成が決められていた曲でもインプロビゼーションの余白を残し、誰かがそこに切り込んでくると全員がフレキシブルに、かつ的確に対応する。その集中力と発想の柔軟さには改めて驚かされる。もちろんインプロビゼーションでの鬼気迫る演奏、お互いを尊重しながらも自己を犠牲にしないコンビネーションの取り方も素晴らしい。楽器演奏者として最高のパフォーマンス。決して聴き易い音楽ではない。が、音の存在感が圧倒的で、ポピュラーミュージック(プログレとて最終的にはポピュラーミュージックである)の枠でとらえる事にいささかの躊躇をおぼえてしまう程の威厳がある。このライブの翌年に発表された正規スタジオ録音アルバム、Starless And Bible Blackのベーシック・トラックにこの作品に収録されている演奏数曲が流用され、曲によってはそのまま収録されている事を考えればこの日の演奏の質の高さがわかろうと言うものだ。


この作品は好きな曲だけチョイスして気軽に聞き流すべきではない。全行程80分を最初から最後まで聴き通す覚悟で臨む事が最良であると考える。それでも冒頭部分が欠けてしまっているのが悔やまれるが、まぁ、コンサートに途中入場したと考えて諦め、音の格闘技に身を投じるのだ。それぞれのメンバーから繰り出される技を他のメンバーがどう受け取るのか、そしてかわすのか、感覚を鋭敏にして検証するのだ。音の洪水に身を任せる手もあるが、流れは決して単調ではない事は覚悟しなければならない。

とはいいつつ、この作品中、俺が最も好きなのはシームレスに繋がって行く、The Fright Watch、The Talking Drum、Larks' Tongues in Aspic Part IIの流れだ。音数の少ないフリー・インプロビゼーションが徐々に熱気を帯び、混沌の中からリズムが生まれる。ドラムとベースは細心の注意を払い最初は極力音量を上げずに息を殺すかのように、もしくは機会を伺うかのように演奏を続ける。Frippの奏するメロトロンに乗せてCrossのバイオリンが飛翔する。徐々にベースとドラムの音圧が上がってくる。と、スネアのフィルを合図にベースのディストーション・ペダルが踏み込まれ、演奏のテンションはマックスに突入。間髪を入れずFrippが時空が歪むような強烈なソロを展開する。が、Crossは一歩も引かない。しばらくの間、超ハイテンションなヘテロフォニーが展開されるが、突如としてリズムが中断、ギターとバイオリンの絶叫のような連続音が絡み、ほどなくFrippのギターからメタリックなリフが放たれ、全楽器が怒濤のアンサンブルに突入していく。

まさに神懸かり。



この作品発表後、Frippは過去音源の整理・商品化をする過程でファンを軽視した無軌道なことを始め、多くのファンから失望されるが、それはさておきこれは名演にして名盤。プログレに興味があるなら、是非是非聴いてほしい。

え?Larks' Tongues in Aspicはアルバムで持ってるから必要ないって?いやいや、俺が言っているのはそういう事ではない。勿論、あれは素晴らしいアルバムだし、俺も大好きだが、この作品での、このライブでの、この演奏のダイナミズムが素晴らしいのだ。King Crimsonのファンならわかってくれるはずだ。



Night Watch

Night Watch

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Discipline Us
  • 発売日: 2006/10/31
  • メディア: CD



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