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Welcome Oblivion / How To Destroy Angels [Rock]

というわけで、ようやく到達した。

Nine Inch Nails(以降、NINと略す)名義での活動を封印し、細君、Mariqeen Maandigをメイン・ボーカルに据えたTrent Reznorの新プロジェクト、How To Destroy Angels、初のフルレンス・アルバム。 このプロジェクトも始まって既に3年が経過、2枚のEPを発表後、ようやくの本格始動である。
 

Welcome Oblivion / How To Destroy Angels

HowToDestroyAngels Welcome.jpg

周知の通り、Trent Reznorが主宰していたNINは、実質、Trent Reznorのソロ・プロジェクトであり、パーマネントなメンバーは不在で、作品創りやツアーに際しては、その都度、必要なミュージシャンを雇って活動を行っていた。傑作、Fragileのレコーディングでは、Adrian Blewまでが参加している。あ、Tony Levinも参加していたかも。そうそう、名前は忘れたが、David Bowieのグラム時代の名盤、Aladdin Saneで異常にテンションの高いプレイでアルバムの印象を決定づけたピアニストも、相変わらず存在感のあるプレイを聴かせていたっけ。

ま、それはさておき。

今回のHow To Destroy Angelsなるプロジェクトの新譜のスリーブには、Trent Reznorを含め、4名の名前がクレジットされている。が、担当楽器が記されていない。Mariqeen Maandigはメイン・ボーカルを担当しているのは判っているのだが。
オフィシャルサイトを見たところ、4名が勢揃いしたグループ・ショットや各メンバーの個別のポートレイトが載せられていることから判断するに、How To Destroy Angelsはパーマネントなメンバーを擁するバンド、という位置づけなのだろうが、ちょっと調べてみたところ、一名はNIN時代からのサウンド・クリエイトに携わっており、もう一名はやはりNIN時代からアート・ディレクションを行っていた人物であることが判明。つまり、重要な裏方もメンバーという位置づけにしているわけだ。

さて、肝心の音の方だが。

NIN時代と比べると、打ち込み比率が一段と高くなり、エレクトロニカ色が強くなっているが、メロディーと言い、聴く者を不安に陥れる不穏な音響の頻出と言い、陰鬱な雰囲気と言い、相変わらずのTrent Reznor節が炸裂。正直、「女性がボーカルのNIN」という解釈も不可能ではない。ま、この点については想定の範囲内。

だが、決定的にNIN時代と異なることがある。暴力的な音響、威圧的な表現がほとんど聴かれない事である。耳をそばだててみれば、以前のような歪んだギターによる音響(もしくはギターの音をサンプリングした後に一旦解体、打ち込みで再構築した音響)も皆無ではないのだが、音のエッジが丸くなっており、音量も控えめで、威圧感を強調するようなインダストリアル・メタルなことをしていない。この『音の平準化』とも言える傾向は曲のリズムにも表れており、アップ・テンポな曲、力強いビートの有る曲は皆無。つまり、『熱くなれる曲』が無いのは個人的には残念。

これらの変化は、ボーカルを担当するMariqeen Maandigの表現の特性への配慮、このプロジェクトのコンセプトの遵守、そしてTrent Reznorの嗜好の若干の変化等に起因していることは容易に察知できるし、これらの要素が密接にリンクしてこの音になっていることも解る。結果的に聴き易さを実現している反面、NIN時代と比較すると表現の幅が狭まってしまっているような気がする。

やめて欲しかったのは、Trent Reznor自身も部分的にボーカルに参加していること。Trent Reznorの夫婦デュオなんて誰が聴きたいと思うか。勘違いも甚だしい。

とはいいつつ、作品自体は充分な完成度を保っており、俺もそれなりに気持ちよく聴いている。

結論。興味があるなら出来だけ早いうち聴く事を勧める。このプロジェクトはそう遠くない将来に破綻する危険性をはらんでいるような気がする。過度に商業主義に迎合せずとも最先端に位置している今現在の輝きを検証すべきだ。


Welcome Oblivion

Welcome Oblivion

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sony
  • 発売日: 2013/03/05
  • メディア: CD



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