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FORTUNE / ROBIN GUTHRIE [Ambient/New Age/Experimental]

Robin Guthrieが知らないうちに新譜を発表していた。俺はCocteau Twins時代から彼のファンであり、ソロアルバム、EP作品、他のアーティストとの共同名義作品も知っているものはほとんど所持している。当然、今回も購入。

しかしながら、ここ数年の彼のソロ作品は、音響的にはそこそこ魅力的だが、あまりにも似通っていてさらっと短い曲が多く、アルバムを通して聴いても満足感を得られない傾向があった。「今回も似たようなことになっていないだろうか?いや、多分、そうなっているのではないか?」との疑念と覚悟を持って聴いた。

FORTUNE / ROBIN GUTHRIE

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1曲目。密やかなドラムの音でアルバムは幕を開け、注意深く曲は進行していく。が、最初の展開部分で既にRobinのカラー全開となる。終盤部分、繰り返しのパターンがあるものの、盛り上がることもなく、あっさり終わる。

2曲目。控えめなドラム、クリーンなギター・サウンドのワルツ。展開部分では不穏なコードを一瞬使うところといい、まるでCocteau Twinsのようだ。これも盛り上がる事もなく、余韻を残さずあっさり終わる。

3曲目。若干、気を持たせるようなアンニュイな始まり方。リズムの取り方に若干の工夫の跡が聴いて取れるものの、もちろん、大きな展開もなくあっさりと終わる。

4曲目。冒頭部分にきかれるシンセとギターのフリーフォームな絡みはなかなかいい、と、思いつつ聴き進めていると、そのまま終わってしまう。まぁ、アルバムのバリエーションとしてはありかな。

5曲目。これ、困ったな。他の曲同様、過剰なまでのリバーブがかけられたギターが全編を支配したスローな典型的なNew Age風の曲。何の盛り上がりも大した進行も無く終わる。

6曲目・・・もうこれ以上言及する必要も無いだろう。とにかく、最後までこんな感じです。


全体を通して聴いてみた印象。彼らしい空間的な広がりを重視した心地よい音がアルバムを支配している。ギターの音はどこまでもクリーン。いや、真にクリーンなわけではなく、コーラス・エフェクトやディレイ、リバーブを多用した奥行きのある音響設計。ま、Robin Guthrieの作品を聴いた事のある人なら誰でもわかる、おなじみの「あの音」である。ボーカルは不在であり、ギターのメロディーも曖昧なのに、メロディーラインを想起させられる、誘導型の音作り。これは才能と言っていいのだろう。


でも、思ってしまう。「これ、何かのカラオケですか?それとも未完成なんですか?」


プレイ・スタイルや音響設計方法は長年のキャリアの中で確立されているわけであるからして、これを「マンネリだ」と揶揄するのは適切ではないかもしれない(って、以前、Robin Guthrieの作品を取り上げたときもほぼ同じ内容の事をしたためていた)。これが彼の芸風、シグネイチャー・サウンドであることは間違いない。

しかし、残念なことに楽曲に魅力が乏しい上、編曲が性急すぎて結果が見えてこない。斬新さもなければ毒も無い。少なくともこれはRockではない。Ambient的に聴き流そうとしても進行が陳腐で短か過ぎる。
正直言ってこの数年間、煮え切らない同じような音を何作も聴かされ続けて、うんざりしている自分の気持ちを誤魔化せない。少なからず影響を受け、追いかけて聴いていたアーティストだけに本当に残念だ。


もちろん、彼がNew Waveの騎手、Cocteau Twinsの重要メンバーにして、後のShoegazerに多大なる影響を与えた偉大な人物であることには間違い無いし、この評価が変わる事は考えられない。未だに衰えることのない製作意欲にも頭が下がる。
しかし、ここ数年のソロ作品を客観的に聞き直して、極度に音響技術に頼り、楽曲を軽視した現在の路線を続ける事に将来があるかどうか考えてみて欲しいと思う。作曲は誰かに任せるとか、チェンバー・オーケストラと競演してみるとか、ちょっと考えればいくらでも今の音響的な良さを損なわずに新しい境地は切り開けると思うんだよなぁ。


次回作に期待・・・するとガッカリさせられるような気がしないでもないが、多分、俺は次回作も買うんだと思う・・・


あ、色々と否定的な事を書いたが、今までRobin Guthrieを聴いた事の無い、音楽に「癒し」を求めているNew Age Musicのファンには推奨します。非常に解り易く、包み込んでくれるような優しい音響で、何も考えずに音に身を任せれば夢心地になれるでしょう。

 
* * * * * * * * 追記 * * * * * * * *
 
 
先日、ある記事に、見ず知らずの方から「2010年の作品のレビューを2012年にやってんじゃねーよ遅れてるぞお前」というような、そこはかとなく悪意を感じるコメントを頂戴しました。ご指摘ありがとうございます(笑)。ムカついたので、即時、コメントは消去させて頂きました(爆)。
しかし、そもそもこのブログは最新の音楽情報を提供することを目的としておりません。表題下にも、「昔聴いていた音楽にまつわる記憶や、最近聴いた音楽の紹介を中心に音楽生活を気ままに綴る」と、お断りしているように、これからも時代とは無関係に好きな音楽を好きな時に取り上げて行くつもりです。あしからずご了承のほどを。


Fortune

Fortune

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Soleil Apras Minuit
  • 発売日: 2012/11/27
  • メディア: CD



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