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バンドって楽しい…か?(其の四) [音楽一般]

さらに続く。

さて、ボーカリストも決まり、俺達はライブハウスを中心に活動を始めた。

最初は平日昼間の枠が中心だったが、(新人バンドはまずここからスタートである)回数を重ねる毎に観客動員は増えて来た。

新しいアマチュアバンドがファンを獲得するのはなかなか大変である。ポスターやチラシを作ってもあまり効果は期待できない。勿論、過去に在籍していたバンドのファンに連絡を取り、「新しいバンドを作ったから観に来てくれ」と電話を架けるダイレクト攻撃も行ったが、俺自身はこの方法は好きではなかった。なぜなら、客席が知人ばかりの「馴れ合いライブ」になるからである。もっとも有効な手段は似たような音楽性で動員力のあるバンドの前座を行い、ファンを「奪う」ことである。

ま、様々な手を尽くし、地道に月2~3本のライブ活動を行い、ファンもそこそこ増えてきて、土曜の昼の枠でワンマンを張れるくらいまで成長してきた。ドラマーの「叩きまくりたい衝動」は相変わらずだったが、容赦なく「ダメ出し」をしたり、根気強く「ツボ」を確認しあったりした結果、スケール感を失わずにバンドのアンサンブル力は飛躍的に向上、プレイの呼吸もバッチリで、お互いのプレイの様子を伺いながら、ちょっとしたアドリブも打ち合わせなしで入れたり出来るほどになった。当時の俺が理想としていた音がほぼ実現していた。


「これはいけるぞ」、そう思っていたある日、終焉はいきなりやってきた。


その夜の演奏が行われるライブハウスに行くと、リーダーが俺に宣言した。

「このバンドは解散する」
「え?今なんて言った?」
「もう、このバンドは解散する」
「おい、ちょっと待てよ。解散するかどうかなんて、俺は相談を受けてないぞ?いつ決めたんだよ?」
「このバンドは俺が作ったバンドだ。だから俺に解散権がある」
「そういうことじゃないだろ?確かにお前はリーダーだけど、なんでもかんでもお前のいいなりって訳にはいかねぇぞ」
「でも、もう続行不可能なんだ」
「何でだよ?」
「実は、ドラマーが最近天狗になってきた。年上の俺達にもタメ口叩くし…」
「ああ、それは俺も気にはなっていた。でも、Cozy癖が抜けていないとはいえ、奴のテクニックはなかなかだ。それにお前はリーダーだろ?奴の態度を正すのはお前の役目だろ?」
「俺もそう思った。で、『世の中はそんなに甘くない』って事を教えるために…」
「何をしたんだ?」
「プロのオーディションを受けさせた」
「まさか…」
「…合格しちゃった…」
「…(唖然)…」
「落ちると思ったんだ。そうすれば奴も謙虚になるんじゃないかって…」
「…こ~の~、バカヤロー!余計なことしやがって!」

激怒した俺は奴の襟首を摑み、上方向に力を入れた。


あ、持ち上がっちゃったよ。俺はシュワルツネッガーか?


驚いたライブハウスのスタッフ達、バンド関係者が「やめてください!」と俺を止めにかかり、どうにか投げ飛ばさずに済んだが…いやぁ、人間ってのは本気になると普段の能力を超えた力が出せるもんだ、火事場の馬鹿力ってのはこういうことを言うのか、と、納得…してる場合か~!

これにて、了。
 
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