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「展覧会の絵」/ELP [Progressive]

数日前にEmerson Lake & Palmerの「展覧会の絵」に触発されたと思われるバンドを取り上げた。ちょっと気になったので、久しぶりに聴いてみた。

Pictures At An Exhibition / Emerson Lake & Palmer

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1971年発表、Progressive Rockの巨人、ELPこと、Emerson Lake & Palmerの代表作である。

この作品はELPの3作目にあたる初めてのライブ盤であるが、実際の収録は2作目のTARKUSの製作前に行われている。大ヒットを記録したがようだが、本国イギリスでは廉価盤としてかなり安い値段で発売されていた、と聞いたような記憶があるが定かではない。

断るまでもなく、ムソルグスキー作曲、ラベル編曲のクラシックの有名組曲、「展覧会の絵」が元になっているが、原曲が全て網羅されているわけではない。俺自身、このアルバムを聴いてから原曲に興味を持ち、オーケストラで全曲演奏されているレコードを入手して検証済みである。
また、原曲には含まれていないオリジナル曲も何曲か演奏されており、なんと、アンコールにはチャイコフスキーのバレエ組曲、「くるみ割り人形」の一部からモチーフを得た変奏曲がホンキー・トンク風に編曲されて演奏されている。この曲にはNut Rockerという名前が冠され、シングル・カットもされてヒットしたが、実はこの曲、1960年代のR&Rバンドのカバーだったりする。

演奏内容はほぼ完璧。ライブゆえの荒さはほとんど感じさせない。素晴らしい集中力である。
Keith Emersonの演奏するハモンド・オルガンは超絶、かつ過激。ドロー・バーを自在に操り、柔らかい音からパーカッシブな音まで実に様々な音色を聴かせる。また、要所ではムーグ・シンセサイザーを効果的に使い、独創的なソロを聴かせる。アルバム終盤、The Great Gate Of Kievでは「お約束」の機材の虐待を行い、破壊的な音響を出している。
弦楽器、ボーカル担当のGreg Lakeもワウ・ペダル、ファズを有効に使い、ベースらしからぬ音でバンドの音にカラフルさを添え、The Hut Of Baba Yagaなどでは絶大な効果をあげている。また、アコースティック・ギターの腕前もなかなかのもので、バックを伴わない弾き語り、The Sageでは叙情的で非常に雰囲気のある演奏を披露している。
Carl Palmerのドラムは若干流れ気味だが、これはスタジオ録音した他の作品でも同じなので、彼のカラーなのであろう。当時は「Carl Palmerは下手だ」などと酷評する輩もいたが、それはEmersonの超人的プレイと比較しての話であって、時として無謀ともいえるあの破天荒な演奏をサポート出来ているだけで充分評価に値する。

いずれにせよ、クラシックの名曲をロック的解釈で再現したことは当時としては画期的な試みであり、まさにProgressiveであった。また作品としての仕上がりも良く、このアルバムをELPの最高傑作に挙げるリスナーも少なくない。プログレ・ファンでこの作品を聴いていない者は…まさか、いないよな。


ところで、一曲目のPromenadeはオーケストラ版の編曲では管楽器を使い、華やかなファンファーレ風に演奏されるのだが、ここではコンサート会場に設置されている本物のパイプ・オルガンを使い、荘厳な雰囲気を演出している。つかみとしては充分すぎるほど格調の高さを感じさせる。が、その直後に演奏されるThe Gnomeまでの間に何故か短いドラム・ソロが演奏されている。この部分はムソルグスキーのピアノ組曲版には勿論のこと、ラベルが編曲した交響曲版にも存在しない。当時は不思議に感じたが、後になぜだか気がついた。
通常、大きなコンサート・ホールではパイプ・オルガンの演奏台は高いところに位置している。そして、バンドの機材は通常の舞台に設置されていたはずだ。つまり、パイプ・オルガンの演奏が終わってすぐにステージまで移動するのはイリュージョニストでもない限り(笑)不可能なのである。このため、Keith Emersonがオルガンの演奏台からステージに移動するまでの時間稼ぎとしてこのドラム・ソロは付加されたのだろう。
収録時には、堂々とパイプ・オルガンの演奏を終えたEmersonが慌てながら階段を駆け下りてくる姿が見られたことだろう…想像するとなんだか可愛いぞ(笑)。



Pictures at an Exhibition

Pictures at an Exhibition

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sanctuary
  • 発売日: 2004/11/16
  • メディア: CD



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