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愛器(ルバブ) [ガムラン]

ルバブはバリのガムランの編成中、唯一の弦楽器。アンサンブル中ではメロディー、オブリガートを担当する。

で、これが13~4年前、俺が初めて入手したルバブである。


購入しに行った店には4~5本のルバブが置いてあり、全ての楽器を手にとって音を確かめた。とは言っても、初めて触る楽器なので、まともな音は出るわけなかったが、その中でも、まぁまぁこいつならいけるんじゃないか、という直感で選んだのがこの個体である。

楽器の構造は胡弓類とほとんど変わらない。中を空洞に彫り、表面に牛の内臓膜を張った木製の共鳴体を胴体とし、棹と胴体の下部にある脚部は胴体部分を貫いている支柱によって接合されている。

棹の上部には糸巻きが左右に不必要な程長く張り出している。さらに棹は上部に向かって先端に行くに従ってしだいに細くなりながら20センチ以上も長く延びているが、これは単なる装飾以上の役目は果たしていない。

弦はブロンズ製の長い1本を脚部にある支点で折り返し、2本にして張るのが本来の形であるが、バリではギターの弦、もしくは金属製の釣り糸が使用されることが多い。
演奏方法は専用の弓によって弦を擦り、弦の振動はコマ(ブリッジ)によって胴体に張った共鳴膜に伝達され、中空の胴体によって増幅される。弓の弦(つる)は緩く張られており、指で張力を与えて演奏を可能ならしめる。
弓の運びは弦(つる)を限界まで使ってゆっくり動かすことがよしとされ、このため、曲のリズムと弓の運び(Bowing)は一致しないことが多く、同じ弓奏楽器であるバイオリンなどとは異なる。さらに弓を返すタイミングは演奏者の裁量に任されているため、一見すると演奏タイミングが曲とずれているように見える人が多いようであるが、逆に曲に合わせて弓を左右に動かすと「せわしなくてみっともない」と非難を浴びることになる。また、実際の発音タイミングにおいても、曲によっては進行にぴったりとは合わせず、微妙にワンテンポ後ろにずらすのがよしとされる場合もある。

この楽器の演奏で一番難しいのは、弦を棹に押し付けずに演奏する、という点である。これは中国起源の二胡などとも同じであるが、力の入れ具合によって音程が著しく変化する。つまり、安定しない。当然であるが、音程を区切る「フレット」はないし、おおよその音程の目安となる目盛り状のものもない。さらに言ってしまえば、その構造上、音は前に向かって発せられるにも関わらず、演奏者は楽器を立てて共鳴膜部分を前にして構えるため、さらにバリのガムランで使用する楽器中、決して大きな音がするとは言えないので、実際のアンサンブルの中で演奏するとルバブ奏者にはほとんど自分の演奏している音が聞えない。このため、あまり熟達していない演奏者が、自分の出している音に自信を持てずに、正しい音を探ろうとして指を迷走させている「いたましい」姿もたまに見かける。また、かなり熟達した演奏者でも往々にして音が外れているように聞えながらも堂々と演奏している場合もあるが、バリ人の耳では許容範囲である場合も多いようである。

いずれにせよ、楽器の特性を知らない者がその演奏を聞くと「へたくそ」と思う場合が多いようであり、ある意味損な楽器ではある。が、ガムランの大音量が展開部分、収束部分で小さくなったとき、この楽器の出すむせび泣くような音がすーっと流れていると、演奏全体に甘く退廃的な雰囲気が漂い、なんともいい感じなのである。
俺がこの楽器を勉強し始まった13~4年前は、少なくとも俺がバリでの拠点にしているウブド近辺でこの楽器を演奏する者は非常に少なく、(潜在的にはいたのかもしれないが)演奏会を観にいっても実際にルバブの演奏を聴けることはまれであったが、この10年くらいで急激に人気が出てきて、演奏者人口は爆発的に増え、多くの楽団が編成に加えるようになった。

さて、写真では棹の部分を除くかなりの面積が金色に塗られており、さらに胴体部分は細かい細工が施され、これまた金色に塗られた牛の皮が覆っているが、購入したときはこれらの装飾はなく、至ってシンプルな外観だった。

ほぼ同型のルバブの初期状態はこんな感じである。

 

これらの装飾、彩色は、「バリのガムランの楽団で一緒に演奏するならガムランの楽器らしく見た目も派手にしなきゃ」という、楽団員の圧倒的多数意見に押し切られて施したものである。最初はしぶしぶ始めたのだが、やり始めると止まらなくなるもので、何回か塗りなおしているうちに金色の領域はどんどん広がり、現在ではご覧の通りになってしまった。因みに、糸巻き部分についているオレンジ色のボンボンはヤマサリのメンバーが勝手に付けたものである・・・

勉強を始めて2~3年はなかなか思ったような音色が出せず、「楽器自体に問題があるのではないか?」と疑った。確かに、超一級品だったわけではないのだが、その後、練習を重ねるうちに徐々に音が安定して来て、今では音量、音質、共に満足の行く楽器に成長した。
現在では10数本のルバブを所持しており、状況によって使い分けたりもしているが、俺は最初に購入したこのルバブが一番好きだ。たまに、「そのルバブ、売ってくれ」などという人もいたりするが、勿論、お断りである。普段は日本に持って帰ってきているが、長期でバリに行くときには持って行くようにしている。なぜ短期の滞在では持っていかないのかというと、この楽器は気候の変化の影響を受けやすく、バリに持って行くとコンディションが安定するまで4~5日(場合によってはもっと)かかるからであり、楽器が本当にいい状態になる前に滞在が終わってしまう可能性が高いからである。そういうわけで、短期滞在の時は師匠に預かってもらっているコンディションの安定したスペアのルバブを使用するようにしている。

このルバブはどんなにボロになろうとも、死ぬまで使い続けるつもりだ。もし、師匠より先に俺が死んだら、このルバブは師匠に譲ることになっている。


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