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Ride The Lightning / Metallica [HM/HR]

個人的な話であるが(そもそもブログ自体が個人的なものであるので、改めて断るまでもないが)、80年代中盤の一時期、意図的に『ギターが音響的主導権を持った音楽』を避けていた時代があった。主たる理由は、自分がロックを必要以上にギター中心に聴いており、曲本来の形を理解していないのではないか、という疑念を払拭できなくなってしまったからである。
幸いにもというか不幸にもというか、当時はロックとポップの境界線が限りなく曖昧になっており(何回このフレーズをこのブログで使っただろう?)、ロックの体裁をもった大衆歌謡がニュー・ロマンティックとしてもてはやされ、骨のあるロックはメイン・ストリームからほぼ姿を消していたが、気持ちよく聴くだけだったら音楽の選択肢には事欠かなかったし、様々な事情があり、不本意ながら一時音楽活動を続けられなくなってしまい、未練を断ち切るためにギターオリエンテッドな曲を避けていたことも否定できない。
いずれにせよギターの音を完全に避けることは不可能であったが、チャラチャラした音のカッティングをしているのを聴くとそれだけで拒否反応が起こり、気持ち悪くて聴き続けることが出来なくなってしまうこともしばしばだった。もちろん、当時のニューロマにカテゴライズされたバンド全てがダメとは言わないが、あんな音が『センスがいい』とされ、もてはやされていた時代があったんだよなぁ・・・

ところがそんなある日、NHK-FMが2時間以上に渡り、現在進行形のHEAVY METALを特集するというとんでもないことをやらかした。そして、幸か不幸か、俺はそれを聴いてしまったのである。長期間、硬質なロックに触れていなかった俺にとって、それはとてつもない衝撃だった。


俺のメタル魂に再び火がついた。


特に、METALLICAなるバンドの曲には仰天した。スネアのタイミングはいままでの経験則では理解不能、ギターのリフもあまりにも早すぎ、ボーカルもどこが表でどこが裏か判然としない。しかし、その曲は圧倒的な力で俺をねじ伏せた。(後にこの曲はFight Fire With Fireであったことが判明)
昔からハード・ロック系バンドのアルバムには必ずと言っていいほど一曲は早い曲があり、俺はそういった曲が醸し出す暴力的イメージを気に入っていたがこれはレベルが違う。何か俺の知らないところで革命的なことが起こっていたらしい。Dead Or Aliveなんぞ聴いて横にゆれて気持ちよくなっている場合じゃないぞ、と、俺は輸入盤を扱っているショップに突入し、電撃購入。

RIDE THE LIGHTNING / METALLICA


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Ride the Lightning

Ride the Lightning

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Universal/Mercury
  • 発売日: 1990/10/25
  • メディア: CD


スラッシュ・メタルの名盤にしてMETALLICAの出世作である。


このアルバム、とにかく徹頭徹尾やかましい、と言いたいところだが、メロディーを軽視した一本調子のどやかましいスラシュ・サウンドに徹しているかというとそんなこともなく、Fade To Blackのような意外にもバラード風のドラマチックな展開の曲もあり、旺盛な探究心を感じさせる。この姿勢には非常に好感が持てる。アルバム全体を聴くと、若さに起因すると思われる未熟、もしくは無謀な部分も散見され、アレンジがうまくまとまっていない局面(特にリード・ギター)も皆無とは言えないが、まぁこれはデビュー2作目ということを考えれば充分許容範囲である。かなり真面目に創られており、スラッシュ・メタルとしては荒削りな部分を程よく残した良質なアルバムといえる。

このバンドで特筆すべきはそのボーカル・スタイルである。サイド・ギターも兼任するJames Hetfieldのドスの効いた声で唸り上げるようなスタイルは少なからず衝撃であった。それまでのヘヴィ・メタルの典型的スタイルは高音でシャウトするのが王道であったが、高音が出なくてもメタリックなサウンドが成立する、ということを証明したわけで、彼に救われたボーカリスト志望の若者は相当いたはずであるし、その後のシーンにも大きな影響を残した。
ギター・アレンジは勿論、低音弦を中心としたリフが中心であるが、意外にも要所ではメロディアスなプレイを行っており、ツイン・ギターでハモるなど、小技も多用しており、試行錯誤の跡が聴いてとれる。

とはいいつつ、やはりラウドでスピード感がある曲が多い。特に冒頭のアコースティック・ギターに導かれて始まるFight Fire With Fireの破壊力は尋常ではない。が、若干リフが単純であり、メロディーもはっきりしないので、聴いていて時折リズムの裏と表が混乱する。まぁ、このスピードではこれ以上複雑なリフを弾くことは難しいだろうし、本人たちも承知の上で他の要素を犠牲にし、スピードを最優先させたのだろう。

これだけ早い演奏を行うと、展開部分でリズムが流れてしまい、曖昧な印象になりがちなのだが、バンドは素晴らしいアンサンブル力でこれをくいとめている。これに大きく貢献しているのは間違いなくドラムのLars Ulrichであろう。過剰なまでの手数、足数(という言葉がるかどうか知らんが) を使用した豊かなフレージングは乱れることなく、素晴らしい音圧をバンド・アンサンブルに与えることに成功している。かなり計算してプレイを行っているようで、これだけ無謀に叩きまくっているのにリズムが雪崩現象を起していないのは超人的である。

この作品、Thrash Metalのアルバムとしては歴史的価値のある重要な作品ではある。が、なぜこれをあえて大傑作と言わないか?

それは、次作のMaster Of Puppetsこそがそれこそ大傑作だからである。機会があれば取り上げてみようと思う。


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