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Scary Monsters / David Bowie [Rock]

意識してそうしているわけではないのだが、最近、このブログではやたらEnoやRobert Frippの出現率が高く、ついにDavid Bowieまで出てきてしまった・・・ええい、ここまで来たら一気に行ってしまおう、と、昨日聴いたのがこれ。

俺的DAVID BOWIE最後の輝き。くう~(涙)。

SCARY MONSTERS / DAVID BOWIE

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いわゆる『ベルリン三部作』を完結させた後、その延長線上とも思われる路線で発表したのがこの傑作の誉れ高いScary Monstersである。

発表は1980年、時はまさにニュー・ウェーブが注目を集め始まった時期であった。この作品発表当時、一部の評論家が、『Bowieもニュー・ウェーブ・ムーブメントに迎合した』などと暴言を吐いた記憶もあるが、いったいどこがじゃ!と、言いたい。自らは音楽的創作活動も出来ないのに人の芸術表現にあれこれ難癖をつけることを生業にしているあさましい寄生虫的評論家のたわ言以外の何物でもない。最新の機器を使って音響的に表現の幅を広げたら、その時の流行に迎合している、とくくられてしまうのか?アホくさ。もちろん、当時は『ニュー・ウェーブ』はビッグ・セールスのキーワードであったことは間違いないが、そういう的外れなことを言ってBowieを持ち上げたつもりだったのだろうか?それともおとしめたつもりだったのだろうか?小一時間問い詰めたい。

はっきりと言ってしまおう。この作品は、『ベルリン三部作』で培ってきた様々な表現方法、精神的財産を取捨選択し、1980年時点のBowie型にリニューアルし総括した作品であり、Bowieの頭の中にはニュー・ウェーブ・ムーブメントへの迎合意識などこれっぽっちも無かったに違いない。そもそもBowieが流行に迎合するような体質なら、『ベルリン三部作』などという大冒険など出来たはずもない。

初めてこの作品を聴いたときの衝撃は今でも忘れられない。一曲目、It's No Game冒頭の「シルエットや影が革命を見ている・・・」という日本語のナレーションに驚き、最終曲、It's No Game(Part2)の最後、オープン・リールのテープが空回りする音で幕を閉じる46分間で、いったい何回鳥肌を立てたことか。
音の方はと言えば、再びRobert Frippが弾きまくっている。それこそ人様のアルバムであることを忘れてしまったかのように全開で弾きまくっている。特に表題曲、Scary Monstersでの勇猛果敢なプレイは特筆に価する。また、冒頭のIt's No Gameでの腹の据わったプレイも素晴らしい。また、かつての名曲、Heroesを更に発展させたようなTeenage Wildlifeでは、他のプレイヤーもFrippのアプローチに触発されたかのようなフレージングを聴かせており、非常に興味深い。
しかし、この作品で注目すべきは、アルバム中最もポップなテイストのAshes To Ashesであろう。これはシングル・カットもされヒットしたが、その歌詞が実に意味深なのである。なんと「トム少佐はヤク中」という下りが出てくるのである!
トム少佐とは、断るまでも無く、Bowieを一躍有名にした名曲、Space Oddityに登場する宇宙飛行士のことである。彼の乗り込んだロケットは有人打ち上げに成功し、一躍時の人となるも、機器の故障により宇宙を彷徨うことになるのであるが、Ashes To Ashesではこれらの物語は全てヤク中患者の妄想だった、というわけであり、過去の自分の全否定を行ってしまっているのだ。

どうやら、ベルリンでの生活ですっかりドラッグが抜け、かつての自分の無軌道さを改心したらしいが、かといって俺が最も好きだったグラム時代を否定するのは個人的には承服しかねる。まぁ、Bowieは元々『自分は変容し続ける』と宣言しているわけであるからして、『裏切り者!』との声にも『そうだよ。そういったじゃん』とかわしそうであるが。

さて、この作品を充分堪能した後、ファンの多くは一抹の不安を隠せなくなってしまった。それは、『Bowieにこれ以上の作品が出来るのか?』と、いうことである。なにせScary Monstersは、ソロ・ボーカリストとしては行き着くところまで行ってしまった感のあるアルバムだ

Bowie自身にも相当の葛藤があったのだろう。その後3年という歳月を費やし、誰も予想出来なかった方向に大転身した。なんと、スカッと抜けたアメリカン・テイスト満点の、Let's Danceという大傑作(≒大駄作)を発表。昔からのファンを見事に裏切り、新しいマーケットを開拓、商業的に大成功を納め、一躍ポップ・スターの座に躍り出たのである・・・確かに聴いていて気持ちのいい音楽ではあるのだが、個人的にはああいうことはRod Swewartに任せて置けばよかったのに、と思っている。

Scary Monsters

Scary Monsters

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Virgin Records
  • 発売日: 1999/08/26
  • メディア: CD

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deacon_blue

☆ この人はいい意味で聴き手を裏切っていく人だと思います。あたしが就職した頃,寮にオータナティヴに詳しいヤツ(当時=80年代前半=の『Fools Mate』みたいな雑誌を毎月立ち読みしてるようなタイプ)がいて,ボウイをこき下ろしていました。彼曰く「あいつは世の中の流行の半歩先にいつも居る」。これって結構な褒め言葉とも取れます。

☆ しっかし『レッツ・ダンス』が出た途端に吸い寄せられていった松田聖子を筆頭とする日本人って(爆)。
by deacon_blue (2007-09-05 12:01) 

lagu

deacon_blueさん、こんにちは。
Bowieが流行の半歩先にいる、これははっきりと褒め言葉でしょう。なかなか的を射ている解釈だと思います。私が始めてこの作品を聴いたときも、「NEW WAVEを突き抜けてその先まで行っている」と思いました。
ただ、突き抜けたその先で、Let's Danceという、万人受けする大量消費型娯楽音楽をやるとは思っていませんでしたし、周囲の異常な熱狂ぶりに、「これだけを聴いてBowieを語るなよ」などと思っておりました。
と、いいつつも、シリアス・ムーン・ライト・ツアーの日本公演には2回も足を運んだんですけどね。正直、演奏がショボかった印象があります。
by lagu (2007-09-05 17:39) 

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