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30年ぶりのFripp & Eno、THE EQUATORIAL STARS [Ambient/New Age/Experimental]

2004年発表。Evening Star以来、Fripp & Enoのコラボレーション、約30年ぶりの復活作品である。まさかこんな幸福にめぐり合えるとは想像すらしていなかった。

THE EQUATORIAL STARS / FRIPP & ENO

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何といっても、希代のノン・ミュージシャンにしてアンビエントなる概念の元祖、Brian Enoと、プログレ界きっての仕事人(笑)、Robert Frippの30年ぶりとなる伝説のユニット再結成である。これは期待しない方がおかしい。特に、No PussyfottingやEvening Starをリアルタイムで体験した者にとってはこれ以上のプレゼントはない。

とは言いつつ、かつて既存の素晴らしい音源に、未発表の数曲を加え、Essential Fripp & Enoという大駄作をベスト盤として発表した前科のある二人である。このときは、未発表曲が聴きたくて買ってしまったが、肝心の未発表曲はそれこそ「適当に作ってみました」という態度が明らかに見え、ファンの間では「あのままお蔵入りにしておけばよかったのになんであんなくだらんもん引っ張り出してきたんだ」という厳しい意見が支配的であった。勿論、俺もそう思った。

今回もそのときのようないい加減なことをやっているのではないかと、ちら、と思ったが、ファン心理とは悲しいものである。やはり購入してしまった。

しかし、それは全くの杞憂であった。

あえて全曲解説は行わないが、一聴して感じるのは、Robert Frippのギターが前二作と比べておとなしくなっている、ということだろう。非常に密やかな音で配置されていく途切れ途切れのソロ。以前のようなシーケンスに繰り返される音響にこれ見よがしに切り込んでくるようなプレイは慎んでおり、Enoが演奏する(シーケンサーの可能性もあるが)これまた密やかな音に共鳴するかのように注意深く、アタック音を極力消した柔らかい音で控えめな演奏が中心だ。総じて環境音楽を意識した創りとなっており、以前のような時空が歪むかのような粘りのあるインパクトのあるプレイを期待すると肩透かしを食らう。

では、彼らの気力が落ちた結果こうなったのか、と言うと、それは違う。

当然であるが、30年ぶりとは言ってもその間、この二人は隠居していたわけではないのだ。コンスタントに活動し、進歩し続けていたわけである。

この二人が最後に共同名義でEvening Starという作品を発表したのは1975年。この頃のBrian Enoの頭の中にはまだアンビエントという概念はなかった。その後のソロ活動の中でEnoはMusic For Airportsという傑作でポピュラー・ミュージックの世界にアンビエントという概念を確立させ、音楽文化に多大なる貢献をし、その後も現在に至るまで途切れることなく様々なアーティストとのコラボを含め、積極的な活動を行っている。

一方、Frippは途切れ途切れながらもKing Crimsonを主催しつつ、これまた様々なセッション・ワーク、ソロ・ワークを精力的にこなしている。(Enoとも何回か他人のアルバムで顔を合わしている。)そして、1990年代後半からはSoundscapeシリーズとして、Enoの作品と言われても簡単に信じてしまいそうなAmbient的な作品群も発表している。

こうして、30年の歳月を経て、再び共同で作品創りに臨んだ結果、ベクトルがほぼ同一方向を指し、その方向にはAmbientがあった、ということだ。これは、On Land以降立ち消えになってしまっているアンビエント・シリーズの5作目として位置づけてもいいのではないだろうか?(ジャケットもなんとなくそれっぽいし)

なんでも、この秋には彼らが録り貯めていた音源をまとめて新作として発表するらしい。またEssential Fripp & Enoのようなことにならなければいいが、と心配する一方、買う気満々の俺がいたりする・・・

ファン心理とは、ほんっとに悲しいものである。

The Equatorial Stars

The Equatorial Stars

  • アーティスト: Fripp & Eno
  • 出版社/メーカー: Opal
  • 発売日: 2005/04/05
  • メディア: CD

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コメント 5

deacon_blue

☆ そのファン心理は良く分かります。つい先日,自分の記事にアップするために偶然見つけたMagazineの再発盤4枚を直ぐにHMVで買ってしまいましたから。。。
by deacon_blue (2007-09-04 00:06) 

lagu

deacon_blueさん、こんにちは。
本当に、ファン心理って悲しいですよね。裏切られそう、と思っても買ってしまう。LPでもっていても買ってしまう。オリジナル・テープからのデジタル・リマスター、と言われれば買ってしまう・・・
by lagu (2007-09-04 10:54) 

teamKE

FFWDというプロジェクトをご存知でしょうか.
Fripp + The Orb(このときはFehlman/Weston/Paterson)
なのですが,このときの音と雰囲気が,
このEquatorial starsによく似ています.1994年のCDです.

The Orbも,このころ得意だった入り組んだミニマルミュージック
調や,あるいはそもそもの地である,享楽的なエレクトロニックな
曲とは似ても似つかぬ感傷的な曲調で,Frippもe-bowを多用しているのか,完全にSoundscape systemの音で,どれがギターなのかキーボードなのかまったく解りません.
当時の印象としては,おじさん達,どうしてこんなに感傷的になっちゃったんだろうか と思いました.いまでも同じ感想なのですが,その雰囲気が何年もたってから,Fripp & Enoに持ち込まれた感じがします.


ヌーボーメタルとか言って,Fripp道場をやってる裏では,Fripp本人て,意外と感傷的な一面があるんでしょうね.


by teamKE (2009-03-04 21:32) 

teamKE

あ,感傷的だといっても,けなしているんじゃないですよ.
なんというかなあ,ナイーブといえばいいのかな.

音楽的には,そこらのぬるいアンビエントを蹴散らす
高度な内容です.
"Lyra"なんて,どうしてそういう音程のギターで,
そういう音のパッドが鳴っていて違和感がでないのかなあ.
かなり,現代音楽だとおもいます.
分析したいなあ
by teamKE (2009-03-04 21:38) 

lagu

FFWD、あまり聴き込んでいませんが、勿論所持しています。
あれもなかなかに「ひそやか」な作品ですよね。快楽的リズムを排除し、テクノ風味は全く感じさせませんね。たしか最後の曲ではフリッパートロニクスが主導権を握っていたような。実はコンテンポラリー・ダンスの選曲を任されたとき、使ったことがあります。
by lagu (2009-03-04 22:08) 

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