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熱帯の夜(DREAM THEORY IN MALAYA / JON HASSELL) [Ambient/New Age/Experimental]

随分前になるが、大手CDショップのアンビエント・コーナーで、どう見てもバリを意識していると思われるジャケットを見つけた。鬱蒼とした森の中に出現した庭園。なぜかその中央には四角い大きな穴があり、何を燃やしているのか、そこからは煙が立ち上がっている。穴の中に見えるかすかな焔。そして画面を大きく縦断するペンジョールらしき竹にはチリ人形らしきものがぶら下がっている・・・熱帯を思わせる夜の風景。


「なんじゃ?こりゃ?」とジャケットの文字情報を見ると、おおっ、なんとJon Hassellのソロ作品ではないか!それもFOURTH WORLDシリーズの2作目だ。これは買わねばなるまい。

DREAM THEORY IN MALAYA / JON HASSELL

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前述の通り、確かBrian EnoがAMBIENTシリーズの次に立ち上げたFOURTH WORLDシリーズの2作目。1作目はJon HassellとBrian Enoの共同名義だったが、2作目となるこの作品はJon Hassellのソロ名義である。

Jon Hassellは知る人ぞ知る前衛トランペッターである。ジャズ・ミュージシャンとしての評価は知らないが、Brian Eno周辺のブレーンとしては非常に有能であり、様々な作品に顔を出す。
トランペットというと、華やかに響き渡る音を連想する人がほとんどだと思うが、この作品では一曲目以外にはそのような音は聴かれない。一聴すると、「これ、本当にトランペットの音?」といった感じの音響が多いが、ピストン・バルブを半押しにした状態で管に流れる空気の量を微妙に調整するとこのような音が出せるのである。また、音が外に出る管が広がっている部分に独特なミュートをかませたり、曲によってはエフェクターなどで音を変えているようである。

せっかくなので、全曲を聴きながら印象を記してみようと思う。

1曲目、Chor Moiréではメロディーらしきものはなく、タンギングするトランペットの音が音の隙間を埋めるように重層的に積みあがっていく。察するに、ケチャあたりからヒントを得たのではないだろうか?
続くCourageはいかにも「エスニック!」と思わせる跳ねるようなパーカッションにあわせ、ヒリヒリとした音のトランペットが短いフレーズをこれでもかと繰り返す。砂漠を思わせる音。
Dream TheoryはCourageのアイデアを更に推し進めた音響作品、と言っていいだろう。トランペットのフレーズはほとんど同じ。延々と繰り返されるフレーズに様々な意味不明な音が積み上げられていく。これもまたカラッカラに乾いた砂漠を思わせる音である。
Duta Bintung At Jelongではガムランを思わせるシンセサイザーのシーケンスに乗せ、トランペットがパルスのような単調なフレーズを途切れ途切れに聴かせる。時折、音が重層化するが、メロディーの現出には至らない。
Malayでは水面を叩く音をリズムにしてのフリー・フォームな演奏を行っている。ある意味実験的試みであるが、ここで、ようやくメロディらしきものが聴かれる。しかし、それらは現れては消え、消えては現れてと、メロディとして捕らえられることを拒否しているかのようなプレイである。
These Timesでは虫の鳴声が全編を支配しているが、よく耳を澄ませば、かすかに鳴る鐘の音に加え、トランペットもひそやかな音でソロらしきフレーズを演奏している。熱帯の夜を想起させる音。
そして、最終曲、Gift Of Fireでは水を張ったと思われる甕(カメ)らしきものをパーカッションとして使用、そのリズムに合わせてガムランを意識したと思われる金属質の音が単調なフレーズを繰り返す。肝心のトランペットは相変わらずはっきりしない音ではっきりしないフレーズの上下に終始している。

以上、終了。謎な音だ・・・

ほとんどの曲は繰り返しによって作成されており、作曲という行為の跡はあまり見て取れない。

果たしてJon Hasellはこの作品で何をしたかったのか?メッセージ性が皆無であることは解る。察するに、多分、その場の空気感を変える、という実験目的を持って作成されたのだろう。だとしたらその試みは成功している。ただし、一連のHarold BuddとBrian Enoの共同作品のように、心地よく変わるか、と言ったら、残念ながら現在只今はNo!である。とにかく暑っ苦しい・・・まぁ、使える曲を探している前衛的な舞踊団あたりは喜びそうだし、もしかしたら心地よく聴ける状況もあるのかもしれないが、夏に聴くのはちょっと厳しいなぁ・・・

Fourth World, Vol. 2: Dream Theory in Malaya

Fourth World, Vol. 2: Dream Theory in Malaya

  • アーティスト: Jon Hassell
  • 出版社/メーカー: Plan 9/Caroline
  • 発売日: 1991/07/01
  • メディア: CD

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