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Come On Die Young / Mogwai [Post Punk / Post Rock]

昨日、Mogwaiが新しいスタジオ・アルバムを発表した。勿論、俺も購入。とりあえず一回聴いてみたが、実直、真面目な演奏は相変わらず。数カ所で「おっ?」と思わせる局面があったが、やはりあの体験を凌駕するインパクトはえられなかった。決して悪くはないんだけどなぁ、あのアルバムのことを考えると何もかもがかすんでしまうんだよなぁ。

と、いうわけで、もやもやを吹っ切るため、あの奇跡の名盤を聴き直してみた。


やっぱ、いいわぁ。これ。


Come On Die Young / Mogwai

mogwa cody.jpg

以前もここでしたためた記憶があるが、俺が最初に聴いたMogwaiの作品がこれである。新宿のタワー・レコードでジャケットからただならぬ雰囲気を感じ取り、予備知識なしで購入。予想していた音とは全く異なっていたが、その内容の素晴らしさは俺の期待に充分に応えてくれた。

クリアーなトーンのどこまでも醒めたギター、ニュアンスに富んだピッキング。生々しくも重いドラム。あまり目立たないがツボを的確にとらえたベースとキーボード。そして若干の吹奏楽器がここに乗り、細部にまで制御の行き渡ったアンサンブルを聴かせる。大きなうねりをもったゆったりとしたリズム。ボーカルを伴う曲は序盤に一曲だけ。ところどころ効果音、音響的な実験をはさみながら、アルバムは進行する。普通なら冗長に感じてしまっても不思議ではないのだが、全く飽きることなく淡々と時は流れる。そして約1時間が経過し残すところ2曲、圧倒的なカタルシスが待ち受けている。10分を超える大作、Christmas Steps、この一曲の説得力はとにかく凄い。

序盤は他の曲と似たようなギターのクリーン・トーンによるアプローチが続く。中盤、力強いベースのコード弾きをきっかけに徐々にスピードが上がってくる。充分リズムが安定したところでギターが血しぶきが飛ぶかのようなカッティングを聴かせる。しばらくの後、突如としてディストーションが踏まれ、一気に音圧が上がる。アンプの箱がギリギリと軋む音まで聞こえてきそうだ。聴き手が音圧を心地よく感じ始めた頃合いをはかり、唐突にコードが展開、ギターが簡潔にして印象的なフレーズを奏でる。頭がはじけ飛ぶような開放感。曲は充分な時間をかけて徐々に平静を取り戻し、最後は何事も無かったかのように静かに終わる。


焦る事無く音響を重視しつつ根気よく演奏に取り組み、結果を出す。これは新世代のPink Floydだ。プログレだ。




この通り、この一曲だけを取り出しても充分素晴らしいが、その本当の良さはアルバムの曲配列の妙により増幅されることを作品通して聴き、検証すべきである。


このアルバムが発表された頃、MogwaiはRed House Paintersなどと共に、Slow Core、もしくはSad Coreというジャンルに分類されていた。確かにこのアルバムに限って言ってしまえば、ほとんどの曲はスロー・テンポだし、明るい調子の曲は聴かれない。「どこを聴けばいいのかわからないし、どこが面白いのかわからない」と、拒否反応を示す聴き手も少なくないことは容易に察知できる。

が、少なくとも俺は一旦この作品を聴き始めると、飽きること無く最後まで聴き通せる。そして最後は心地よい疲労感につつまれる。端的に言えば、『癒される』のだ。

Punk/New Wave以降のRockにおいて、My Bloody ValentineのLoveless、Nine Inch NailsのFragileなどと並び、非常に重要な位置にある作品。名盤保証。是非、聴くべきである。



Come On Die Young

Come On Die Young

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Chemikal Underground
  • 発売日: 1998/08/31
  • メディア: CD



 
 
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コメント 12

石原茂和

わー,出ちゃった,Mogwai.

僕にとっては,同じようなMogwai体験は
My Father My King
ですね.
by 石原茂和 (2011-02-17 17:28) 

石原茂和

たいがいには,現代音楽好きで,また弦楽器やら木管楽器やらが好きな私ですが,My Father My Kingは,そういう音楽を全部飛び越えて未来へあるいは太古からなっているようなある種究極の音楽に聴こえるのです.

http://www.youtube.com/watch?v=IMsqk-qe00g
by 石原茂和 (2011-02-17 17:49) 

石原茂和

極論承知ですが,
モーダルな音楽が,古代からの力で
最終的にコーダルな音楽を
乗り越えてしまうのかもしれません.
by 石原茂和 (2011-02-17 17:51) 

lagu

石原さん、こんにちは。
My Father My Kingですか。あれも凶悪ですよね。20分超、一曲のみのEP。確か、爆音が鳴りを潜めたRock Action発表後だった記憶がありますが、「あれはなかったことにしてください」とばかりにぶちかましてくれたので驚きましたね。

by lagu (2011-02-17 18:32) 

lagu

コメントが前後しますが、ロック的アプローチにおいて、リズムが音階(広義での)を凌駕するのはよくあることだと思いますよ。
特にMogwaiのような、比較的短いタームでの繰り返し、およびその発展によって曲を進行させる作曲手法においては。

勿論、60〜70年代初頭のアート・ロックにおいては何をか言わんや。多くのバンドが過剰なまでのパーカッションを導入していたのは周知の事実。今、冷静に聴いてみると「こりゃ、まったくプラスに作用してねぇな」と思ったりする場合もありますが、和音の補強より、音圧≒リズムの補強の方が容易であるのは自明の理でしょう。発音タイミングさえはずさなければ、大事故にはなりませんしね。
by lagu (2011-02-17 19:48) 

石原茂和

モーダル+パーカッションということでしょうか.
ますます太古の音楽の形式ですね.
by 石原茂和 (2011-02-27 14:07) 

石原茂和

モーダルでパーカッションでといったら,
Amon Düül ですね.

ちょっとヒッピーすぎるか..
by 石原茂和 (2011-03-01 13:27) 

lagu

おっと、Amon DüülはIIの方しかしらないので・・・
by lagu (2011-03-01 14:18) 

石原茂和

Amon Düülの音源,なかなかネットにないですねえ.
これです,とポインター出したいんですが..
たしかドラマーが一人でドラムを何個もつかうのは
民主主義に反する,といって一人に一つずつスネアやら
タムやら渡した結果,
でたらめにトライバルな拍子になってしまったという話を
聞いた事があります
by 石原茂和 (2011-03-07 11:43) 

lagu

Amon Düülって、バンドっていうより、芸術活動のコミューンとして、発展(?)した(らしい)、で、音楽部門のメンバーが充実してきて、看板一枚では足りなくなったので、2軍を別だてにしてAmon Düül IIとして活動を開始したので、音楽性に関連は無い、って話を聞いて、さらにⅠにしろⅡにしろ作品によって作風が異なる、さらに多作、ということを知り、積極的に投資する気にならないんですよね。
実は、過去に数枚聴いたことはあるのですが、現在は一枚しか所持していません。
by lagu (2011-03-07 22:26) 

石原茂和

どうみても,My Father My Kingに激しく影響されたとおぼしき連中が出てきました.CanterburyのYndi Halda.

http://www.youtube.com/watch?v=0Qm5rd1kciM&feature=related
by 石原茂和 (2012-02-20 16:21) 

lagu

いやぁ、こりゃまたなんつーか。全くと言っていい程に展開しないコード、ほとんど音の積み重ね、それもギターの爆音中心に音圧のみで曲に表情を与える手法、そして暴力的なまでの長さ。たしかにMy Father My Kingにそっくりですね。emusicにあったので買ってみるか・・・

by lagu (2012-02-21 16:04) 

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