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Spooky / Lush [Shoegazer]

前回、Cocteau Twinsの影響下にある(と思われる)Slowdiveというバンドを取り上げた。が、同時期、Slowdive以上にCocteau Twins色を濃厚に漂わせるバンドがあった。勿論、Lushである。


Spooky / Lush

lush sp.jpg

Lushはこの作品以前にも、短いペースでEPを発表していた。そして満を持して1992年にこのアルバムを発表。周囲の期待はいやが上にも盛り上がった。なにせプロデュースはCocteau TwinsのRobin Guthrie、さらに、バンドのフロントは女性ボーカル、それも声質が酷似した2名と来たもんだ。素材としては充分。Robin Guthrie自身も「Cocteau Twinsでは出来なかったライブでのハーモニーが実現出来る!」と、やる気満々だったに違いない。

これはもう、Cocteau Twinsの正当継承者と言ってもいいでしょう、と、誰もが期待した。


なかなかルックスもいい2名の女性ボーカリスト(内、一名はMikiという日系人)はギターをも兼任しており、野郎共の目線は釘付け独占状態。男性メンバー2名はドラム、ベースと、リズム・セクションに徹し、タイト、かつ堅実な演奏でバンドのまとまりに貢献しながらも必要以上に表に出てこなかったことは大正解だ。

作品全体を支配するのはとにかく透明感のあるサウンド、そして過度に媚びないボーカル。要所で聴かれる見事なコーラス。変拍子なども使っているが、それらは歌の節と調和し、不自然さやわざとらしさは感じさせない。なによりも変に気取らず、真っ正直に歌い、演奏に取り組む姿勢は爽やかそのもの。まるで炭酸入り清涼飲料水のようにパチパチと音が弾けていく。

部分的にシューゲイザーに特徴的な曲のスケールに依存しないフィードバック・ノイズや、トレモロやフランジャーを多用したノイジーな音も聴こえる。耽美と解釈しようと思えば耽美ではあるのだが、これらはレコーディング、もしくはミックス・ダウンの過程で装飾的に施されたものだろう。勿論、バンドが未成熟であった部分もあり、Robin Guthrieの指導を素直に受け入れたのだと思われ、これが功を奏し、Lushはシューゲイザーの重要バンドとの評価が定着した。

が、当時の彼女らにはシューゲイザー・ブームに対する迎合意識は希薄だったはずだ。過去の評価をひっくり返すようだが、彼女らの表現の根底にあるのは「いい曲」を「簡潔に」そして「出来る範囲で可能な限りいい状態で」実現することだったと思われる。


You Tube上に、このアルバム中最も疾走感、ラウド感のあるSuperblast!を発見。とにかくこれを見て欲しい。





Mikiはすんげぇ気持ちよくギターをストロークしながら、爽快に歌っている。サイド・ボーカルのEmmaのコラース、オブリガートもバッチリ。

どう考えたって、まともなギター・ポップだろ。これ。


シューゲイザー・ブームが衰退し、終焉を迎えるまで、Lushは微妙に音楽性(というより、音響処理)を変えながら活動を行っていた。楽曲の完成度は確実に上がっていったが、シューゲイザーにこだわるリスナーからは「Lushは変わってしまった」と、困惑する声が聴かれた。中には「Lushは終わった」とまで酷評する音楽評論家までいた。

が、ブームとは消費され、役割が終わればそのジャンルに特化した、もしくは特化してプロモーションされたバンドも役割を終えるものなのである。

しかし、しかし、だ。

このアルバムで聴かれる音が彼女らの目指していた理想形ではなかったはずだし、Lushは作品を重ねる毎にシューゲイザーの表現から離れ、着実に進化していた。ところが、メンバーが自殺するという悲劇、そして程なく解散…少し堪えられれば別の評価も目前だったはずなのに…

進化の途中で活動を終わらせなければならなくなってしまったのは非常に残念である。


Spooky

Spooky

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Warner Bros / Wea
  • 発売日: 1992/02/04
  • メディア: CD


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コメント 2

石原茂和

Lush (僕は,Lのラッシュと呼んでいます.Rのほうが有名なので)
がでちゃいましたね.

この人たち,シューゲーザーの暗さを,
ちょっとポップな感じのするロックに
上手に持ち込んだところが
非常にうまい!と当時思いました.
今思えば,プロデュースの巧みさでしょうか.

女の子バンドっぽいポップなところが,
またシューゲーザーなギターに押しつぶされるどころか,
それにトッピングになっているところが
紅茶シフォンケーキ,もしくはチーズケーキに
ホイップクリームを,ぽっとんと乗っけたような
感じがします.

by 石原茂和 (2010-10-02 07:43) 

lagu

本文でもしたためましたが、やはりこのバンドがシューゲイザーの文脈で語られるのは、フロデュースの巧さがあってのことだと思います。
今にして思えば、Lushはシューゲイザーからブリットポップへとリスナーの意識がスムースに変わっていれば非常にいいバンドなんですよね。後期のLadykillersなんか普通に聴いていてものすごくカッコいい。
by lagu (2010-10-03 09:23) 

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