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Mr.BEAST / MOGWA (帰ってきた轟音ギター) [Post Punk / Post Rock]

20年以上前、ジョー・ダンテ監督、スティーブン・スピルバーグ製作の「グレムリン」という映画が公開された。いわゆる青春コメディー・ホラーなのだが、第二次世界大戦でアメリカが完全にぶったたいたはずの日本が、敗戦から時間が経過した今、様々な製品(主に電気部品)の輸出によりアメリカを脅かしているという、明らかな反日メッセージを持っていた。物語の内容がそれを示唆しているのではなく、はっきりと役者に台詞としてしゃべらせているのだからタチが悪いというか安直というか底が浅いと言うか…余りのことに腹を立てることも忘れ呆れてしまったことを覚えている。
そしてこの映画には、モグワイなる「飼い方次第では従順なペットにも凶暴な怪物にもなる不思議な珍獣」が登場する。唖然。

いったいどこまでつけあがるつもりなのか?おとなしい国民性を見越してのことなのだろうが、同じような事を他の国でやってみろってんだ。たちまち抗議運動が起こるぞ。

こうした悪意のメッセージを、大人向けの社会派映画でならいざ知らず、感化されやすい子供向けの映画に埋め込んで製作したスティーブン・スピルバーグの罪は重い。


それはさておき、このキャラクターと同じ名前を冠したグラスゴー出身のバンドの最新作。


Mr.BEAST / MOGWAI

mogwai mr.jpg


MOGWAIとは、数年前に何の予備知識もなくCOME ON DIE YOUNGをショップでジャケ買いしたのが衝撃の出会い。どのような音を出すバンドなのか全く知らずに聴いたので、哲学的な音の佇まい、禁欲的なアンサンブル、時折見せる凶暴な表現に圧倒され、即座にファンになってしまった。

前述の映画のキャラクターからこのバンドの名前がついたということは想像に難くない。但し、このバンド自体に反日思想があるかどうかは不明。詳しく調べればわかるのだろうが、過去何回か来日したこともあるようだし、まぁちょっとした洒落なのだと思う。とはいいつつも、一枚目のジャケット写真は富士銀行の看板のアップだし、二作目にはkAPPAなる曲が収録されている。さらにこの最新作では日本語の語りまで収録されている。

MOGWAIはいわゆるメロディメーカーではない。元々ボーカルを伴う曲も少ないのだが、メロディーの良さよりも音の響きを重要視しているようだ。事実、いい曲だと思っても、よくよく聴いてみるとメロディーはやたらとプアーだったり、そもそもメロディーらしきものが存在しない場合もある。いわゆる「音響派」と言っていいのだろう。

各楽器は個人の表現欲を表に出すことなく、自分の役割をきちんとわきまえて演奏している。実に見事なアンサンブル力だ。誰一人として技術的に凄いことをしているわけではないのだが、一つ一つの音にこだわりを持って丁寧に演奏しているのが判り、非常に好感が持てる。ピックを弦に斜めに当てて弾く時に発生する、一瞬のタイミングのずれまでも意図的にやっているようだ。また、時折もの凄い勢いで吼えるギターの轟音はこのバンドの音をよりいっそう魅力的にしている。いわゆるナチュラル・ディストーションではなく、「はいっ!今、エフェクター入れましたっ!」って感じでいきなり歪み始めるものだからビックリする。しかし、このわざとらしさが実に効果的に作用しているのである。
ライブ盤、EPを除く直近の2作、即ちROCK ACTION、HAPPY SONGS FOR HAPPY PEOPLEでは轟音ギターはなりを潜め、すっかりとおとなしくなってしまった印象を受けたが、この作品では久々にディストーション・ギターが全開で嬉しい。とはいいついつも、それらは野放図に暴れまわっている訳ではなく、程よく制御され、アンサンブル中の動と静の対比により必然性をもたされている。
では、一作目のMOGWAI YOUNG TEAMや二作目、COME ON DIE YOUNGの頃の実験性が戻ってきたか、と言われればそれはちょっと違う。どうやら、彼らは結果がどう出るのか、即ち聴き手に価値判断がゆだねられる曖昧な音を作品にして残すことはやめにしたらしい。どの曲も無駄なくコンパクトにまとまっており、あっという間に聴き終ってしまう。潔いと言えば潔いのだが、各曲をもうちょっと引っ張っても良かったのではないだろうか?全10曲、合計43分は短すぎる。

個人的には二作目のChristmas Stepsや、一作目のMogwai Fear Satanに当たるような作品のハイライトとなる傑出した曲が無いのは残念であるが、全体の印象は特◎。これからしばらく聴き続けると思う。多分、飽きたころになにかとてつもないEPを出してくれそうな予感がする。今後もこのバンドから目が離せそうにない。

Mr. Beast

Mr. Beast

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: PIAS Recordings / Hostess
  • 発売日: 2006/03/06
  • メディア: CD


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イバン族

laguさん、コメントありがとうございます
そーだったんだ!同じだったとは、予想もしませんでした
スマラ・ラティの記事も大変面白かった
ほんとうに演奏されているんですね、すごい
私は、楽器をつくっている工場なのか家なのか?へ見にいったくらいで…
久しく行っていないので、また行ってみたいものです、バリへ
ずいぶん変わったでしょうね
by イバン族 (2006-03-11 12:52) 

lagu

イバン族さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
私が始めてバリを訪れたのは確か12~3年ほど前ですが、少なくともウブドに限って言えばその頃から比べてももの凄く変わりましたね。表通りには小奇麗なカフェやショップが軒を連ね、裏通りも舗装されています。ウブド市場のナイトマーケットももうありません。大通りにはひっきりなしに車が行き交い、一方通行も多くなりました。良く言えば便利になった、悪く言えば平準化されてしまった、というところでしょうか。
by lagu (2006-03-13 17:46) 

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